ドニエプルロケット、韓国初のレーダー衛星を打ち上げ
sorae.jp 8月24日(土)8時56分配信
ISCコスモトラス社とロシア戦略ロケット軍は22日、韓国の地球観測衛星コンプサット5を搭載したドニエプルロケットを打ち上げた。ロケットは順調に飛行し打ち上げは成功した。
ドニエプルは約2年ぶりの打ち上げであり、またコンプサット5は韓国にとって初となるレーダー衛星である。
コンプサット5を搭載したドニエプルは、現地時間20時39分13秒(日本時間23時39分13秒)、ロシアのオレンブルクにあるヤースニー打ち上げ基地から離昇、高度約550kmの太陽同期準回帰軌道に衛星を投入した。その後地上局で衛星からの信号を受信、正常に飛行していることが確認された。
コンプサット5は韓国航空宇宙研究院(KARI)によって開発された地球観測衛星で、同国初となる合成開口レーダー(SAR)を搭載する衛星である。コンプサットシリーズはこれまで光学衛星、つまりカメラで地表を撮影する衛星ばかりであったが、合成開口レーダーはレーダーの原理、つまり地上にマイクロ波を発射し、反射した電波を受信、分析することで、地形や建物の形などを読み取るというものだ。分解能は光学センサーより劣り、あまり小さなものは見分けられないが、逆に光学センサーで撮影できない夜間や、対象の上空が雲に覆われているときでも撮影をすることが可能だ。したがって地球観測衛星(偵察衛星)は光学衛星とレーダー衛星を組み合わせて運用するのが定石で、例えば日本の情報収集衛星(IGS)も光学2機、レーダー2機を基本的な構成として運用している。
衛星の第一の目的は合成開口レーダーの技術の習得であり、また打ち上げ後は陸地や海の観測、災害への対応へ利用される予定だ。また合成開口レーダーの技術は、今後の商業衛星の開発に活用することも見込まれている。設計寿命は5年が予定されている。
ドニエプルはNATOコードネームSS-18サタンとして知られる、旧ソ連の大陸間弾道ミサイル(ICBM)R-36M UTThを衛星打ち上げ機に転用したロケットで、1999年からこれまでに18機が打ち上げられ、17機が成功を収めている。
R-36M UTThは原型となるR-36を基に、アメリカのICBMサイロなど、軍事基地を破壊するために開発され、1979年から実戦配備された。その後、第1次戦略兵器削減条約(START I)によって最盛期の半分にまで配備数が減らされることとなり、結果余剰となったミサイルを改造、人工衛星を打ち上げるロケットに転用しようという動きが生まれ、ロシア、ウクライナ、カザフスタンは共同でISCコスモトラス社を設立した。
しかし2011年8月17日の打ち上げを最後に事業が止まり、その将来性が危ぶまれていた。理由としては、ロシアとウクライナとの間で金銭的な問題が生じたためとか、あるいはすでに製造された大陸間弾道ミサイルを転用することによって低コストに衛星の打ち上げができるという目論見が外れ、大して利益がでなかったためだとか、様々な情報があり、またおそらくそのどれも正しいだろう。
またドニエプルには四酸化二窒素と非対称ジメチルヒドラジンという、人体や環境に有害な推進剤が使われていることから、カザフスタン政府やロシア国防省は運用に対して快く思っていないとも伝えられる。さらに旧ソ連時代にR-36の開発、生産を行っていた企業は、現在独立国となったウクライナにあり、ロシアにとってはミサイルの維持が難しくなりつつある。なお、すでにロシア軍は固体燃料を使用し、また地下サイロではなく移動式の発射装置(TEL)から発射できるトーポリMミサイルなど、R-36の後継機の配備を進めており、現在実戦配備されているR-36Mはすべて、2019年ごろを目処にトーポリMに置き換えられるだろう、と報じられている。
ロシアのイズベスチヤ紙が先月報じたところによれば、金銭問題は解決され、同社の事業、ドニエプルの打ち上げは当面継続されることになったとのことだが、どちらにせよドニエプルは遅かれ早かれ姿を消すことになるだろう。
今後の打ち上げについては、具体的な日時はまだ発表されていないが、今年中にもう1機、また来年は5機の打ち上げが行われるという。その中には小型地球観測衛星ASNAROや、超小型衛星のほどよし1号機、ChubuSat-1、TSUBAME、QSAT-EOSなど、日本の衛星の打ち上げも含まれている。
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