地下系音楽～ゴアグラインド～

　ゴアグラインドとは、ゴア（Gore）とグラインド（Grind）を混ぜた音楽である。それぞれ、流血、粉砕といった意味を持つ名称で、この文章全体で取り上げているカタカナ表記のゴアは、ダンス系統のゴア（Goa）というジャンルとは全く別のものである。
　その音を文章で説明し、理解を促すことは非常に困難である。ゴアとは、流血という意味が示す通り、人間や動物の血などを前面に押し出している。そして、音では醜悪さを極限まで表現している。また、グラインドとは、曲の速さを突き詰めた音楽であり、ブラストビートと言われるドラムの奏法を頻繁に使用している。その他に関しては、どちらもグロテスクを基軸としていて、音の面では非常によく似ている。

　ゴアという呼称が生まれた時までの、地下系音楽の歴史を振り返っておこう。1980年代初頭に、ヴェノムというバンドが現れた。このバンドは、今までに無い音楽性を持っていた。そのため、彼らの音楽はそれまで無かった新しいジャンルとして確立することになる。そのジャンルが、ブラックメタル、そしてスラッシュメタルである。
　ただし、その呼び名が生まれたのは、彼らが活躍したずっと後のことである。現在のブラックメタルという音楽が、当時のヴェノムが演奏していた音楽に似ていることから、そのジャンルに関して元祖だと言われるようになった。スラッシュメタルにしても、この直後に出現したバンド達が、彼らの影響を受け、音楽性を引き継いだことによる。音楽が先に誕生し、言葉は後から生まれるのだ。
　そして、スラッシュメタルというジャンルが全盛を迎えた頃、その音楽性を更に激化したデスメタルと呼ばれるものが誕生する。このデスメタルこそ、地下系音楽に分類されるジャンルである。
　デスメタルを演奏する様々なバンドが登場してきた1980年代後半、カーカスの出現で更に新しい歴史が始まる。彼らが、音楽としてゴアを演奏した初めてのバンドなのである。そしてこの音楽を継承するバンドが次々と現れる中、エグジュームドというバンドが、自分達の音楽性をゴアメタルと表現したことで、彼らはゴア系バンドという括りになったのだ。

　グラインドは、コア系統に分類される音楽で、グラインドコアと呼ばれている。その変遷は、大元にパンクがあり、前述のデスメタルのように激化してハードコアとなった。そして更に速さと激しさを増し、粉砕機で岩盤を削るような音を聴かせる音楽として、グラインドという名称が付いたのだ。

あとがき
　記事に貼ってある画像は、地下系音楽とは何ら関係が無い。