「ネットの力で、世界中のローカルビジネスを活性化したい」――クーポン共同購入サイト「Groupon」を運営する米Grouponのアンドリュー・メイソンCEOはこう話す。【岡田有花,ITmedia】
Grouponは2008年に事業をスタートし、今年の売上高は3億5000万ドル(約300億円)、企業価値は13億5000万ドル(約1150億円)に上るとも報じられている。日本を含む約30カ国に進出するなど猛スピードで拡大。米メディアでは「史上最速で成長したネット企業」とも報じられている。
その実績から、スーツ姿で飛び回る饒舌なCEOをイメージするかもしれないが、このほどあわただしく来日したメイソンCEOは、ラフなポロシャツ姿。初対面の記者に冗談を飛ばし、難しい質問にも言葉を探りながら誠実に答えようとする29歳のいたずら好きな若者だ。
Grouponの成長の秘訣は、そのスピード感とブランド力、ユニークさにあるという。Groupon型サイトが乱立している日本でも「リーダーシップを取れる」と自信をみせる。
●Grouponは「客をだまさない」
Grouponは、地域を限定したクーポンのフラッシュマーケティングサイトだ。飲食店やエステサロンなど地域のリアル店舗で提供されているサービスを割安に利用できるクーポンを、1日1地域当たり1件のみ販売。購入申込数が最低ラインに達しない場合はクーポンは発行されない。
初期費用は不要。クーポンが発行されない場合、店舗の費用はゼロだ。Grouponは、クーポンの売り上げの50%を受け取っているとされる。「店舗はリスクフリーで新規顧客を獲得でき、お得なクーポンを手に入れられる。経営者にも消費者にもベストなサービス」とメイソンCEOは自負する。
Grouponは「自分たちが欲しいと思えるクーポンしか販売しない」という。「従来は、客をだますようなクーポン業者も多かったが、Grouponのスタッフは、そういった業者にはいないタイプ。ビジネスを通じて、世界をより良くしたいと思っている」。
米国では「Grouponはお買い得」というイメージが定着しているようだ。特に大都市では日々、数百~数千のクーポンが売れており、地域によってはクーポンを発行したい店舗が殺到、掲載を断っている状態という。
大学では音楽を専攻し、ロックバンドを組んでいたこともあるメイソンCEOはクリエイティブなサイト作りが好きで、「スタッフもみんなクリエイティブ」。クーポンを魅力的に紹介するキャッチーな文章や、“Groupon猫”がつぶやくという体裁で毎日更新される、クーポンに合った内容のユニークなコラムも人気だ。
●「マネタイズに悩んでいた」 Grouponの発端
Grouponのビジネスを発想したのは、「The Pointのマネタイズに悩んでいたころ」。The Pointは、同じ目的を持った人がネット上で集まって署名を集めたりお金を出し合ったりできるサービスだが、広告収入を集められずビジネス面では苦戦。「サイドビジネスとして」The Pointの集客力を生かした共同購入サービスを始めたという。
「今までの共同購入サイトやECサイトとは違うものを売ろう」と、地域限定にこだわった。地域を限定することで、ほかのECサイトとは違うユニークなものが販売できるはずだと考えたのだ。
現在、Grouponで販売しているのは、飲食店やエステ、劇場など地域店舗で使えるクーポンのみだが、当初は「Tシャツやスリッパなども売っていた」。こうしたコモディティーの値引きでは大手流通企業など並み居るライバルの調達力に勝てないと判断。店舗のクーポンに特化したことが急成長につながった。
●「常に自らをプッシュし続けている」――「史上最速」の成長
Grouponの拡大ペースは急速だ。売上高や企業価値の成長ペースは「史上最速」と報じられ、創業2年で全米約90都市をカバー。約30カ国に進出と、拡大ペースはすさまじい。
「われわれは常に、今よりさらに早く動けるよう自らをプッシュし続けている」。カバーエリアの拡大ペースは、当初は1カ月につき1都市だったが、翌月には2都市、その次は12都市……と加速してきたという。
世界進出は「現地の事情をよく分かっている現地企業と一緒に展開するのが早道」と、現地企業と手を組んで展開。今年5月には欧州のGroupon型サービス運営するCitydealを、8月には日本のクーポッドとロシアのクーポン共同購入サイト「Darberry」を買収した。
●創業2カ月の買収劇も「自然なこと」
このタイミングで日本に参入したのは「クーポッドという良いパートナーが見付かったから」。クーポッドは「技術やオペレーション能力、営業力といったバックグランドを備えている」と評価する。
