花のある生活

花はあまり出てきませんが。

心理学とは「心を科学的に分析する学問」

2024-01-22 | 読んだ本
手に取るように心理学がわかる本 著目白大学教授 渋谷昌三 目白大学教授 小野寺敦子


この本は「心理学の始まり」から「心の病気」まで、人間の心理全般について書かれています。

まさに「心理学を知る」のにうってつけの本。



人間は「同じモノを見ても人によって見え方が違う」と言います。

私たちは常に五感(視覚・聴覚・触覚・嗅覚・味覚)を働かせて、あらゆる情報を取り込んでいます。

しかし、実は「現実の周囲の環境」をそのまま受け止めて見ているわけではありません。

人間の五感に加えて「そのときの心理状態」や「今までの経験」なども合わさって、目の前の情報が重要かどうかを認識して判断しているからです。

ですから同じ環境にいても「自分の感じること」と「他人が感じること」が違う、ということが起きるのです。

それから「自分の経験や感情が合わさって感じている環境」と「現実の客観的な視点からの環境」にズレが生じていることもあります。



過去に経験したことを必要に応じて思い出せるように保持することを「記憶」と言います。

「文字や音」などを見たまま、聞いたまま保持することを「感覚貯蔵の記憶」と言い、バラバラの文字と音として認識されます。

たとえば「明るい」という言葉は「あ」「か」「る」「い」という風に。
視覚なら数百ミリ秒、聴覚なら数秒で消失。


そこから注意を向けられた情報だけが、次の記憶過程である「短期記憶」に貯蔵されます。
視覚・聴覚の情報として入力された「あ」「か」「る」「い」の文字は、この段階で「あかるい(明るい)」とつなげて認識されます。

例えば、本や取説を読んだり計算したり、推理したりして「認知的な課題」を遂行するために、一時的に記憶を保持する作業台のようなもので「作業記憶」とも呼ばれます。

一瞬で記憶できるのは4~7文字で、15秒~30秒ほどで消失するので、この「短期記憶」を長期間とどめておくためには、この時間内に何度も反復(リハーサル効果)などして、長期記憶に送り込む必要があります。

銀行の暗証番号を繰り返しながら、銀行にお金をおろしに行くような感じかな。


いつまでたっても思い出すことができる永続的な記憶を「長期記憶」と言います。

例えば、幼いころの友人の名前や昔の住所など、ときに思い出すのに時間がかかることもありますが、一度、長期記憶に落ちた記憶を忘れることはありません。
忘れたと思っていても、それは思い出せないだけで何かのきっかけで思い出したり、という経験は誰でもあるでしょう。

「長期記憶」には言葉によって記憶される「宣言的記憶」と、自転車の乗り方のように言葉で記憶されず体で動作を覚える「手続記憶」があります。
「宣言的記憶」には、一般的な知識としての記憶を「意味記憶」、ある特定の出来事に関する記憶を「エピソード記憶」に分けられます。

また、記憶というのは客観的に正確に記録されているわけでもなく、思い込みで事実と異なることを覚えていたり、空想と混同したりして「創作に満ちた記憶」が出来上がっていたりする場合もあります。


現代社会ではテレビや、ネット環境から絶え間なく情報が流されています。
外に出れば、看板や標識、お店のショーウインドや広告のポスターなど、あらゆるモノが目に飛び込んできます。

この情報が多すぎて脳が情報処理しきれないような状況になることを、アメリカの社会心理学者ミルグラムは「過剰負荷環境」と呼んでいます。
心理的負荷の多い環境に何とか順応して自分の身を守るため、外ですれちがう人に関心を向けずに「自分のしていること」に集中したり「マニュアル的な対応」でやり取りを最小限で済ませようとしたりするなど。

「心理的な負担」を減らすため他人との接触を避けて飲み会や宴会などに参加しない、電話番号など連絡先を教えない、自分から相手を誘ったりしないなど、できるだけ他人との関わりを持たないことで「過剰負荷環境」から自分の身を守っているということです。


大勢の人が暮らす都会では通勤や通学の電車のホームやバスの停留所などで、いつも同じ時間帯に乗り降りする他人を見かけることがあると思います。
この「顔はよく見かけるけど、どこの誰かは知らないし、話をすることもない見慣れた他人」のことを、社会心理学者のミルグラムは「ファミリア・ストレンジャー」と呼んでいます。

ミルグラムは実験を行い、まず通勤電車のホームで待っている乗客の写真を撮り次の週に同じ時刻の電車に乗り込み、乗客に撮った写真を見せました。
その結果、1人あたり平均して4人の「ファミリア・ストレンジャー」を認識していることが分かりました。


自分の近くにいる「ファミリア・ストレンジャー」に興味や関心を持って、何かのきっかけがあれば「相手と知り合いたい」と思うこともあるようですが、相手と知り合いたいあまりに、むやみに「自分の存在に気付いてもらおう」などという行動をすると「ストーカー」と認識されて警戒されることもありますから注意が必要です。


それぞれの人生の中で、どこに出会いがあるかは分かりませんが、相手に警戒されるようなやり方ではなく素直に出会った方がいいですよね。



目次 はじめに

プロローグ「心理学」ってなんだろう?

「心理学とは?」 人間の心を「分析する」とはどういうことだろう?
・心を科学的に探究するのが「心理学」
・人間の存在するところには心理学がある

「さまざまな心理学」 心理学にはどんな分野があるのだろう? 
・あらゆる分野に存在する心理学

「心理学の歴史①」 心の研究はアリストテレスにはじまった
・心理学のはじまり
・自然科学と心理学の発展の軌跡
・「心理学の父」ヴントの学説

「心理学の歴史②」 現代心理学の基礎となる科学時代の心理学
・行動主義心理学の挑戦
・条件反射でなんでもできる?
・ゲシュタルト心理学の台頭
・フロイト登場~精神分析学
・日本の心理学の歴史


PART1「人間の感覚」と心理学

「脳と心」 脳と心にはどんな関係があるのだろう?
・脳がわかれば心もわかる?

「認識のしくみ」 人間はものごとをどうやって認識しているのだろう?
・同じものを見ても、人によって見え方が違う
・「認知心理学」は人間の知的活動を分析する

「情報の処理」 さまざまな情報を人はどうやって処理しているのだろう?
・無意識に行われる情報処理
・頭の中にあるネットワーク

「記憶①」 瞬間保存から長期保存まで、記憶の保存方法はさまざま
・すぐ忘れる記憶と忘れにくい記憶がある
・さまざまなかたちの記憶がある

「記憶②」 覚えたはずなのに、思い出せないのはなぜだろう?
・思い出せない記憶、失われた記憶

「記憶術」 記憶のメカニズムを利用して効果的な記憶方法を身につけよう
・記憶力をよくする5つの方法

「顔の記憶」 人は他人の顔をどうやって識別しているのだろう?
・個々の顔をどう識別している?
・子どもと大人で顔の識別能力が異なる

「視覚」 「目に映ったそのもの」ではなく、もともと知っている通りに知覚する
・目に映るものはいがいとあいまい
・錯覚にもいろいろある

「残像現象」 相手に気づかれないうちに潜在意識に働きかけることができる?
・刺激が感覚として残っている
・サブリミナル効果で人間の行動を操れる!?

「色彩」 「色」と「心」の関係を探る色彩心理の世界
・色が感情に影響を与える
・色はさまざまな場所で活用されている
・日本人が好む色とは?
・色の好みで性格がわかる?

「音楽」 心の健康に音楽を。 音楽心理学の世界
・音楽は心を健康にする
・音楽療法の方法とその効果は?


PART2「人間の成長」と心理学

「発達心理学とは?」 誕生から死に至るまでの心身の変化を解明する
・人間の発達を心理学的に分析してみる

「発達の基本」 子どもが発達でたどる道筋
・子どもの発達における主な特徴
COLUMN 人間は未成熟な状態で生まれてくる

「愛着の発達」 親子の絆はいつからはじまる?
・乳児期の母親との関係が人間関係の基礎となる
・感情は2歳までに急速に発達する
・母親との愛着関係があるから人見知りする
COLUMN 微笑みにも発達段階がある
COLUMN 赤ちゃんはぬくもりで愛着を抱く
COLUMN 親子の絆は刷り込みでつくられる?

「乳幼児期」 赤ちゃんには限りない可能性を秘めた能力がある
・赤ちゃんはなにを見ている?
COLUMN 赤ちゃんにもさまざまな個性がある

「自己の確立」 子どもはどうやって自己を確立していくのだろう?
・赤ちゃんが持つ母親との一体感
・少しずつ自己を確立していく

「知的発達」 生まれた瞬間から知的発達がはじまる
・子どもから大人までの知的発達の過程

「頭のよさ」 「頭がよい=知能指数が高い」は本当?
・「頭がよい」ってなんだろう?
・IQが高ければ頭もよい?
・天才の家系はあるのか?

