知的な距離感 プライベートエリア・・・・・魔法の効果 マジシャン 前田知洋
この本は、マジシャンである著者が「観客との距離の取り方」から「心理学的な距離感」までをテーマに書いたものです。
この著者が見せるマジックは「クロースアップ・マジック」というもので、レストランなどのテーブルをまわって「マジックをご覧になりますか?」と聞き、自己紹介や挨拶をします。
「これからトランプを使ってマジックをします。 『しかけ』があるか調べてみますか?」とテーブルの観客に尋ねます。
テーブルの数人の観客にトランプを手渡し、調べた人々が納得がいったところでトランプを受け取り、マジックを始めます。
これは、ただ単にマジシャンが「これから使うトランプに『しかけ』が無いこと」を調べてもらっただけのように見えますが、マジシャンはトランプを観客に触らせることによって、ごく自然に「観客とマジシャンの距離」を縮めたことになります。
日本で「クロースアップマジック」というスタイルがまだ浸透していなかった頃は、「食事の場でマジック?」という戸惑いが多く、お客様はなかなかリラックスしてくれません。
また女性はマジックに興味津々なのに、男性側は「女性との親密な時間を楽しみたい」というカップルでは、「マジックを見るか、見ないか」で険悪なムードになってしまうこともありました。
また親しい人同士でテーブルを囲むことで生まれた「プライベートエリア」に、他人が割り込むことは至難の業です。
運よく、最初のお客様を見つけることに成功すると、他のテーブルでも「こちらのテーブルでもマジックが見たい」という声がかかるのですが、ほとんどの場合はテーブルに近づいて「マジックをご覧になりますか?」と尋ねても、「結構です」と断られることが多いのです。
色々と試行錯誤を繰り返してみて気付いたことは、その場にいる人々は「他のお客様のテーブルで行われているマジック」を目にすることにより、「マジシャンが何分ぐらいマジックをするのか」「どんな道具を使うのか」「どのくらい楽しいものなのか」などを外側から知ることが出来る、ということ。
「マジックを楽しむ観客の様子を、他のテーブルの人にも見せるという方法が最も効果的」だということに気付きましたが、まずは一番最初のお客様に「マジックが見たい」と思ってもらわないことには始まりません。
それとともに、レストランに来たお客様に「このマジシャンはアヤシイ人ではない」と思ってもらうことが重要です。
そのためには、まずレストランで働くスタッフたちと信頼関係を築くことから始めました。
お客様はレストランのマネージャーやスタッフと、マジシャンが何気なく会話をする距離感を見ることで「このマジシャンはレストランに紛れ込んだ不審者ではない」と認識できます。
この「見る」というところがポイントで、マネージャーやスタッフとの会話を無理に聞かせる必要はありません。
「私はレストランで信用されています」「たくさんのお客様に喜んでいただけています」などと、いくら自分で言葉を重ねても人はあまり信用しません。
人は「表面の言葉の内容」よりも「どのように行動しているか」の方を重視しているものなのです。
・・・といった感じで、人と人との間の距離の取り方などを解説していきます。
知らない人の「プライベートエリア」に踏み込むこともあれば、「知り合った人の『プライベートエリア』に、あえて踏み込まない」ということもあるそうです。
マジシャンである著者が「プライベートなパーティ」で知り合った女性を偶然、街で見かけたことがありましたが「知らないフリ」をして、すれ違いました。
もちろん会話も交わしません。
これは「マジックを失敗した」とか「嫌な客だったから」というわけでは全くありません。
もし、相手が友人と一緒にいるときに「先日のパーティではお世話になりました」などと挨拶をすると、言われた方は一緒にいる友人に対して「いつ、どこで、どんなパーティがあったのか」などを説明しなければならなくなってしまうからです。
「そのパーティ」に、その友人を誘っていたのならまだ良いのでしょうが、誘っていなかった場合「どうして誘ってくれなかったの?」と、その友人との仲がこじれてしまうかもしれません。
社交界には「再会しても前回のパーティの話はしない」というルールがあるそうで、悪気はなくても「他人のプライバシーを暴露してしまうのは良くない」ということなんですね。
