正しい恨みの晴らし方 科学で読み解くネガティブ感情 中野信子+澤田匡人
脳科学者と心理学者が「人間はなぜ妬むのか」を、脳科学と心理学の見地から解き明かした本。
人気の脳科学者の人が書いているので手に取ってみたけど、すごいタイトルだね~。![](https://blogimg.goo.ne.jp/img_emoji/kaeru_en4.gif)
人間は「自分より優れている人」「自分が持っていないモノを持っている人」「自分より早くこれらのモノを手に入れた人」というように、家柄、財産、個人の才能や能力、年齢、容姿の美醜、身長の高低、地位や肩書など・・・あらゆるものに「妬みの感情」を持ちます。![](https://blogimg.goo.ne.jp/img_emoji/hiyo_shock2.gif)
「妬みを感じる」というのは、その物や才能・気質、地位的立場が「自分にとって大切なモノ」で「相手の方が優れている」という状況を察知しているから。
その時点で相対的に「自分の評価は相手より劣っている」と認識され、自身のプライドが傷つきます。![](https://blogimg.goo.ne.jp/img_emoji/body_deject.gif)
自分と自分以外の人間を比較することで自己評価が下がり、それに伴って「ネガティブな感情」が生じるということ。
しかし、自分の周りにいる人間を誰でも「妬みの対象」にしているわけでもありません。
自分自身の環境から、あまりに「能力や格が違う相手」や、全く環境の違う「別世界の人間」を妬みの対象にすることは少なく、どちらかというと自分と相手は同等、またはわずかの差しかない「自分に近い他者」に強い妬みを感じるといわれています。![](https://blogimg.goo.ne.jp/img_emoji/v.gif)
一般的な例だと、年の近い兄弟姉妹などや、顔見知りの知り合いや仲の良い友人、あるいは親子間、夫婦間でも。
心理学では「うらやましい」に近い感情を「良性妬み」、ネガティブなニュアンスが強い敵意を持った妬みを「悪性妬み」と分けて考えるのがトレンドなのだそう。
日本語だと「妬み」も「嫉妬」も、ほとんど同じような意味で使われていますが、英語では「enby(妬み)」「Jealousy(嫉妬)」と別々の単語があります。
学術上では「妬み」と「嫉妬」は似ているようで、それぞれ別々の感情だとされています。
「妬み(enby)」は、自分の持っていない「何らかの好ましい価値のあるモノ」を自分以外の人が持っていて、それを自分も手に入れたいと願うあまり、その相手に対して生じる不快に思う感情。
「嫉妬(jealousy)」は、自分が持っていると思っている「何らかの好ましい価値のあるモノ」を自分以外の人が奪いに来るのではないかという可能性があるとき、その相手を排除したいと願う不快な感情。
妬みだと「あの子が持っているモノを私も欲しいのに!」という心理状態で、嫉妬だと「私の持っているモノが奪われるかもしれないから先に手を打っておかないと!」という心理状態。![](https://blogimg.goo.ne.jp/img_emoji/v.gif)
第6章 愛が憎しみに変わるとき「ストーキングが止まらない」では、「ストーカー加害者」の傾向には
・確固たる心理的動機があり、正当性を妄想的に信じ込んでいる。
・相手を一方的に追い詰め、迷惑をかけていることを自覚しながらも、相手に好意を持たれる望みをかけている。
・その望みが絶たれた時、心のバランスは憎しみに反転し、自殺または相手を殺害することもある。
ストーカー加害者の多くは、法を犯してまで相手に復讐する権利があると思い込んでいて、「こんな自分がフラれるなんてありえない」「信頼関係を裏切られた」「相手が間違っている」と被害者意識を持ち、相手に何らかの対応を要求し続ける執念深さもあります。
ストーカーの種類には
・「拒絶型」 別れた元の交際者がストーカー化。
・「親密追求型」 望んだ相手と相思相愛の関係になろうとする。
・「不適格型」 距離の詰め方が極端に不器用なので、結果的にストーカーとみなされる。
・「捕食型」 何らかの性的嗜好を満たしたいがために、被害者を「自分の獲物」とみなし、追いかけ回す。