「知能と創造性」 知能が高ければ創造性も高い?
・創造性は思考の柔軟性に負うところが多い
・知能と創造性の関連性は低い
・「創造性豊かな人」とはどんな人?
・頭のよさだけでなく心の豊かさも大切

「やる気と行動」 やる気はどこから湧いてくるのだろう?
・「やる気」とはなんだろう?
・本物のやる気は内側から湧いてくる
・パヴロフとスキナーが発見したメカニズム
・失敗続きで無力感に陥ることも・・・・・・
COLUMN 嘘でもいいから高い評価を!?
COLUMN 期待がやる気を引き起こす――ピグマリオン効果

「子どものしつけ」 子どもはマネをして成長していく
・親の態度が子どもの性格に影響する
・子どもにとって親は一番身近なモデル
・モデリングによる”しつけ”

「ギャング・エイジ」 子ども同士の遊びの中で社会のルールを身につける
・遊びの中で社会性が育まれる
・道徳観が生まれ社会のルールを学ぶ
・消えつつあるギャング集団

「反抗期」 子どもの成長には反抗期が欠かせない
・第一反抗期は正常な発達の証し
・第二反抗期は大人への登竜門
・大人であるための条件

「発達のつまづき」 軽度発達障害は早めの発見と適切な援助が大切
・軽度発達障害とは?

「青年期」 アイデンティティを確立し子どもから大人へ脱皮する
・アイデンティティの確立は青年期の重要課題
・大人になることを先延ばしにする
・「モラトリアム人間」は現代社会の象徴!?
COLUMN 青年期に起こる身体の変化「第二次性徴」
COLUMN 青年期を卒業できない現代人

「成人期」 人生で最も充実するはずの成人期にはストレスも多い
・成人期は人生の正午
・成人期の発達課題とは?
・体力の衰えと責任の増大でストレスが生まれる
・ストレスによる出社拒否や帰宅拒否
・中年期クライシスから脱却するためには?
COLUMN 男性にも増えている更年期障害
COLUMN 増加し続ける熟年離婚

「高齢期」 幸福に年齢を重ねていくために大切なことは?
・生涯発達における「高齢期」のとらえ方
・幸福な老いを迎えるための3つの理論
COLUMN サクセスフル・エイジングとプロダクティブ・エイジング
COLUMN 年齢とともに大きくなるアフォーダンス知覚と現実のズレ


PART3「性格や感情」と心理学

「性格とは?」 人は仮面を付け替えるように人生を演じている?
・パーソナリティとキャラクター
・「個性」とはなんだろう?

「性格の分類」 性格の分類方法にもいろいろある
・2つの性格分類「類型論」と「特性論」
・ユングの性格分類――内向型と外向型
・体形で性格がわかる!?
COLUMN 五大特性で人間を捉えるビッグ・ファイブ説

「フロイト」 フロイトは人間の心をどのようにとらえていたのだろう?
・心理学上の新見地を確立したフロイト
・フロイトは意識を三層で考えた
・自我防衛機制は自分を守る心の動き
・フロイトが唱えたリビドーとは?
・夢からわかる心の動き

「ユング」 フロイトと袂を分かち、分析心理学を立ち上げたユング
・ユングとフロイト~出会いと別れ~
・「コンプレックス」はユングがつきとめた
・内向型・外向型「タイプ論」の裏話
・フロイトとは異なるユングの無意識説
・人は誰でも無意識の仮面をかぶっている

「夢①」 現実では満たされない思いを充足させるために夢を見る
・睡眠はレム睡眠とノンレム睡眠の繰り返し
・一晩に4~5回の夢を見る
・夢を見られなければイライラが・・・・・
・夢は睡眠の保護者
COLUMN どうして同じ夢を何度も見るのだろう?

「夢②」 フロイトとユングは夢から心を分析しようとした
・フロイトは抑圧された願望を読み取った
・ユングは夢の解釈法にこだわった
・ユング派の夢分析の特徴
COLUMN 正夢は本当にある?
COLUMN ステッキは男性器、箱は女性器のシンボル!?

「夢③」 自分の夢を分析してみよう
・夢にはメッセージが隠されている

「遺伝と性格」 性格は遺伝と環境が作用し合ってつくられる
・性格は生まれつき?
・双生児研究が明らかにしていることは?

「きょうだいと性格」 兄は兄らしい、妹は妹らしい性格になる理由は?
・親の接し方が性格をつくる
・きょうだいの役割に応じた性格になる
COLUMN きょうだいはナナメの関係にある

「性格テスト」 本当の自分がわかる? 性格テストの種類と方法
・性格テストは大きく3つに分けられる

「男らしさ・女らしさ」 男は「男らしい」、女は「女らしい」ほうがよい?
・異性から見た男らしさ、女らしさ
・「らしさ」は時代とともに変化する
・「男らしさ」も「女らしさ」も大切
COLUMN 社会によってつくられる性差「ジェンダー」

「血液型と性格」 「B型は自分勝手」「A型は神経質」は本当?
・血液型性格判断に科学的な根拠はない
・血液型性格判断が人気の理由は?

「嘘」 なぜ人は「嘘」をつくのか?
・人間は誰でも嘘をつく
・嘘は身体にあらわれる
COLUMN 子どもの嘘は自立への第一歩
COLUMN 「すっぱいブドウの論理」

「感情」 一番最初に生まれた感情は「恐怖」だった
・「恐怖」は命を守る感情の働き
・学習によって感情も身についていく

「怒り」 アドレナリンの分泌が引き起こす怒りとイライラ
・満員電車でイライラする理由は?
・男性は狭いところにいると怒りっぽくなる
COLUMN いつも怒っている人は早死にする!?

「欲求不満」 満たされない欲求を持つから上を目指そうとする
・生きるために必要な欲求
・大切なのは自分の人生に意味を見出すこと

「コンプレックス」 嫉妬や恐怖心の裏にはコンプレックスがひそんでいる
・コンプレックスは誰にでもある


PART4「社会・人間関係」と心理学

「情報化社会」「都会の人間が冷たい」のは氾濫する情報から身を守るため
・情報が多すぎて処理しきれない
・他人との関わりを避けて身を守る

「他人」赤の他人と知り合いの間のファミリア・ストレンジャー
・見慣れた他人、ファミリア・ストレンジャー
・あいさつを交わす仲になれば親しみを持てる
COLUMN 匿名性が人を大胆にさせる

「集団心理」 集団思考にとらわれると真実が見えなくなる
・結束の固さを強さと混同する
・みんなでやれば怖くない?
COLUMN 多数決が正しいとは限らない
COLUMN 少数の力――マイノリティ・インフルエンス

「同調性」 知らず知らずのうちに考えや行動を集団に合わせている
・所属する集団の色に染まっていく
・多数派の意見に流されてしまう

「援助行動」 集団が大きくなればなるほど人を助けなくなっていく
・「誰かが助けるだろう」という心理
・顔見知りの相手なら助けるけど・・・・・
COLUMN 集団は個人の意見を極端にする

「パニック」 不安や好奇心があおられ、恐怖が伝染する?
・火星人襲来!? 本当にあった大パニック
・人がパニックに陥る理由は?
・暴動の引き金を引く「アジテーター」
・協力して行動する冷静さが必要
COLUMN 流言もデモも社会不安から広まっていく
COLUMN 群衆が暴動を起こすとき

「集団のかたち」 それぞれの集団にはそれぞれのネットワークがある
・人が集まれば人間関係が生まれる
・作業に最適な集団のかたちとは?
COLUMN 集団心理を研究したモノ
COLUMN 集団形成の条件とは?

「対人恐怖」 相手にどう思われているか気になってしかたがない
・「あがり」はなぜ起きる?
・他人が怖い「対人恐怖症」

「パーソナル・スペース」 対人関係をよくするための絶妙な間合いがある
・パーソナル・スペースに侵入すると嫌われる?
・パーソナル・スペースが生理にも影響を与える
・集団生活のストレスが身体に及ぼす影響
COLUMN 握手戦術で人の印象はこうも変わる
COLUMN 言葉遣いも距離感が大事

「相手の気持ち」 本音を知るための心理テクニック
・感情や表情とはなんだろう?
・表情から相手の気持ちを見抜くのは難しい
・瞳の大小で相手の本心を見抜く
・視線の合わせ方で相手の性格を見抜く
COLUMN 人の気持ちを理解するために大切な非言語コミニュケーション
COLUMN コミニュケーションを豊かにするパラランゲージの力

「印象」 人の印象はどのように決まるのだろう?
・たった一言で印象が大きく変わる
・言葉の順番でも印象は変わる
・矛盾したイメージを受け入れられる?
・自分のイメージをよくするためには?
COLUMN 会ったこともない有名人を友人のように語ってしまう理由?
COLUMN ステレオタイプに要注意
COLUMN 人は地位や肩書に左右される

「説得の心理」 相手の意見や態度を変えさせるテクニック
・説得により相手を変える
・説得のテクニック

「取引・交渉」 最大の利益を得る戦略を探る「ゲーム理論」
・零和型ゲームでは得点の和が常にゼロになる
・非零和型ゲーム「囚人のジレンマゲーム」
COLUMN 宣言すればやらざるを得ない?

「リーダーシップ」 よいリーダーは環境が育てる
・リーダーは環境でつくられる
・リーダーシップは「PM理論」で説明できる
・状況に応じてPとMを使い分ける
・あなたのリーダーシップ類型は?