しばらくして、その女性と再会したときに「知らないフリ」をしたことを、とても褒めてくれたそうです。
「親しい友人だけど、あえて他人の距離感を保つ」というのも「気持ちの良い人間関係を築く」ためにも大事なことなんですね。
目次
1 距離を縮める
マジシャンが観客に道具を調べさせる本当の理由
物理的な距離と精神的な距離
大きな国の近い距離
狭い空間と感情
環境が変えるもの
あなたを包むオーラのような見えないバリア
他人に侵入されたくない空間
大きくなったり、小さくなったり
プライベートエリアには個人差がある
ストレスと洗練された動き
「マジックをご覧になりますか?」「結構です」
話しかけづらい雰囲気
このマジシャンはアヤシイ人ではない
マジックより先に見せるもの
ボディ・ランゲージにはウソが含まれにくい
「トランプを触ってみますか?」
シカケのあるカードを差し出す
信頼関係とは何か
信頼関係のシンボル「握手」
変化するプライベートエリア
“不器用さ”は親密さを増すスパイス
好きになってもらう
「不完全さ」で距離を縮める
少しだけ塩を入れる
不完全なプライベートエリア
マジックは、本の読めない暗さで
暗いと距離が近くなる
クラブやバーで親密さが増す理由
明るい舞台、暗い客席
2 距離を探る
カジュアル・フライデーに違和感がある理由
マジシャンと燕尾服
服とプライベートエリアの関係
相手をガッカリさせないために
リムジンとスポーツカーはどちらが快適か
出迎えといえば・・・・
狭いから愛おしい
車内の空間は誰のものか
エレベーターで上を向く人々
ドライブ中に愛を告白するのは有効か?
普段はいえないデリケートな話
横並びは本音を探りやすい?
横を向くことの錯覚
「さりげなさ」や「曖昧さ」
マジックをするテーブルが半円な理由
三角が生み出す対等感
四角と三角と丸
仕事上のことは、正面で褒める
社交辞令と心からの賛辞
正面で褒めるのは人のためではない
立つべきか、座るべきか――マジシャンの悩み
「マジシャンよ、立ち上がれ!」
上司の小言対策
司会のことをMCと呼ぶ理由
強い立場の人間は距離を広めにとる
マジック禁止のプライベートクラブ
はじめての社交界
マナーとエスコートの意味
エスコートとプライベートエリア
二種類のドアの開け方
イスから立ち上がる効果
あなたがマジシャンだとしたら?
右側か、左側か
左から右に
プレゼン上級者は違和感を演出する
プレゼン中の動作
大切なものは左に
理想のプレゼン
エンゲージリングは自分のプライベートエリアで
ものを示す位置
プレゼントの種類
プレゼントの渡し方
大切なものを貸すとき
3 空間を測る
恋人たちの幾何学模様
夕暮れどきの鴨川
壁際が人気の理由
ものは主張する
座席の上のジャケット
赤いカードの予言
他人の侵入を防ぐ
割れ窓理論
本当はたくさんある境界線
水入りペットボトルの大流行
警戒厳重なマジックショー
領域を分ける
子連れでラスベガス
ゾーニングとは何か
マジシャンのベルベット
一人6㎡の権利がある
高い机、重いドア、狭い通路
オフィスは一人6㎡
ハイバック・チェアが人気の理由
4 「空気」を読む
「距離感」と「振る舞い」が伝える二人の関係
「俳優の仕事」とは何か?
二人の関係を見抜く
言葉以外のパラ・ランゲージ
空気はウソをつけない
連続した空間
空気感とプライベートエリア
よそよそしい雰囲気とは
見えないところで誠実であること
フィクションが教えるプライベートエリア
宮本武蔵の「間合い」
師の影を踏むべからず
絵画の中でも
5 見えない相手
踏み込むべきか、踏み込まないべきか
テレビを通じての友人
ファンのメールが長続きしない理由
声をかけようか、かけまいか
知らないフリをする美学
声だけのコミニュケーション
顔が見えない相手
ギャップというウソ
21世紀のストレス、携帯電話
距離感にわずらわされない便利なツール
メールでのコミニュケーション
クロースアップ・マジシャン流のメールの書き方
「文は人なり」
6 プライベートエリアとは何か
プライベートエリアにはさまざまな働きがある
プライベートエリアの働き
働きの移り変わり
身体の部位によるプライベートエリア
侵入してしまいがちな部位
相手をイライラさせないために
異性間のプライベートエリア
人と会うのが楽しくなる!