・「恨み型」 「被害者意識」と「正義感」を持ち、自分を侮辱した相手を執拗に追いかける。
嫉妬をこじらせて「恨みの感情」まで行ってしまうと、さらに問題の解決が難しくなってしまいます。
「第9章 私たちのネガティブ感情とのつき合い方」で、著者2人の対談が載っていて、
「達観していると思われるかもしれませんが、実は一番苦しんできたのが脳科学者や心理学者ではないかと思います。 なぜなら、羨み、妬み、恨みなどのネガティブ感情と言われるものに人一倍敏感な人が心理学者や脳科学者になりたいという動機を持ちやすいからです。 ネガティブ感情に対して意識的で苦しみやすいため、何とかしたくて学び始めるのです。」
「脳科学者も心理学者も、それぞれの視点や方法でネガティブ感情に取り組んでいますが、共通点は「苦しみながら生きている自分」というレイヤーとは別のレイヤー、つまり学者という立場を得ることで、その苦しみを客観的に見ることができる。 そういう回避方法を使えるということです。 これが学問の良いところです。」
「メタ認知と言いますが、自分自身の感情の動きに対して、学問という見方をすることによって、ネガティブ感情による苦しみをダイレクトに受けて傷つくことを避けられます。 すると意識的にショックを和らげることができるようになります。」
「自分自身のネガティブ感情」の扱い方も難しいけれど「他人のネガティブ感情」に対する扱い方はもっと難しい。
それほどやり取りもない人から、いきなり敵対行動をされたり、ストーカー的な付きまとい方をされたりする場合も多いし。
そんなところから私も「心理学」に興味を持ったわけだけど、そこから学問を究めて学者として成功しているのは、すごいことだ。
興味を持ったことを調べて知識を得るということは素晴らしいことなんだね。![](https://blogimg.goo.ne.jp/img_emoji/good.gif)
目次
はじめに
第1章 恨まずにはいられない~心理学の視点から①
なぜ怒り続けられるのか/不条理が許せない/見返しとプライド/仕返しの流儀/代理報復と集団/シャーデンフロイデと癒し
第2章 妬みと羨みの心理学~心理学の視点から②
なぜリア充が気に入らないのか/持たざる者の悪意/妬みをもたらす微妙な差/羨みと妬みの狭間で/飼いならされる妬み/感情のシーソーゲーム/妬みに操られないために
第3章 妬みを感じるとき、脳では何が起こっているのか~脳科学の視点から①
妬みと嫉妬の違い/妬みを感じる脳/他人の不幸を喜ぶ脳/妬み続けられるのは人間だけ?
第4章 正しさにこだわる人たち~心理学の視点から③
なぜ必殺仕事人が好まれるのか/魅惑のゴシップ/這い寄る同調圧力/いじめを正当化するもの/みんなで恨めば怖くない/正しさで鈍る正しさ
第5章 正義という名の麻薬~脳科学の視点から②
「道徳的攻撃」の快感/処罰感情と生贄――スケープゴート現象/あの人は罰を受けて当然?――「いじめられる側にも理由がある」の心理/正義が凶器になる時
第6章 愛が憎しみに変わるとき~心理学の視点から④
なぜ既読スルーが許せないのか/リベンジポルノと恨み/こじらせた嫉妬/ストーキングが止まらない/愛憎の連鎖を断ち切れるのか
第7章 嫉妬の脳科学~脳科学の視点から③
嫉妬とは/芸術作品にみる嫉妬――アマデウス・娘道成寺・危険な情事・ミザリー・ロベルトは今夜/ヒトはなぜ嫉妬するのか――親切な脳といじわるな脳/ネガティブ感情の処方箋――男には正義、女には共感で
第8章 ネガティブ感情の意味~脳科学の視点から④
不条理を検出し、仕返しをするメリット/亜闍世コンプレックス――お母さん、なぜ私を産んだのですか/「人間」という病
第9章 私たちのネガティブ感情とのつき合い方
対談 中野信子×澤田匡人
脳科学者や心理学者は妬みや恨みに敏感/芸人が羨ましくて妬ましくてしかたない/嫉妬は相手をコントロールしたい欲求?/おかしい、変わっていると言われた子ども時代/異質な人に対して寛容な社会/妬みや恨みを抱えた人に向けて
おわりに
脳科学者と心理学者が「人間はなぜ妬むのか」を、脳科学と心理学の見地から解き明かした本。