「人心掌握術」 人は「平等」よりも「公平」を求めている
・「公平分配」と「平等分配」は異なる
・不公平感を感じた者はどんな行動をとるか?

「会議」 どの席に座るかで会議の行方が変わってくる
・参加者の気持ちが席順に出る
・正面の相手には要注意
・おいしいもので会議や交渉を有利に
COLUMN バンドワゴン・アピールで発言に花を添える?

「商売の心理」 商売の裏にある顧客の心をつかむためのテクニック
・商売はテクニック!?

「広告宣伝の効果」 同じCMを何度も繰り返す理由は?
・CMは繰り返すことに意味がある
・面白い宣伝は視覚的にも選別される

「いじめ」 「いじめ」には複雑な背景がある
・子ども同士のいじめの背景とは?
・「いじめる心理」と「いじめられる心理」
COLUMN 生徒の心をケアするスクール・カウンセラー

「恋と性欲」 恋は<生理的興奮→性的興奮>で生まれる!?
・恋愛感情を芽生えさせるコツがある?
・ドキドキの勘違い
・青年期は一目惚れが起こりやすい?
COLUMN 得難いものほど価値がある――ロミオとジュリエット効果
COLUMN 知れば知るほど好きになる――単純接触効果

「カップル」 自分と似ているけど違う人に愛情を感じる
・人間は分相応の相手を選ぶ
・似ていればよいというものではない
COLUMN 結婚から3年経つと女性は幸福ではなくなる
COLUMN 愛と憎しみは紙一重


PART5「心の病気」と心理学

「ストレス」 身体的・心理的な刺激によって体にさまざまな障害が起きる
・外部の刺激で心と体が歪む
・ストレスは行動のエネルギーでもある

「心と体」 性格や心の状態から病気になることもある
・身体の病気に隠された「心の病気」
COLUMN 「笑い」で健康になる

「精神疾患」 人はなぜ心を病むのだろうか?
・さまざまな精神疾患
COLUMN 神経疾患の診断マニュアル――DSM‐Ⅳ‐TRとは?

「パーソナリティ障害」 世の中にいる、ちょっと風変わりな人々
・性格の偏りのため、生きにくい

「アディクション」 アルコール、買い物、人間関係・・・・・・さまざまものに依存する
・アディクションは大きく3つに分けられる
・物質嗜好の代表――アルコール依存症
・プロセス嗜好の代表――買い物依存症
・人間関係嗜好の代表――共依存症
COLUMN 生きにくさを乗り越える「アダルト・チルドレン」
COLUMN 夫婦・恋人間の暴力――ドメスティック・バイオレンス

「トラウマ」 強いショックやストレスはトラウマやPTSDとなる
・つらい経験がトラウマを引き起こす
・外傷体験を再体験するPTSD

「流行症候群」 時代が生み出すさまざまな流行症候群
・時代と共に移り変わる

「自殺」 自殺の深層心理を探る
・死にたい・殺したい・殺されたい欲求
・自殺未遂者は青年に多い
・自殺者の半数はサインを送っている

「心理療法」 心の健康を取り戻すためのさまざまな心理療法
・心理療法の種類はさまざま
COLUMN カウンセラーに対する特殊な感情「転移」

「カウンセラー」 心の病を癒すカウンセラーという仕事
・カウンセラーに必要な「聴く」技術とは?
COLUMN 心理学に関する仕事にはなにがある?

50音順索引&人物解説




認知バイアスとは何か

2023-07-10 | 読んだ本
情報を正しく選択するための 認知バイアス事典 世界と自分の見え方を変える「60の心のクセ」のトリセツ  
著 情報文化研究所(山崎紗紀子/宮代こずゑ/菊池由希子) 監修 高橋昌一郎(情報文化研究所所長)


一般的に「バイアス」というのは折り目に対して斜めに切った布の切れ端のことで、そこから「かさ上げ・偏り・歪み」を指すようになった言葉。

「認知バイアス」とは偏見や先入観、固執断定や歪んだデータ、一方的な思い込みや誤解などを幅広く指す言葉。


「自分は偏見を持っていない」「自分はだまされないぞ」と思う人でも、読めば「目からウロコが落ちる」ような本。


よくある心理学には「認知的不協和理論」があり、「自分の本音と実際の行動が矛盾しているなど、自分の中で一致しない複数の意見を同時に抱えている状態」。

ある実験を行い、この実験に参加した男子大学生は、単調で退屈な作業を1人で1時間繰り返すことを要求された。

そして、次の実験に参加するために別室に待機している学生に対して「実験は大変面白かった」と話すように実験者から依頼され、そのアルバイト代として「1ドル」または「20ドル」と被験者によって提示される金額が異なっていた。


次の参加者として待機していた女子学生(実はサクラ)へ「実験は面白かった」と伝えた男子学生は、次に別室に連れていかれ、インタビュアーに「実験の今後の改善のため」として「作業に関する面白さ」について率直な意見を求められた。

参加者の学生がー5(非常に退屈だった)から+5(非常に面白かった)まで11段階で回答した。


実験者が注目していたのは、最後に答えてもらった「作業に関する面白さの度合い」についてである。


アルバイトの報酬として「20ドル」を提示された条件では、比較として「アルバイトを実施しなかった条件」との差があまり見られなかった。

一方、アルバイトの報酬として「1ドル」を提示された条件では、「アルバイトなし条件」「20ドルをもらう条件」より「作業が面白かった」と答えた割合が統計的に多かった。


結果として、報酬として「20ドル」を提示された学生より「1ドル」を提示された学生の方が「作業が面白かった」と答えた割合が多かったのである。

実験結果が意外だと思われるかもしれないが、男子学生は「『作業がつまらない』という本音の意見」と「女子学生に向けて言わされた『実験が面白かったという感想』」の2つの感情を抱えることになる。

このように「矛盾する意見を同時に持つ」という状態は、精神的に「居心地の悪い状態」を引き起こす。(この状態を「不協和」と呼ぶ)


報酬に「20ドル」を提示された学生は、「他者に『面白かった』と伝える役」に対しての報酬に「20ドル」が提示されているので、不協和を感じる気持ちにも「納得のいく理由づけ」が出来るため、精神的な負担が少なくなる。

要するに「本当は退屈だと思ったけれど、対価をもらって「面白い」と言ったのだから、それでいい」。


報酬が「1ドル」だった学生は「本当は退屈だったが、他者に「面白かった」と伝える役」という不協和を感じる状態に「居心地の悪さ」を感じているが、報酬が「1ドル」なので「協和の感情」を減らすことが出来ず「自分が面白いと思ったから『面白い』と伝えたのだ」と置き換えることで精神的な負担を減らそうとする、という心理状態。



「公正世界仮説」では「良い行いには良いことが、悪い行いには悪いことが返ってくるとする認知的な偏りのこと」。


子供の頃に悪いことをすると親や先生などから「罰が当たるよ」と言われたり、「自業自得」「因果応報」という言葉もあるし、「好意の返報性」という言葉もある。

ある実験で実験参加者に、他人が様々な条件下で電気ショックを受ける状況を見せて、参加者の感情がどう変化するかを見る実験で「電気ショックを受けて苦しむ姿」を見続けていると、実験が進むにつれて「電気ショックを受けている人」を蔑むようになっていくことが分かった。


研究者たちは、参加者の感情に変化が生じた理由について「電気ショックを受けて苦しんでいるのは本人の行いが悪いからに違いない」と考えるようになったため、と結論付けた。

「日頃の行いが良ければ良いことが、日頃の行いが悪ければ悪いことが返ってくる」「その行動にふさわしい結果がその人に降りかかる」「本人の日頃の行いが悪いから、ひどい目にあったのだろう」とする考え方。


「本人には何の落ち度もないのに苦労を強いられる人がいる」という現実を直視すると「自分も理不尽に傷つけられることがあるかもしれない」「ひどい目に遭うことがあるかもしれない」という不安な気持ちから逃れるために「公正世界仮説」を信じるのだろうという心理状態。

貧困家庭や障害者などの「社会的弱者」に対して世間の反応が厳しくなるのは、「このような心理」があるからなのだろうか。



「覆面男の誤謬」では「置き換えについての知識不足によって生じてしまう誤謬」。


若い人が知っているかどうかは分からないが、映画のスーパーマンでは「クラーク・ケント=スーパーマン」という設定がおなじみ。

バットマンなら「ブルース・ウエイン=バットマン」という設定。


例えば、ある女性はクラーク・ケントの知り合いではあるが「クラーク・ケント=スーパーマンである」ということは知らない。

ある日、女性は知人から「あなた、スーパーマンと知り合いなの?」と聞かれたが、「クラーク・ケント=スーパーマン」だとは知らない女性は、知人に「知り合いなわけないでしょ」と答えた。


この女性は「クラーク・ケントとは知り合い」なので、女性が「クラーク・ケント=スーパーマンである」ことを知らなくても「スーパーマンと知り合いである」という表現は成り立つ。

この「女性がクラーク・ケント=スーパーマンだということを知らなくても成り立つ」というところに納得がいかないが、そういうことになるらしい。


「クラーク・ケントと知り合いである」「クラーク・ケントはスーパーマンである」だから「スーパーマンと知り合いである」と置き換えても表現の仕方に偽りはない、ということらしい。