知ることのメリット
見えないガラス
フィールドワーク
この本は、マジシャンである著者が「観客との距離の取り方」から「心理学的な距離感」までをテーマに書いたものです。
この著者が見せるマジックは「クロースアップ・マジック」というもので、レストランなどのテーブルをまわって「マジックをご覧になりますか?」と聞き、自己紹介や挨拶をします。
「これからトランプを使ってマジックをします。 『しかけ』があるか調べてみますか?」とテーブルの観客に尋ねます。
テーブルの数人の観客にトランプを手渡し、調べた人々が納得がいったところでトランプを受け取り、マジックを始めます。
これは、ただ単にマジシャンが「これから使うトランプに『しかけ』が無いこと」を調べてもらっただけのように見えますが、マジシャンはトランプを観客に触らせることによって、ごく自然に「観客とマジシャンの距離」を縮めたことになります。
日本で「クロースアップマジック」というスタイルがまだ浸透していなかった頃は、「食事の場でマジック?」という戸惑いが多く、お客様はなかなかリラックスしてくれません。
また女性はマジックに興味津々なのに、男性側は「女性との親密な時間を楽しみたい」というカップルでは、「マジックを見るか、見ないか」で険悪なムードになってしまうこともありました。
また親しい人同士でテーブルを囲むことで生まれた「プライベートエリア」に、他人が割り込むことは至難の業です。
運よく、最初のお客様を見つけることに成功すると、他のテーブルでも「こちらのテーブルでもマジックが見たい」という声がかかるのですが、ほとんどの場合はテーブルに近づいて「マジックをご覧になりますか?」と尋ねても、「結構です」と断られることが多いのです。
色々と試行錯誤を繰り返してみて気付いたことは、その場にいる人々は「他のお客様のテーブルで行われているマジック」を目にすることにより、「マジシャンが何分ぐらいマジックをするのか」「どんな道具を使うのか」「どのくらい楽しいものなのか」などを外側から知ることが出来る、ということ。
「マジックを楽しむ観客の様子を、他のテーブルの人にも見せるという方法が最も効果的」だということに気付きましたが、まずは一番最初のお客様に「マジックが見たい」と思ってもらわないことには始まりません。
それとともに、レストランに来たお客様に「このマジシャンはアヤシイ人ではない」と思ってもらうことが重要です。
そのためには、まずレストランで働くスタッフたちと信頼関係を築くことから始めました。
お客様はレストランのマネージャーやスタッフと、マジシャンが何気なく会話をする距離感を見ることで「このマジシャンはレストランに紛れ込んだ不審者ではない」と認識できます。
この「見る」というところがポイントで、マネージャーやスタッフとの会話を無理に聞かせる必要はありません。
「私はレストランで信用されています」「たくさんのお客様に喜んでいただけています」などと、いくら自分で言葉を重ねても人はあまり信用しません。
人は「表面の言葉の内容」よりも「どのように行動しているか」の方を重視しているものなのです。
・・・といった感じで、人と人との間の距離の取り方などを解説していきます。
知らない人の「プライベートエリア」に踏み込むこともあれば、「知り合った人の『プライベートエリア』に、あえて踏み込まない」ということもあるそうです。
マジシャンである著者が「プライベートなパーティ」で知り合った女性を偶然、街で見かけたことがありましたが「知らないフリ」をして、すれ違いました。
もちろん会話も交わしません。
これは「マジックを失敗した」とか「嫌な客だったから」というわけでは全くありません。
もし、相手が友人と一緒にいるときに「先日のパーティではお世話になりました」などと挨拶をすると、言われた方は一緒にいる友人に対して「いつ、どこで、どんなパーティがあったのか」などを説明しなければならなくなってしまうからです。
「そのパーティ」に、その友人を誘っていたのならまだ良いのでしょうが、誘っていなかった場合「どうして誘ってくれなかったの?」と、その友人との仲がこじれてしまうかもしれません。
社交界には「再会しても前回のパーティの話はしない」というルールがあるそうで、悪気はなくても「他人のプライバシーを暴露してしまうのは良くない」ということなんですね。