人気の脳科学者の人が書いているので手に取ってみたけど、すごいタイトルだね~。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/img_emoji/kaeru_en4.gif)
人間は「自分より優れている人」「自分が持っていないモノを持っている人」「自分より早くこれらのモノを手に入れた人」というように、家柄、財産、個人の才能や能力、年齢、容姿の美醜、身長の高低、地位や肩書など・・・あらゆるものに「妬みの感情」を持ちます。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/img_emoji/hiyo_shock2.gif)
「妬みを感じる」というのは、その物や才能・気質、地位的立場が「自分にとって大切なモノ」で「相手の方が優れている」という状況を察知しているから。
その時点で相対的に「自分の評価は相手より劣っている」と認識され、自身のプライドが傷つきます。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/img_emoji/body_deject.gif)
自分と自分以外の人間を比較することで自己評価が下がり、それに伴って「ネガティブな感情」が生じるということ。
しかし、自分の周りにいる人間を誰でも「妬みの対象」にしているわけでもありません。
自分自身の環境から、あまりに「能力や格が違う相手」や、全く環境の違う「別世界の人間」を妬みの対象にすることは少なく、どちらかというと自分と相手は同等、またはわずかの差しかない「自分に近い他者」に強い妬みを感じるといわれています。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/img_emoji/v.gif)
一般的な例だと、年の近い兄弟姉妹などや、顔見知りの知り合いや仲の良い友人、あるいは親子間、夫婦間でも。
心理学では「うらやましい」に近い感情を「良性妬み」、ネガティブなニュアンスが強い敵意を持った妬みを「悪性妬み」と分けて考えるのがトレンドなのだそう。
日本語だと「妬み」も「嫉妬」も、ほとんど同じような意味で使われていますが、英語では「enby(妬み)」「Jealousy(嫉妬)」と別々の単語があります。
学術上では「妬み」と「嫉妬」は似ているようで、それぞれ別々の感情だとされています。
「妬み(enby)」は、自分の持っていない「何らかの好ましい価値のあるモノ」を自分以外の人が持っていて、それを自分も手に入れたいと願うあまり、その相手に対して生じる不快に思う感情。
「嫉妬(jealousy)」は、自分が持っていると思っている「何らかの好ましい価値のあるモノ」を自分以外の人が奪いに来るのではないかという可能性があるとき、その相手を排除したいと願う不快な感情。
妬みだと「あの子が持っているモノを私も欲しいのに!」という心理状態で、嫉妬だと「私の持っているモノが奪われるかもしれないから先に手を打っておかないと!」という心理状態。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/img_emoji/v.gif)
第6章 愛が憎しみに変わるとき「ストーキングが止まらない」では、「ストーカー加害者」の傾向には
・確固たる心理的動機があり、正当性を妄想的に信じ込んでいる。
・相手を一方的に追い詰め、迷惑をかけていることを自覚しながらも、相手に好意を持たれる望みをかけている。
・その望みが絶たれた時、心のバランスは憎しみに反転し、自殺または相手を殺害することもある。
ストーカー加害者の多くは、法を犯してまで相手に復讐する権利があると思い込んでいて、「こんな自分がフラれるなんてありえない」「信頼関係を裏切られた」「相手が間違っている」と被害者意識を持ち、相手に何らかの対応を要求し続ける執念深さもあります。
ストーカーの種類には
・「拒絶型」 別れた元の交際者がストーカー化。
・「親密追求型」 望んだ相手と相思相愛の関係になろうとする。
・「不適格型」 距離の詰め方が極端に不器用なので、結果的にストーカーとみなされる。