しかし「置き換えのできない特殊な命題」も存在する。


ステップ1 ある女性は「クラーク・ケントが冴えない男だ」ということを信じている。

ステップ2 「クラーク・ケント」を「スーパーマン」で置き換える。

ステップ3 ある女性は「スーパーマンは冴えない男だ」ということを信じている。


文の中に「信じる」「愛する」「望む」「疑う」というような動詞が含まれる場合、行為の主体(その行為を行う人)の主観やとらえ方が、文の成立にも影響を与える。

この場合「ステップ1」が成立しているからといって、「ステップ2」の置き換えにより「ステップ3」が成立するわけではない、ということになる。

よって、「クラーク・ケントは冴えない男であると信じている」「クラーク・ケントはスーパーマンである」、だから「スーパーマンも冴えない男であると信じている」は置き換え不可である。


「冴えない男だと思っていたら実はスーパーマンだった」というパターンは、それこそ「変身ヒーローもの」の醍醐味だったりするので、それはそれでいいけど。

そもそも「信じる」「期待する」という感情は、必ずしも「客観的な事実」なわけではないかもしれないわけだし。


その他にも「二分法の誤謬」では「実際にはより多くの選択肢が存在するにもかかわらず、限られた選択肢しかないと思い込んでしまうことにより生じる誤謬」。

「お前だって論法」では「相手の主張が本人の振る舞いと食い違っていることを指摘し、論点をそらすことで相手を負かそうとする論法」。

「感情移入ギャップ」では「対象に対して怒りや好意など何らかの感情を持っていると、その感情を持たない視点から考えることが難しくなってしまうこと」。


人間は自分自身を守るあまりに「客観的な現実」をあまり重視していないのかもしれない。



監修者まえがきー「認知バイアス」とは何か?

第Ⅰ部  認知バイアスへの論理学的アプローチ
  01 二分法の誤謬
  02 ソリテス・パラドックス
  03 多義の誤謬
  04 循環論法
  05 滑りやすい坂論法
  06 早まった一般化
  07 チェリー・ピッキング
  08 ギャンブラーの誤謬
  09 対人論法
  10 お前だって論法
  11 藁人形論法
  12 希望的観測
  13 覆面男の誤謬
  14 連言錯誤
  15 前件否定
  16 後件否定
  17 四個概念の誤謬
  18 信念バイアス
  19 信念の保守主義
  20 常識推論


第Ⅱ部  認知バイアスへの認知科学的アプローチ
  01 ミュラー・リヤー錯視
  02 ウサギとアヒル図形
  03 ゴムの手錯覚
  04 マガーク効果
  05 サブリミナル効果
  06 吊り橋効果
  07 認知的不協和
  08 気分一致効果
  09 デジャビュ
  10 舌先現象
  11 フォルス・メモリ
  12 スリーパー効果
  13 心的制約
  14 機能的固着
  15 選択的注意
  16 注意の瞬き
  17 賢馬ハンス効果
  18 確証バイアス
  19 迷信行動
  20 疑似相関


第Ⅲ部 認知バイアスへの社会心理学アプローチ
  01 単純接触効果
  02 感情移入ギャップ
  03 ハロー効果
  04 バーナム効果
  05 ステレオタイプ
  06 モラル信任効果
  07 基本的な帰属の誤り
  08 内集団バイアス
  09 究極的な帰属の誤り
  10 防衛的帰属仮設
  11 心理的リアクタンス
  12 現状維持バイアス
  13 公正世界仮説
  14 システム正当化バイアス
  15 チアリーダー効果
  16 身元の分かる犠牲者効果
  17 同調バイアス
  18 バンドワゴン効果
  19 ダニング=クルーガー効果
  20 知識の呪縛




自分の「心理的な現実」に気づくために

2023-06-25 | 読んだ本
心の整理学 自分の「心理的な現実」に気づくために  加藤諦三


例えば「自分がある人から好かれていない」ことに気づいたとき、どうするか。

「その人との関係は?」と考えてみると、「昔からの親しい友人」なのか、「職場で顔を合わせるだけの同僚」なのか、「お店の常連客」なのかで、どの人が自分にとって重要なのかを考えたとき「接点の少ない人から無理に好かれていなくてもいい」ということもある。

性格的にも「気さくに話をする人」「気難しくて話しかけにくい人」がいるから、単純に話しかけにくいだけで「嫌われているわけではない」ということもある。


そう考えると「そこまで気に病むことではないな」と思えたり、それでも気になってしまうのは「自分が八方美人だから悩んでいるんだ」と自分を理解できるかもしれない。


逆に「ある人から自分が好かれていると思いたい」のに思い通りの展開にならないとき。

・頭の中で妄想を繰り広げているだけで、自分から相手に誘いをかけるなどの積極的な行動がない「頭でっかち型」
・どうでもいいことには「気遣い」を回してくるが、本質的な想像力がない「本末転倒型」


「思い通りの展開にならない」と嘆いている割に、「思い通りの展開にする努力や行動はしていない」というのは、どうなんだろうという気もするが。

それに「本当に好かれたいと思っているのか?」という疑問も付きまとうし。



「八方美人は『心の整理』が出来ていない人の典型的な例である」と著者は説いている。

「八方美人は『この人との関係はこう』と決められないで、誰かれ構わず皆に良い顔をしようとする。 そしてそれが出来なくて悩む。 結局、無理をするだけで誰からも本当には好かれない。 信頼されない。 その結果、周りにいるのはユーザーばかり。 つまり、その人を利用しようとする人ばかり。」


「燃え尽き症候群」になるような人も同じで「つまり自分にとって何が大切で、何が大切でないかが整理されていない。 したがって努力に努力を重ねても結果は最悪になる。 現実の自分の能力には限界がある。 体力にも限界はある。 一日、二十四時間、働いていられるなら良い。 しかし、それぞれの人には必要な休息の時間がある。 そうなれば自分はこの仕事はするが、あの仕事はしないという区別がつく。」


「『この仕事』と『あの仕事』は同じように重要なのではない。 現実の自分を考慮に入れたときに、あの仕事はしない、という選択肢が当然出てくる。 さらに仕事と健康の選択も出てくる。 人は誰でも同じように体力があるわけではない。 そうなれば、この仕事はしたいけど自分の体力では無理だ、という判断ができる。」


「燃え尽き症候群になるような人は、仕事と健康という選択もできない。 健康が第一ということが分かっている人は、当然、身辺のいろいろな選択ができる。 優柔不断な人は、あれもこれもと欲張りながら、最後は健康を害して迷惑をかけてしまう。 称賛を得たい。 成功したい。 それを優先しすぎて体を壊すのが燃え尽き症候群である。」

「称賛を得たい。 成功したい。 そのこと自体は悪いことではない。 しかし自分の欲求の整理が出来ていない。 「これ」と「あれ」と、どちらが自分にとって大切か? その判断ができれば心の整理は出来てくる。 心の整理が出来れば悩みは激減する。」 



そして悩んでいる人は「嫌なこと」を心の中で実際以上の大きさにしてしまう。

例えば「10キロ」の重さの嫌なことを、自分の中で「100キロ」の重さの嫌なことにしてしまう。

これが「悩みを顕微鏡で見る」と言われるものである。


生きている以上は「嫌なこと」は毎日のように出てくる。

そして小さな「嫌なこと」であっても、それが続くとエネルギーが無くなるから自信を無くす。

その「10キロの嫌なこと」を「100キロの嫌なこと」しないように、スリム化するのが「心の整理学」なのだという。



人間の心理は難しいですね。



まえがき

第1章 最悪を考えると、今がラクになる

マイナスに気を取られると悩みが大きくなる
ずるい人は、まず大きな要求をする
比較して考えると、苦しみの位置が見えてくる
コントラストの原理


第2章 心の整理とは現実を見つめること

一 イラショナル・ビリーフ
誰にとっても嫌なのか、自分にとって嫌なのか
心の持ち方で悩みは変わる
「『べき』の暴君」に支配されていないか
エネルギーの無駄遣いは止めよう
現実に向き合うと心の整理ができる


二 心の整理、それは「べき」や「ねばならない」を一つひとつ整理すること
実際の自分を受け入れられないと無謀なことを言う
あれもこれもと欲張るから疲れてしまう


三 自分がない人は優先順位がつけられない
感情の通い合いができない人
「良い人」とは「自分に合った人」
自分がないと皆に好かれようとする


四 嫌いなことか、大変なことか
嫌いなことは、エネルギーを消費する


第3章 燃え尽きる人は捨てられない人

一 捨てる
すべてを得ようとすると、すべてを失う
目的が分かればエネルギーは出る
好き、嫌いをハッキリさせる
過去を振り返って、好きか嫌いか考えよう
捨てるから、新しいものが得られる


二 焦点を絞る
あなたにとってどちらが大切か


三 目的を持つ
目的がないと選択はできない
捨てるには意志がいる


第4章 思い込みが苦しみを作る

過去にとらわれていないか
本当にダメかどうか整理する


第5章 どこが耐えられないか自問する

不幸を想像するのを止める
耐えることは美徳とは限らない
感情を出して行動できたとき、達成感が生まれる


第6章 ものごとは解釈によって変わる

楽観主義者と悲観主義者の解釈の違い
解釈の仕方を変えてみる
困ったら自問自答しよう
人間は言葉に頼ると、ものが見えなくなる
カテゴリーでものごとを考えないーーうつ病患者の考え方の特徴ーー