クーポッドは6月に創業したばかり。創業2カ月での買収劇は日本のネット界を驚かせたが、メイソンCEOにとっては「自然なペース」だ。「市場は急拡大しており、Grouponは米国の従業員を2年でゼロから500人に、欧州では半年でゼロから600人に増やした。それを考えると自然だ」
日本のGroupon型サービスは黎明期で、問題も起きている。クーポッドでは、販売したiTunesカードが大幅に遅れるトラブルも。Grouponはトラブルを起こさないよう注意しているが、起きた場合は「ユーザーに通常以上の補てんをする」ことで信頼を回復しているという。
例えばボストンのある花屋のクーポンをめぐってトラブルが発生した際、クーポンが使えなかった購入者に返金し、クーポンの割引券をプレゼント。さらに、スタッフが「ごめんなさい」ボードを持った写真を掲載したところ、「ユーザーとの信頼感はむしろ深まった」。
●日本市場は「米国で最も成功した都市と似ている」
日本市場への期待は大きい。東京など日本の大都市は「アメリカで最も成功した都市の特徴を備えている」ためだ。その特徴とは、(1)都市部の人口密度が高い、(2)ユニークなローカルビジネスがたくさんある、(3)ナイトライフが充実している――などだ。
日本ではリクルートやUSENといった大企業を含め、Groupon型サービスが乱立しているが、「Grouponのノウハウを導入すれば、日本でもリーダーシップを取れる」とメイソンCEOは強気だ。「欧州に進出した際もすでにたくさんの“Grouponクローン”があったが、リーダーシップを取れている。同じやりかたで日本でも成功できるだろう」
培ってきたブランド力や集客力も強みだ。集客力を活用し、各地のGAP店舗で使える割引クーポンを全米で販売したところ、50万枚以上を売り上げたという。「同じような取り組みは、国際的にも可能だろう」
●ネットで世界を変える
Grouponの目標は世界制覇?――尋ねてみると、メイソンCEOは笑ってこう返す。
「Grouponは、ECの力で地域のビジネスを変えた。これを地球上のあらゆる街角に広げ、できるだけ多くのローカルビジネスを活性化していきたい」
では人生の目標は?
「インターネットはまだ若く、大きなアイデアが世界を変える可能性に満ちている。Grouponでローカルビジネスを変えることができたのはエキサイティング。これからもそういうことに関われたなら、とても満足だ」
業界の話題、問題、掘り出し物、ちょっとしたニュース配信中。
Grouponは2008年に事業をスタートし、今年の売上高は3億5000万ドル(約300億円)、企業価値は13億5000万ドル(約1150億円)に上るとも報じられている。日本を含む約30カ国に進出するなど猛スピードで拡大。米メディアでは「史上最速で成長したネット企業」とも報じられている。
その実績から、スーツ姿で飛び回る饒舌なCEOをイメージするかもしれないが、このほどあわただしく来日したメイソンCEOは、ラフなポロシャツ姿。初対面の記者に冗談を飛ばし、難しい質問にも言葉を探りながら誠実に答えようとする29歳のいたずら好きな若者だ。
Grouponの成長の秘訣は、そのスピード感とブランド力、ユニークさにあるという。Groupon型サイトが乱立している日本でも「リーダーシップを取れる」と自信をみせる。
●Grouponは「客をだまさない」
Grouponは、地域を限定したクーポンのフラッシュマーケティングサイトだ。飲食店やエステサロンなど地域のリアル店舗で提供されているサービスを割安に利用できるクーポンを、1日1地域当たり1件のみ販売。購入申込数が最低ラインに達しない場合はクーポンは発行されない。
初期費用は不要。クーポンが発行されない場合、店舗の費用はゼロだ。Grouponは、クーポンの売り上げの50%を受け取っているとされる。「店舗はリスクフリーで新規顧客を獲得でき、お得なクーポンを手に入れられる。経営者にも消費者にもベストなサービス」とメイソンCEOは自負する。
Grouponは「自分たちが欲しいと思えるクーポンしか販売しない」という。「従来は、客をだますようなクーポン業者も多かったが、Grouponのスタッフは、そういった業者にはいないタイプ。ビジネスを通じて、世界をより良くしたいと思っている」。
米国では「Grouponはお買い得」というイメージが定着しているようだ。特に大都市では日々、数百~数千のクーポンが売れており、地域によってはクーポンを発行したい店舗が殺到、掲載を断っている状態という。
大学では音楽を専攻し、ロックバンドを組んでいたこともあるメイソンCEOはクリエイティブなサイト作りが好きで、「スタッフもみんなクリエイティブ」。クーポンを魅力的に紹介するキャッチーな文章や、“Groupon猫”がつぶやくという体裁で毎日更新される、クーポンに合った内容のユニークなコラムも人気だ。