・「捕食型」 何らかの性的嗜好を満たしたいがために、被害者を「自分の獲物」とみなし、追いかけ回す。
・「恨み型」 「被害者意識」と「正義感」を持ち、自分を侮辱した相手を執拗に追いかける。
嫉妬をこじらせて「恨みの感情」まで行ってしまうと、さらに問題の解決が難しくなってしまいます。
「第9章 私たちのネガティブ感情とのつき合い方」で、著者2人の対談が載っていて、
「達観していると思われるかもしれませんが、実は一番苦しんできたのが脳科学者や心理学者ではないかと思います。 なぜなら、羨み、妬み、恨みなどのネガティブ感情と言われるものに人一倍敏感な人が心理学者や脳科学者になりたいという動機を持ちやすいからです。 ネガティブ感情に対して意識的で苦しみやすいため、何とかしたくて学び始めるのです。」
「脳科学者も心理学者も、それぞれの視点や方法でネガティブ感情に取り組んでいますが、共通点は「苦しみながら生きている自分」というレイヤーとは別のレイヤー、つまり学者という立場を得ることで、その苦しみを客観的に見ることができる。 そういう回避方法を使えるということです。 これが学問の良いところです。」
「メタ認知と言いますが、自分自身の感情の動きに対して、学問という見方をすることによって、ネガティブ感情による苦しみをダイレクトに受けて傷つくことを避けられます。 すると意識的にショックを和らげることができるようになります。」
「自分自身のネガティブ感情」の扱い方も難しいけれど「他人のネガティブ感情」に対する扱い方はもっと難しい。
それほどやり取りもない人から、いきなり敵対行動をされたり、ストーカー的な付きまとい方をされたりする場合も多いし。
そんなところから私も「心理学」に興味を持ったわけだけど、そこから学問を究めて学者として成功しているのは、すごいことだ。
興味を持ったことを調べて知識を得るということは素晴らしいことなんだね。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/img_emoji/good.gif)
目次
はじめに
第1章 恨まずにはいられない~心理学の視点から①
なぜ怒り続けられるのか/不条理が許せない/見返しとプライド/仕返しの流儀/代理報復と集団/シャーデンフロイデと癒し
第2章 妬みと羨みの心理学~心理学の視点から②
なぜリア充が気に入らないのか/持たざる者の悪意/妬みをもたらす微妙な差/羨みと妬みの狭間で/飼いならされる妬み/感情のシーソーゲーム/妬みに操られないために
第3章 妬みを感じるとき、脳では何が起こっているのか~脳科学の視点から①
妬みと嫉妬の違い/妬みを感じる脳/他人の不幸を喜ぶ脳/妬み続けられるのは人間だけ?
第4章 正しさにこだわる人たち~心理学の視点から③
なぜ必殺仕事人が好まれるのか/魅惑のゴシップ/這い寄る同調圧力/いじめを正当化するもの/みんなで恨めば怖くない/正しさで鈍る正しさ
第5章 正義という名の麻薬~脳科学の視点から②
「道徳的攻撃」の快感/処罰感情と生贄――スケープゴート現象/あの人は罰を受けて当然?――「いじめられる側にも理由がある」の心理/正義が凶器になる時
第6章 愛が憎しみに変わるとき~心理学の視点から④
なぜ既読スルーが許せないのか/リベンジポルノと恨み/こじらせた嫉妬/ストーキングが止まらない/愛憎の連鎖を断ち切れるのか
第7章 嫉妬の脳科学~脳科学の視点から③
嫉妬とは/芸術作品にみる嫉妬――アマデウス・娘道成寺・危険な情事・ミザリー・ロベルトは今夜/ヒトはなぜ嫉妬するのか――親切な脳といじわるな脳/ネガティブ感情の処方箋――男には正義、女には共感で
第8章 ネガティブ感情の意味~脳科学の視点から④
不条理を検出し、仕返しをするメリット/亜闍世コンプレックス――お母さん、なぜ私を産んだのですか/「人間」という病
第9章 私たちのネガティブ感情とのつき合い方
対談 中野信子×澤田匡人
脳科学者や心理学者は妬みや恨みに敏感/芸人が羨ましくて妬ましくてしかたない/嫉妬は相手をコントロールしたい欲求?/おかしい、変わっていると言われた子ども時代/異質な人に対して寛容な社会/妬みや恨みを抱えた人に向けて
おわりに