第7章 高すぎる期待が不幸を生む

心を整理するとは、苦しみの原因を知ること
自分を知らないと人生を間違える
自分の思うようにならなくて当たり前
失敗以外のものに目を向ける
悪いことが起こったら、良いこと探しをする


第8章 心の眼で見なければ真実は分からない

限界が分からないと達成感は得られない
最高ではなく最善を目指す
心の眼で自分の位置を見る
抑制型と非抑制型
眼には見えない心理的なハンディキャップ
怒りや恐怖にとらわれると、何が重要か分からなくなる
心に品格がある人とは
心の眼で見ると、世の中が違って見える
あなたは本当に弱い人か
努力と忍耐が心に品格をもたらす


あとがき




人間はなぜ「妬む」のか

2023-04-20 | 読んだ本
正しい恨みの晴らし方 科学で読み解くネガティブ感情  中野信子+澤田匡人 

脳科学者と心理学者が「人間はなぜ妬むのか」を、脳科学と心理学の見地から解き明かした本。

人気の脳科学者の人が書いているので手に取ってみたけど、すごいタイトルだね~。



人間は「自分より優れている人」「自分が持っていないモノを持っている人」「自分より早くこれらのモノを手に入れた人」というように、家柄、財産、個人の才能や能力、年齢、容姿の美醜、身長の高低、地位や肩書など・・・あらゆるものに「妬みの感情」を持ちます。


「妬みを感じる」というのは、その物や才能・気質、地位的立場が「自分にとって大切なモノ」で「相手の方が優れている」という状況を察知しているから

その時点で相対的に「自分の評価は相手より劣っている」と認識され、自身のプライドが傷つきます。

自分と自分以外の人間を比較することで自己評価が下がり、それに伴って「ネガティブな感情」が生じるということ。

しかし、自分の周りにいる人間を誰でも「妬みの対象」にしているわけでもありません。


自分自身の環境から、あまりに「能力や格が違う相手」や、全く環境の違う「別世界の人間」を妬みの対象にすることは少なく、どちらかというと自分と相手は同等、またはわずかの差しかない「自分に近い他者」に強い妬みを感じるといわれています。

一般的な例だと、年の近い兄弟姉妹などや、顔見知りの知り合いや仲の良い友人、あるいは親子間、夫婦間でも。



心理学では「うらやましい」に近い感情を「良性妬み」、ネガティブなニュアンスが強い敵意を持った妬みを「悪性妬み」と分けて考えるのがトレンドなのだそう。

日本語だと「妬み」も「嫉妬」も、ほとんど同じような意味で使われていますが、英語では「enby(妬み)」「Jealousy(嫉妬)」と別々の単語があります。

学術上では「妬み」と「嫉妬」は似ているようで、それぞれ別々の感情だとされています。


「妬み(enby)」は、自分の持っていない「何らかの好ましい価値のあるモノ」を自分以外の人が持っていて、それを自分も手に入れたいと願うあまり、その相手に対して生じる不快に思う感情。

「嫉妬(jealousy)」は、自分が持っていると思っている「何らかの好ましい価値のあるモノ」を自分以外の人が奪いに来るのではないかという可能性があるとき、その相手を排除したいと願う不快な感情。


妬みだと「あの子が持っているモノを私も欲しいのに!」という心理状態で、嫉妬だと「私の持っているモノが奪われるかもしれないから先に手を打っておかないと!」という心理状態。



第6章 愛が憎しみに変わるとき「ストーキングが止まらない」では、「ストーカー加害者」の傾向には
・確固たる心理的動機があり、正当性を妄想的に信じ込んでいる。
・相手を一方的に追い詰め、迷惑をかけていることを自覚しながらも、相手に好意を持たれる望みをかけている。
・その望みが絶たれた時、心のバランスは憎しみに反転し、自殺または相手を殺害することもある。


ストーカー加害者の多くは、法を犯してまで相手に復讐する権利があると思い込んでいて、「こんな自分がフラれるなんてありえない」「信頼関係を裏切られた」「相手が間違っている」と被害者意識を持ち、相手に何らかの対応を要求し続ける執念深さもあります。


ストーカーの種類には
「拒絶型」 別れた元の交際者がストーカー化。
「親密追求型」 望んだ相手と相思相愛の関係になろうとする。
「不適格型」 距離の詰め方が極端に不器用なので、結果的にストーカーとみなされる。
「捕食型」 何らかの性的嗜好を満たしたいがために、被害者を「自分の獲物」とみなし、追いかけ回す。
「恨み型」 「被害者意識」と「正義感」を持ち、自分を侮辱した相手を執拗に追いかける。


嫉妬をこじらせて「恨みの感情」まで行ってしまうと、さらに問題の解決が難しくなってしまいます。



「第9章 私たちのネガティブ感情とのつき合い方」で、著者2人の対談が載っていて、

「達観していると思われるかもしれませんが、実は一番苦しんできたのが脳科学者や心理学者ではないかと思います。 なぜなら、羨み、妬み、恨みなどのネガティブ感情と言われるものに人一倍敏感な人が心理学者や脳科学者になりたいという動機を持ちやすいからです。 ネガティブ感情に対して意識的で苦しみやすいため、何とかしたくて学び始めるのです。」

「脳科学者も心理学者も、それぞれの視点や方法でネガティブ感情に取り組んでいますが、共通点は「苦しみながら生きている自分」というレイヤーとは別のレイヤー、つまり学者という立場を得ることで、その苦しみを客観的に見ることができる。 そういう回避方法を使えるということです。 これが学問の良いところです。」

「メタ認知と言いますが、自分自身の感情の動きに対して、学問という見方をすることによって、ネガティブ感情による苦しみをダイレクトに受けて傷つくことを避けられます。 すると意識的にショックを和らげることができるようになります。」



「自分自身のネガティブ感情」の扱い方も難しいけれど「他人のネガティブ感情」に対する扱い方はもっと難しい。

それほどやり取りもない人から、いきなり敵対行動をされたり、ストーカー的な付きまとい方をされたりする場合も多いし。

そんなところから私も「心理学」に興味を持ったわけだけど、そこから学問を究めて学者として成功しているのは、すごいことだ。


興味を持ったことを調べて知識を得るということは素晴らしいことなんだね。




目次

はじめに

第1章  恨まずにはいられない~心理学の視点から①
なぜ怒り続けられるのか/不条理が許せない/見返しとプライド/仕返しの流儀/代理報復と集団/シャーデンフロイデと癒し

第2章  妬みと羨みの心理学~心理学の視点から②
なぜリア充が気に入らないのか/持たざる者の悪意/妬みをもたらす微妙な差/羨みと妬みの狭間で/飼いならされる妬み/感情のシーソーゲーム/妬みに操られないために

第3章  妬みを感じるとき、脳では何が起こっているのか~脳科学の視点から①
妬みと嫉妬の違い/妬みを感じる脳/他人の不幸を喜ぶ脳/妬み続けられるのは人間だけ?

第4章  正しさにこだわる人たち~心理学の視点から③
なぜ必殺仕事人が好まれるのか/魅惑のゴシップ/這い寄る同調圧力/いじめを正当化するもの/みんなで恨めば怖くない/正しさで鈍る正しさ

第5章  正義という名の麻薬~脳科学の視点から②
「道徳的攻撃」の快感/処罰感情と生贄――スケープゴート現象/あの人は罰を受けて当然?――「いじめられる側にも理由がある」の心理/正義が凶器になる時

第6章  愛が憎しみに変わるとき~心理学の視点から④
なぜ既読スルーが許せないのか/リベンジポルノと恨み/こじらせた嫉妬/ストーキングが止まらない/愛憎の連鎖を断ち切れるのか

第7章  嫉妬の脳科学~脳科学の視点から③
嫉妬とは/芸術作品にみる嫉妬――アマデウス・娘道成寺・危険な情事・ミザリー・ロベルトは今夜/ヒトはなぜ嫉妬するのか――親切な脳といじわるな脳/ネガティブ感情の処方箋――男には正義、女には共感で

第8章  ネガティブ感情の意味~脳科学の視点から④
不条理を検出し、仕返しをするメリット/亜闍世コンプレックス――お母さん、なぜ私を産んだのですか/「人間」という病

第9章  私たちのネガティブ感情とのつき合い方  
対談  中野信子×澤田匡人

脳科学者や心理学者は妬みや恨みに敏感/芸人が羨ましくて妬ましくてしかたない/嫉妬は相手をコントロールしたい欲求?/おかしい、変わっていると言われた子ども時代/異質な人に対して寛容な社会/妬みや恨みを抱えた人に向けて

おわりに





知的な距離感

2023-03-25 | 読んだ本
知的な距離感  プライベートエリア・・・・・魔法の効果  マジシャン 前田知洋


この本は、マジシャンである著者が「観客との距離の取り方」から「心理学的な距離感」までをテーマに書いたものです。


この著者が見せるマジックは「クロースアップ・マジック」というもので、レストランなどのテーブルをまわって「マジックをご覧になりますか?」と聞き、自己紹介や挨拶をします。