しばらくして、その女性と再会したときに「知らないフリ」をしたことを、とても褒めてくれたそうです。
「親しい友人だけど、あえて他人の距離感を保つ」というのも「気持ちの良い人間関係を築く」ためにも大事なことなんですね。
目次
1 距離を縮める
マジシャンが観客に道具を調べさせる本当の理由
物理的な距離と精神的な距離
大きな国の近い距離
狭い空間と感情
環境が変えるもの
あなたを包むオーラのような見えないバリア
他人に侵入されたくない空間
大きくなったり、小さくなったり
プライベートエリアには個人差がある
ストレスと洗練された動き
「マジックをご覧になりますか?」「結構です」
話しかけづらい雰囲気
このマジシャンはアヤシイ人ではない
マジックより先に見せるもの
ボディ・ランゲージにはウソが含まれにくい
「トランプを触ってみますか?」
シカケのあるカードを差し出す
信頼関係とは何か
信頼関係のシンボル「握手」
変化するプライベートエリア
“不器用さ”は親密さを増すスパイス
好きになってもらう
「不完全さ」で距離を縮める
少しだけ塩を入れる
不完全なプライベートエリア
マジックは、本の読めない暗さで
暗いと距離が近くなる
クラブやバーで親密さが増す理由
明るい舞台、暗い客席
2 距離を探る
カジュアル・フライデーに違和感がある理由
マジシャンと燕尾服
服とプライベートエリアの関係
相手をガッカリさせないために
リムジンとスポーツカーはどちらが快適か
出迎えといえば・・・・
狭いから愛おしい
車内の空間は誰のものか
エレベーターで上を向く人々
ドライブ中に愛を告白するのは有効か?
普段はいえないデリケートな話
横並びは本音を探りやすい?
横を向くことの錯覚
「さりげなさ」や「曖昧さ」
マジックをするテーブルが半円な理由
三角が生み出す対等感
四角と三角と丸
仕事上のことは、正面で褒める
社交辞令と心からの賛辞
正面で褒めるのは人のためではない
立つべきか、座るべきか――マジシャンの悩み
「マジシャンよ、立ち上がれ!」
上司の小言対策
司会のことをMCと呼ぶ理由
強い立場の人間は距離を広めにとる
マジック禁止のプライベートクラブ
はじめての社交界
マナーとエスコートの意味
エスコートとプライベートエリア
二種類のドアの開け方
イスから立ち上がる効果
あなたがマジシャンだとしたら?
右側か、左側か
左から右に
プレゼン上級者は違和感を演出する
プレゼン中の動作
大切なものは左に
理想のプレゼン
エンゲージリングは自分のプライベートエリアで
ものを示す位置
プレゼントの種類
プレゼントの渡し方
大切なものを貸すとき
3 空間を測る
恋人たちの幾何学模様
夕暮れどきの鴨川
壁際が人気の理由
ものは主張する
座席の上のジャケット
赤いカードの予言
他人の侵入を防ぐ
割れ窓理論
本当はたくさんある境界線
水入りペットボトルの大流行
警戒厳重なマジックショー
領域を分ける
子連れでラスベガス
ゾーニングとは何か
マジシャンのベルベット
一人6㎡の権利がある
高い机、重いドア、狭い通路
オフィスは一人6㎡
ハイバック・チェアが人気の理由
4 「空気」を読む
「距離感」と「振る舞い」が伝える二人の関係
「俳優の仕事」とは何か?
二人の関係を見抜く
言葉以外のパラ・ランゲージ
空気はウソをつけない
連続した空間
空気感とプライベートエリア
よそよそしい雰囲気とは
見えないところで誠実であること
フィクションが教えるプライベートエリア
宮本武蔵の「間合い」
師の影を踏むべからず
絵画の中でも
5 見えない相手
踏み込むべきか、踏み込まないべきか
テレビを通じての友人
ファンのメールが長続きしない理由
声をかけようか、かけまいか
知らないフリをする美学
声だけのコミニュケーション
顔が見えない相手
ギャップというウソ
21世紀のストレス、携帯電話
距離感にわずらわされない便利なツール
メールでのコミニュケーション
クロースアップ・マジシャン流のメールの書き方
「文は人なり」
6 プライベートエリアとは何か
プライベートエリアにはさまざまな働きがある
プライベートエリアの働き
働きの移り変わり
身体の部位によるプライベートエリア
侵入してしまいがちな部位
相手をイライラさせないために
異性間のプライベートエリア
人と会うのが楽しくなる!
知ることのメリット
見えないガラス
フィールドワーク