●「マネタイズに悩んでいた」 Grouponの発端
Grouponのビジネスを発想したのは、「The Pointのマネタイズに悩んでいたころ」。The Pointは、同じ目的を持った人がネット上で集まって署名を集めたりお金を出し合ったりできるサービスだが、広告収入を集められずビジネス面では苦戦。「サイドビジネスとして」The Pointの集客力を生かした共同購入サービスを始めたという。
「今までの共同購入サイトやECサイトとは違うものを売ろう」と、地域限定にこだわった。地域を限定することで、ほかのECサイトとは違うユニークなものが販売できるはずだと考えたのだ。
現在、Grouponで販売しているのは、飲食店やエステ、劇場など地域店舗で使えるクーポンのみだが、当初は「Tシャツやスリッパなども売っていた」。こうしたコモディティーの値引きでは大手流通企業など並み居るライバルの調達力に勝てないと判断。店舗のクーポンに特化したことが急成長につながった。
●「常に自らをプッシュし続けている」――「史上最速」の成長
Grouponの拡大ペースは急速だ。売上高や企業価値の成長ペースは「史上最速」と報じられ、創業2年で全米約90都市をカバー。約30カ国に進出と、拡大ペースはすさまじい。
「われわれは常に、今よりさらに早く動けるよう自らをプッシュし続けている」。カバーエリアの拡大ペースは、当初は1カ月につき1都市だったが、翌月には2都市、その次は12都市……と加速してきたという。
世界進出は「現地の事情をよく分かっている現地企業と一緒に展開するのが早道」と、現地企業と手を組んで展開。今年5月には欧州のGroupon型サービス運営するCitydealを、8月には日本のクーポッドとロシアのクーポン共同購入サイト「Darberry」を買収した。
●創業2カ月の買収劇も「自然なこと」
このタイミングで日本に参入したのは「クーポッドという良いパートナーが見付かったから」。クーポッドは「技術やオペレーション能力、営業力といったバックグランドを備えている」と評価する。
クーポッドは6月に創業したばかり。創業2カ月での買収劇は日本のネット界を驚かせたが、メイソンCEOにとっては「自然なペース」だ。「市場は急拡大しており、Grouponは米国の従業員を2年でゼロから500人に、欧州では半年でゼロから600人に増やした。それを考えると自然だ」
日本のGroupon型サービスは黎明期で、問題も起きている。クーポッドでは、販売したiTunesカードが大幅に遅れるトラブルも。Grouponはトラブルを起こさないよう注意しているが、起きた場合は「ユーザーに通常以上の補てんをする」ことで信頼を回復しているという。
例えばボストンのある花屋のクーポンをめぐってトラブルが発生した際、クーポンが使えなかった購入者に返金し、クーポンの割引券をプレゼント。さらに、スタッフが「ごめんなさい」ボードを持った写真を掲載したところ、「ユーザーとの信頼感はむしろ深まった」。
●日本市場は「米国で最も成功した都市と似ている」
日本市場への期待は大きい。東京など日本の大都市は「アメリカで最も成功した都市の特徴を備えている」ためだ。その特徴とは、(1)都市部の人口密度が高い、(2)ユニークなローカルビジネスがたくさんある、(3)ナイトライフが充実している――などだ。
日本ではリクルートやUSENといった大企業を含め、Groupon型サービスが乱立しているが、「Grouponのノウハウを導入すれば、日本でもリーダーシップを取れる」とメイソンCEOは強気だ。「欧州に進出した際もすでにたくさんの“Grouponクローン”があったが、リーダーシップを取れている。同じやりかたで日本でも成功できるだろう」
培ってきたブランド力や集客力も強みだ。集客力を活用し、各地のGAP店舗で使える割引クーポンを全米で販売したところ、50万枚以上を売り上げたという。「同じような取り組みは、国際的にも可能だろう」
●ネットで世界を変える
Grouponの目標は世界制覇?――尋ねてみると、メイソンCEOは笑ってこう返す。
「Grouponは、ECの力で地域のビジネスを変えた。これを地球上のあらゆる街角に広げ、できるだけ多くのローカルビジネスを活性化していきたい」
では人生の目標は?
「インターネットはまだ若く、大きなアイデアが世界を変える可能性に満ちている。Grouponでローカルビジネスを変えることができたのはエキサイティング。これからもそういうことに関われたなら、とても満足だ」
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