どだい、金が勝負の世界で背伸びをするから、楽しむ事が出来ない。
高級ホテルや温泉に行っても何かにつけて料金ばかりが気になり、自分が「貧乏人だなぁ」と思い知らされる。
歩いて、ソロキャンプで旅を続けられれば金の土俵で戦う必要は無くなる。
「しっかり寝られれば、自分なりの旅に近づけるのに」
少しでも寝られるように灯りを消したが寝つけませんでした。
何時間も寝つけませんでした。
外を覗くとうっすら空が白んでいた。
ガッカリして横になっていると、
10分間だけ怖い夢を見ました。
「この世のものではない化け物が出て来たから、間違いなく夢だ。10分間だけ、間違いなく寝る事ができた」
出発までに朝食を食べる。
あんパンとお茶。
テントの中身、寝袋、マット、レインフライヤーから片付ける。
これが大変で、暗がりの作業だが、あっという間に空が明るくなる。
ここまで出来たら、撤収までは造作も無い。
「作業は物理的なものだが、“寝る”のだけは心の問題もあるからね。練習と言うよりソロキャンプに慣れないと・・・」
「でも、10分間は寝られたよ。成長したな」
撤収作業完了。
“金じゃ買えない楽しさ”なんて、
上から目線の言葉など、とても言えたものではない。
「旅の醍醐味を味わうに、自分はこういうやり方しか出来ないということだ」
さぁ、家まで歩いて帰ろう。
市原市のランドマーク。養老川河口の炎の煙突。
朝もやに、
車に遮られず・・・。
「寝られなかったけど、来なきゃ見られなかったぜ」