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伊東深水と田村一村とは大違いである。伊東深水は浮世絵美人画の正統を継いだ者、というのが定説である。しかし、画風を見ていただきたい。浮世絵美人画の系譜であるというのは、油彩ではなく線描である、というにすぎず、高踏的画風が過ぎる。悪い意味で大衆に迎合しないのである。日展での大権威になったもの者である深水の名声は「画壇」によるものであって、大衆によるものではない。浮世絵美人画の名声が大衆によるものであったのとは対極にある。
田村一村は院展に落選すると画壇への道をあきらめた。そして奄美に住み工場で働きながら描き続けて、ひっそりと亡くなった。結果は対極である。小生は画壇に入って権威にならなかった「一村」の方を好む。しかし、大衆に迎合しなかったのは間違いだと思う。奄美にいってごらんください。一村の生前には想像もできなかった、立派記念館がある。それを見ることができたら、一村は悲嘆するだろうか、満面の笑みを浮かべるだろうか。大衆は死しても名声を残さなかった一村を今になって利用しているのである。
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