「これからトランプを使ってマジックをします。 『しかけ』があるか調べてみますか?」とテーブルの観客に尋ねます。


テーブルの数人の観客にトランプを手渡し、調べた人々が納得がいったところでトランプを受け取り、マジックを始めます。

これは、ただ単にマジシャンが「これから使うトランプに『しかけ』が無いこと」を調べてもらっただけのように見えますが、マジシャンはトランプを観客に触らせることによって、ごく自然に「観客とマジシャンの距離」を縮めたことになります。


日本で「クロースアップマジック」というスタイルがまだ浸透していなかった頃は、「食事の場でマジック?」という戸惑いが多く、お客様はなかなかリラックスしてくれません。

また女性はマジックに興味津々なのに、男性側は「女性との親密な時間を楽しみたい」というカップルでは、「マジックを見るか、見ないか」で険悪なムードになってしまうこともありました。


また親しい人同士でテーブルを囲むことで生まれた「プライベートエリア」に、他人が割り込むことは至難の業です。

運よく、最初のお客様を見つけることに成功すると、他のテーブルでも「こちらのテーブルでもマジックが見たい」という声がかかるのですが、ほとんどの場合はテーブルに近づいて「マジックをご覧になりますか?」と尋ねても、「結構です」と断られることが多いのです。


色々と試行錯誤を繰り返してみて気付いたことは、その場にいる人々は「他のお客様のテーブルで行われているマジック」を目にすることにより、「マジシャンが何分ぐらいマジックをするのか」「どんな道具を使うのか」「どのくらい楽しいものなのか」などを外側から知ることが出来る、ということ。

「マジックを楽しむ観客の様子を、他のテーブルの人にも見せるという方法が最も効果的」だということに気付きましたが、まずは一番最初のお客様に「マジックが見たい」と思ってもらわないことには始まりません。


それとともに、レストランに来たお客様に「このマジシャンはアヤシイ人ではない」と思ってもらうことが重要です。

そのためには、まずレストランで働くスタッフたちと信頼関係を築くことから始めました。

お客様はレストランのマネージャーやスタッフと、マジシャンが何気なく会話をする距離感を見ることで「このマジシャンはレストランに紛れ込んだ不審者ではない」と認識できます。


この「見る」というところがポイントで、マネージャーやスタッフとの会話を無理に聞かせる必要はありません。

「私はレストランで信用されています」「たくさんのお客様に喜んでいただけています」などと、いくら自分で言葉を重ねても人はあまり信用しません。

人は「表面の言葉の内容」よりも「どのように行動しているか」の方を重視しているものなのです。


・・・といった感じで、人と人との間の距離の取り方などを解説していきます。



知らない人の「プライベートエリア」に踏み込むこともあれば、「知り合った人の『プライベートエリア』に、あえて踏み込まない」ということもあるそうです。

マジシャンである著者が「プライベートなパーティ」で知り合った女性を偶然、街で見かけたことがありましたが「知らないフリ」をして、すれ違いました。

もちろん会話も交わしません。

これは「マジックを失敗した」とか「嫌な客だったから」というわけでは全くありません。


もし、相手が友人と一緒にいるときに「先日のパーティではお世話になりました」などと挨拶をすると、言われた方は一緒にいる友人に対して「いつ、どこで、どんなパーティがあったのか」などを説明しなければならなくなってしまうからです。

「そのパーティ」に、その友人を誘っていたのならまだ良いのでしょうが、誘っていなかった場合「どうして誘ってくれなかったの?」と、その友人との仲がこじれてしまうかもしれません。

社交界には「再会しても前回のパーティの話はしない」というルールがあるそうで、悪気はなくても「他人のプライバシーを暴露してしまうのは良くない」ということなんですね。


しばらくして、その女性と再会したときに「知らないフリ」をしたことを、とても褒めてくれたそうです。

「親しい友人だけど、あえて他人の距離感を保つ」というのも「気持ちの良い人間関係を築く」ためにも大事なことなんですね。




目次


1 距離を縮める

マジシャンが観客に道具を調べさせる本当の理由

 物理的な距離と精神的な距離
 大きな国の近い距離
 狭い空間と感情
 環境が変えるもの

あなたを包むオーラのような見えないバリア

 他人に侵入されたくない空間
 大きくなったり、小さくなったり
 プライベートエリアには個人差がある
 ストレスと洗練された動き

「マジックをご覧になりますか?」「結構です」

 話しかけづらい雰囲気
 このマジシャンはアヤシイ人ではない
 マジックより先に見せるもの
 ボディ・ランゲージにはウソが含まれにくい

「トランプを触ってみますか?」

 シカケのあるカードを差し出す
 信頼関係とは何か
 信頼関係のシンボル「握手」
 変化するプライベートエリア

“不器用さ”は親密さを増すスパイス

 好きになってもらう
 「不完全さ」で距離を縮める
 少しだけ塩を入れる
 不完全なプライベートエリア

マジックは、本の読めない暗さで

 暗いと距離が近くなる
 クラブやバーで親密さが増す理由
 明るい舞台、暗い客席


2 距離を探る

カジュアル・フライデーに違和感がある理由

 マジシャンと燕尾服
 服とプライベートエリアの関係
 相手をガッカリさせないために

リムジンとスポーツカーはどちらが快適か

 出迎えといえば・・・・
 狭いから愛おしい
 車内の空間は誰のものか
 エレベーターで上を向く人々 

ドライブ中に愛を告白するのは有効か?

 普段はいえないデリケートな話
 横並びは本音を探りやすい?
 横を向くことの錯覚
 「さりげなさ」や「曖昧さ」

マジックをするテーブルが半円な理由

 三角が生み出す対等感
 四角と三角と丸
 
仕事上のことは、正面で褒める

 社交辞令と心からの賛辞
 正面で褒めるのは人のためではない
 
立つべきか、座るべきか――マジシャンの悩み

 「マジシャンよ、立ち上がれ!」
 上司の小言対策
 司会のことをMCと呼ぶ理由
 強い立場の人間は距離を広めにとる

マジック禁止のプライベートクラブ
 
 はじめての社交界
 マナーとエスコートの意味
 エスコートとプライベートエリア
 二種類のドアの開け方
 イスから立ち上がる効果

あなたがマジシャンだとしたら?

 右側か、左側か
 左から右に
 プレゼン上級者は違和感を演出する
 プレゼン中の動作
 大切なものは左に
 理想のプレゼン

エンゲージリングは自分のプライベートエリアで

 ものを示す位置
 プレゼントの種類
 プレゼントの渡し方
 大切なものを貸すとき


3 空間を測る

恋人たちの幾何学模様

 夕暮れどきの鴨川
 壁際が人気の理由
 
ものは主張する

 座席の上のジャケット
 赤いカードの予言
 他人の侵入を防ぐ
 割れ窓理論
 本当はたくさんある境界線
 水入りペットボトルの大流行

警戒厳重なマジックショー

 領域を分ける
 子連れでラスベガス
 ゾーニングとは何か
 マジシャンのベルベット

一人6㎡の権利がある

 高い机、重いドア、狭い通路
 オフィスは一人6㎡
 ハイバック・チェアが人気の理由

4 「空気」を読む

「距離感」と「振る舞い」が伝える二人の関係

 「俳優の仕事」とは何か?
 二人の関係を見抜く
 言葉以外のパラ・ランゲージ

空気はウソをつけない

 連続した空間
 空気感とプライベートエリア
 よそよそしい雰囲気とは
 見えないところで誠実であること

フィクションが教えるプライベートエリア

 宮本武蔵の「間合い」
 師の影を踏むべからず
 絵画の中でも

5 見えない相手

踏み込むべきか、踏み込まないべきか

 テレビを通じての友人
 ファンのメールが長続きしない理由
 声をかけようか、かけまいか
 知らないフリをする美学
 
声だけのコミニュケーション
 
 顔が見えない相手
 ギャップというウソ
 21世紀のストレス、携帯電話
 
距離感にわずらわされない便利なツール

 メールでのコミニュケーション
 クロースアップ・マジシャン流のメールの書き方
 「文は人なり」


6 プライベートエリアとは何か

プライベートエリアにはさまざまな働きがある

 プライベートエリアの働き
 働きの移り変わり

身体の部位によるプライベートエリア

 侵入してしまいがちな部位
 相手をイライラさせないために
 異性間のプライベートエリア

人と会うのが楽しくなる!

 知ることのメリット
 見えないガラス
 フィールドワーク   





やさしいあなたがナメられるのはなぜ?

2022-03-27 | 読んだ本
職場で、仲間うちで他人に軽く扱われない技法  内藤誼人(ないとう よしひと)
「仕事上の会話 ふだんの態度 何気ないしぐさ  やさしいあなたがナメられるのはなぜ?」  


心理学本はよく読むから手に取ってみたけど、「やさしい」かどうかはともかくとして「軽い態度」を取られることは多いわね・・・。


まずは前置きから。

~~ 人に軽んじられるのは、決して気持ちのいいものではない。 私たちには誰にでも「自分を尊重してほしい」「自分の価値を認めてほしい」「自分を大切に扱ってほしい」という尊厳欲求があるため、他人から軽んじられたり見下されたりすると、不愉快なのである。 自尊心が傷つくのである。 俗っぽくいえば非常にムカつくのである。

そんなのは当たり前の話ではあるが、では、どうすれば相手に軽んじられないのか、ということを本気で考えている人は意外に少ない。  どうすれば他人にバカにされたり、イジメられたりしないのかを考えず、ただ成り行きまかせに生きている人のなんと多いことか。

「お客さんにナメられて、とんでもない値下げの条件ばかり飲まされるんです・・・」
「同僚のなかでも、僕だけが、上司に集中的に怒鳴られているんです・・・」
「いつまで経っても新人扱いで、大切な仕事をまかせてもらえないんです・・・」

もし読者のみなさんが、このような悩みを抱えているのなら、その理由は明白だ。 それは、みなさんが軽んじられているからに他ならない。 さっそく本書をお読みいただいて「軽んじられない人間」へと変貌を遂げる必要があるだろう。 ~~


「究極の自己防衛術!」と銘打ってるだけあって、内容も超本気である。

私の場合は「営業職の会社員」ではないので、あまり当てはまらないものも多いけど、当てはまるとしたら「第2章 まれな場合にしか、やさしくしない」かも。


「いつでも他人にやさしくしてはいけない。 なぜかといえば親切を受ける相手は、あなたのやさしさを当たり前のものとして考えるようになり、せっかくやさしくしてあげても、たいして感謝されないからである。 しかも、そんな相手に限って、たまにやさしくするのを忘れたりすると、激しい怒りを見せたりするのである。 つまり、やさしくしても感謝されないばかりか、やさしくしないと怒られる、まことに困った状況に置かれてしまうのである。」



私の実体験から言っても、これは真実。

仕事の作業中に、ほんのちょっと「品物そろえた方が取りやすいかな」とか「キレイな方が気持ちいいし」などと思って(半分、自己満足なんだが)やっていたりすると、とたんに「周りにいる人間」の機嫌が悪くなる。

仕上げた品物を「次の部署」に流したりするので、「次の部署の人間に親切にした!」ということらしい。

こちらは、そんな程度で「次の人に親切にしている」なんて全く考えもしないが。

さらには「私も親切な対応が欲しいのに!」という無言の圧力までかけられる始末で、そんなことで腹立てられたら、こちらもムカッと来るし。


大抵は時間がたつと収まるものだが、「リーダー格のような人」だと作業上の事だけではなく「プライベートなこと」にも入り込んできて、雑談などで「他人の家庭環境」が垣間見えるようになると、ここにもまた「私にも!」が出てきたり。

さながら「嫁姑バトル」のような展開である。



「第6章 やさしい人は、実は『気弱な人』である」の中でも、
「他人に対する配慮はとても大切である。 相手が嫌がることを極力避け、好かれるように努力することは立派である。 しかし他人に対する気づかいをするのなら、それと同じくらいには自分に対しても気づかいをすべきであろう。 ~~~~ ぶつくさ文句を言いながら、結局は他人の言いなりになってしまう人の、なんと多いことか。 ようするに自分の魂までも売り払っているのである」とある。


やはり「まれな場合にしか、やさしくしない」くらいが、ちょうどいいのかも。



目次

第1章  一目置かれる話し方の極意  知識は少し隠した方がいい

底が浅いと思われる人は「こんな会話」をしている

「思わず口にした言葉」で、あなたの軽さがバレる

「賛成です」の一言ですますと、ナメられる

会話のつなぎ目に「なぜなら」を連呼しろ

「知識を限定」することで教養を匂わせる法

はやる気持ちをおさえて、訥々(とつとつ)と語る

「私は頭が悪いんです」と先手を打つと知的に見える

弱音を吐くなら相手は「こんな人だけ」にしろ

会話に入れる数字は官公庁から得たものに限る

「この人と話したい」と思われるための2つの秘訣

Clumn-1  ダメな人がよくやる「ダメな年賀状」のポイント3つ


第2章  「謙虚さ」はナメられる  相手を心理的に威圧する技法

目をきゅっと細めて相手の顔を見つめる

仕事で力を入れるなら「4月」にしろ

不用意に頭を下げると仕事はこない

「不機嫌な声」「仏頂面」を戦略的に使う

100円のものは1000円で売るべし

まれな場合にしか、やさしくしない

怖い顔をしていれば、人はおとなしく従ってくれる

援助を受け入れると、あなたは「弱者」になる

column-2  相手の反論をうまく封じ込める方法


第3章  「物怖じしない人」の秘密  宴会では「お誕生日席」を選べ!

遠慮せず「目立つ場所」に席をとる

30歳になる前に「一流の雰囲気」に慣れておく

オーバー・アクションで「強気な自分」を引き出す法

主導権をとりたいなら「話しかける」のは自分から

ときには「非常識な質問」や反対意見を

「口出し」すると、あなたの人間的価値が高まる理由

知識がなくとも「知識がある」ように見せる技

column-3  定期的に運動しているなら「それ」を語れ


第4章  一流の人間は「サバ」を読む  人は「ナニ」に敬意を払うのか?

「肩書」にとにかく貪欲になる

コネの「威光」を利用する

明るいイメージを売るなら「朝に弱い」ことを吹聴する

2、3歳年上に見られるように、年齢で「サバ」を読む

取引先に「若さのアピール」はむしろマイナス

経験年数でも「サバ」を読む

私が「賞」にとことん、こだわる理由

なぜあの人は、だれにでも「平気で軽口」が言えるのか?

column-4  自分の値段が高い人・安い人の「決定的な差」とは


第5章  対人術は「質」より「形」!  相手に見くびられない「見た目」の話

度胸はどんどん「安売り」しよう

「外面」は、いつでも自信満々でいる

「伝統」を感じさせるものを1つは身につける

余分な「混じりもののない道具」を使う

自分がした約束は1度でも破ると評価はゼロ

なぜ仕事ができる人は「筋トレ」をするのか?

どこか「危ない雰囲気」を漂わせる

肉体改造をすると精神的にも強くなる

100戦して100勝を心がける

column-5  人と食事をするときには「パスタ」を注文しない


第6章  簡単に「スペシャリスト」になる技術  自然と相手が負けてくれる心理テクニック

数少ないプロがしている「普通のこと」とは?

「〇〇といえばあいつ!」を確立する簡単な方法

ゼネラリストは「中途半端な人」の代名詞

ひそかに「俺の方が、ずっと各上」という意識を持つ

今ではなく「1カ月先のこと」を考えて過ごす

仕事では手抜きをすると「クセ」になる

やさしいひとは実は「気弱な人」である

無意味におごると軽んじられるだけ

column-6  「ほんのちょっとの差」では、だれも尊敬してくれない


おわりに

参考文献



男性は見知らぬ女性とも平気で関係を持てる

2022-02-12 | 読んだ本
人生相談は「不幸な人」にしよう 心理学に学ぶ意外な日常の法則   内藤誼人(ないとう よしひと)  


まるで前回の記事の続きのようですが、違う作者の本です。


第4章 社会と生活の心理学 「男性は見知らぬ女性とも平気で関係を持てる」から。

ノース・テキサス大学のラッセル・クラーク博士の調査で、自分の教え子の女性に頼み込んで大学のキャンパス内で男性に向かって「今晩、私とHしてくれますか?」と質問させてみた。

もちろん本当にHさせてしまうわけはなく、単に質問させるだけである。



するとサクラの女性が男性に向かって「そういう誘い方」をしてみると、69%の男性が快く応じたのである。

さらに驚くことに「今日は、ちょっとまずいんだ。 明日ならどうだろう?」と提案してくる男性もいたという。

そういう男性も含めて計算すれば「いま、会ったばかりの見知らぬ女性と関係が持てる」という男性は結構な確率で多い、ということになる。


次にクラーク博士は、男性の教え子を使って女性に向かって「今晩、ボクと寝てくれないでしょうか?」と同じように質問させてみた。

すると男性のサクラの誘いに「はい」と答える女性は「ゼロ」だった。


もともとクラーク博士は「エイズに関する知識」を調べるために、このような実験をしたのであるが、男性の多くは機会があれば、いつでも見知らぬ女性と関係が持てるし、性病の心配などもしないのらしい。


前の項目の「男性の初体験年齢は、親子でほぼ同じ」という説もあり、「ステレオタイプな感想」と言えばそれまでだが、つくづく「男性=性的体験」なのだなあ、という辺りがなんともだけど。

やれやれ。



目次

はじめに


第1章  認知と判断の心理学

  
 私たちは自分にだけ〝甘い点〟をつけたがる

 情報を無視しようとすると、かえって目に入ってくる

 人づての情報は最初の情報より極端になる

 〝老い〟を考えていると本当に〝老けて〟ゆく

 いいことだけに目を向けるのが健康の秘訣

 恋をしていれば「うつ」になりにくい

 ムシャクシャする気分をなくせば肥満予防に

 
第2章  記憶と知覚の心理学


 人間の記憶装置は、とてもいいかげん

 インチキな記憶を相手に植えつけるのは難しくない

 芸術作品をながめるのは自己実現への近道

 この世で〝もっとも美しい〟と知覚される対象とは?

 臭い部屋では人は怒りっぽくなる

 相手のいいところを探せる人ほど幸せになれる

 他人の話を素直に聞くのは難しい

 超能力で振り子は動くか


第3章  人間関係の心理学


 私たちは似た名前の人を好きになる

 一生魅力的でいるために必要なこと

 嫌われ者ほど交通事故をよく起こす

 ナルシストほど挑発に乗りやすい

 表情の豊かさは〝30年後の幸せ〟を約束する

 他人をホメるのは周囲に人がいないところで

 相手を正しく評価してあげることが家庭円満の秘訣

  
第4章  社会と生活の心理学


 女性は男性よりも早くチャンスをつかめる?

 自信のない男は働く女性を嫌う

 親の出産年齢が早いと子供もなぜか早くなる

 人生相談をするなら「不幸な人」にかぎる

 男性の初体験年齢は親子でほぼ同じ

 男性は見知らぬ女性とも平気で関係が持てる

 ハンサムな候補者ほど選挙で勝てる

 ゴキブリも人間も、みんなと一緒では「手抜き」する

 割り込みをするなら直前に割り込まないこと

 きちんとした服装で交通事故を防ぐ

 ギャンブル中毒者は「楽しくない」のにギャンブルをつづける

  
第5章  学習の心理学

 明るい未来をイメージしてⅠQアップ

 頭がいい人のことを考えろ

 くつろいだ雰囲気の中で学習せよ

 抱きしめてあげれば子どもは伸びる

 両親の期待があれば子どもはみるみる伸びる

 腕を伸ばすかどうかによって思考の動きも違ってくる

 朝型人間のほうが試験でいい点を取れる

 極めて高いハードルを課すのも時には有効

 「自分でどうにかする」気持ちを持て

  
第6章  消費と選好の心理学

 
 人はどんな広告に心が動かされるのか

 サブリミナル広告が効果的なのは、そういう欲求を持っている人にだけ

 大きな鏡があると人は「健康志向」になる

 とても効果的な「おまけ」作戦

 他人からどう見られているかが気になる人はパッケージに弱い

 だれでも〝異性〟の店員に対応されることを希望している

 選択肢の多さが満足感を高める


第7章  ビジネスと経済の心理学


 業績悪化の理由を言い訳している会社は1年後に株価が下がる

 不況だと「大柄な女性」がモテる

 経済が豊かになれば幸せになれるのか?

 太った人と一緒に仕事だと、こちらまで悪く評価される

 長い名前の人ほど〝成功〟しやすい

 締切がないと、だれも行動しない

 仕事の大半は午前中に片付けるのがベスト

 無意味な〝雑談〟が楽しさを決める

 曖昧なことをもっともらしく言えば占い師になれる

  
第8章  仕事と組織の心理学


 リーダーに必要な資質とは?

 出生順位と職業の選択には関連性がある?

 男性のグラス・エスカレーター

 集団で決めるときは一面的になりやすい

 起業家としての成功を約束する〝7つ〟の特性

 社内の人間関係が最高のリストラ予防に

 吸収合併に伴って一緒にさせられた社員の心境とは


 あとがき

  
 参考文献

  

  

セクハラしやすいタイプはどんなタイプ?

2022-02-01 | 読んだ本
フシギなくらい見えてくる! 「本当にわかる」心理学 植木理恵


第4章「観察」で見抜く心理学「セクハラをしやすいのはどんなタイプ?」から少々。

アメリカの研究で、就職の面接などの場面で「セクハラ的な質問はどのように起きるのか?」ということを調査したものから。

調査の手法は、女性の「採用志願者」に「面接官役」の男性が、どんな質問をしていくのかを記録する、というもの。


面接官に選ばれた男性陣を「三つのグループ」に分け、

1「あなたの評価が彼女の採否に関わります」(権限高群)
2「あなたの評価は彼女の採否に直接は関わりませんが、参考にはします」(権限低群)
3「採否の決定権」には、まったく触れず「広告視聴のモニターのため」と伝えて、面接の前には「アダルトビデオ」を鑑賞させた。(ビデオ鑑賞群)


三つの設定で、それぞれの面接の様子を観察した結果、「セクハラ的発言」が多かったのは「権限高群」と「ビデオ鑑賞群」の面接者だった。

・女性志願者に必要以上に接近する
・顔ではなく、身体を見つめる
・セクハラに当たるような質問をする


面接の前にアダルトビデオを鑑賞した「ビデオ鑑賞群」に、このような傾向が見られたのは「ある意味、当然の結果」としても、全く性的な感情とは無関係の「権限の高さ」が「セクハラ的な言動をする動機」になっていることは驚き、と論じている。



面接場面での権限効果について、さらに詳しく調べた研究もある。

面接官役の権限の強さを「上司からの言葉がけ」によって微調節し、それによって「面接態度がどのように変わるか」を調べたもの。

「実は、もう相手の採否は決まっている」 権限0%
「一応面接してもらうけど、採否にはあまり関係ない」 権限10%
「面接が採否に関わるかどうか、まだ分からない」 権限50%
「面接は採否にかなり影響するが、最終判断ではない」 権限70%
「この面接によって、採否が完全に決定する」 権限100%

実験の結果、採否の権限100%の面接者に「ステレオタイプな判断」をする傾向が高く、偏見的な見方が多かった。


「ステレオタイプ」とは、もともと根拠が薄弱な観念をパターン的かつ、判で押したように共有されている状態。
そのような観念がある範囲で広く、大勢に人に共有されていること。

「男性=性的欲求」「女性=性的対象」「女性=嫉妬深い」「学歴が高い=何でも知っている」「女性=頭が軽い」など。


一方で「権限が無さすぎる」のもダメで、正確に相手を判断しようというモチベーションに欠けるのだという。

権限が全くない場合、人間は「どうでもいい相手」に対して考えるのも面倒なので「まあ、いい人だろう」と安易に判断してしまうのだそう。


結果的に「正確な判断」が働きやすいのは「権限70%」ぐらいの時で、基本的に「自分に裁量権があるが30%くらいは他の人にも権限がある」というときに、もっとも正確に相手を見抜くことが出来るそうだ。


今の時代は「自分の権限が高い」というだけで「自分は正しい」と思い込んで、間違えたことをしていても認めない人も多いから困ったものだよね。



目次

はじめに


第1章   心理学とは何か

 01 目に見えなくともそこには「ある」?

 02 目に見えないものはそこには「ない」!

 03 「今日から使える」知識の生かし方

 04 心理学を正しく理解する整理法はこれだ!

 05 研究手法によって心理学を勉強する

 Column ドイツ人と米国人どちらがより残虐か?


第2章   「現象」から見える心理学

 OUTLINE 日常的な現象から人間のもつ本質を推測する心理学

 01 自分を好きになる方法は?

 02 集団が大きくなると人の行動はどう変化するのか?

 03 美男美女であることは本当に得か?

 04 「見るな」といわれるとどうしても見たくなるのはなぜ?

 05 なぜ記憶はときどきウソをつくのか?

 06 人の潜在能力を最大限に引き出すには?

 07 第一印象を効果的にするテクニックとは?

 08 小さな悪を放置しておくと人の心はどう変わるのか?

 09 共感してもらうと人は「お返し」をしたくなる

 10 学級崩壊に教師はどう立ち向かうべきか?

 Column トイレの所要時間はどんな要因で変化する?
 

第3章   「実験」で測る心理学

 OUTLINE 仮説→検証を重視する「科学」としての心理学

 01 人をやる気にさせるにはどうすればよいのか?

 02 人はどうやってマインド・コントロールされるのか?

 03 人がやる気をなくすのはどういう状況か?

 04 やる気を最大限に引き出すアメの与え方とは?

 05 記憶の達人はどうやって覚えているのか?

 06 偽りの記憶はどうやってつくり出されるのか?

 07 うわさ話はどう生まれどう広がっていくのか?

 08 自分の意見を通しやすいシチュエーションとは?

 Column モチベーションには「外発-内発」軸しかないのか?
 

第4章   「観察」で見抜く心理学

 OUTLINE 人を長期間観察し言語や行動を一般化する心理学

 01 「ひらめき」はどうやって起きるのか?

 02 「そういえば…」はどう頭をよぎるのか

 03 偽りの記憶が生まれるのはどういうときか?

 04 セクハラをしやすいのはどんなタイプ?

 05 高学歴の人は仕事ができる? できない?

 06 「一を聞いて十を知る人」の思考パターンとは?

 07 親と子はどうやって「親子」になるのか?

 08 子どもの社交性はどのように形成されるのか?

 09 「友情」はどうやってつくられるのか?

 10 本当の恋愛はいつからできるのか?

 Column 自分自身のことはどうやって知るのか?
   

第5章   「理論」を整理する心理学

 OUTLINE タイプの分類をするために現象をモデル化する心理学

 01 どれくらいの難易度なら人は意欲を感じるのか?

 02 頑張ってもうまくいかない原因はどこにあるのか?

 03 人の「意欲」を高める二つの公式とは?

 04 知能の高低をどのように表現するのか?

 05 心の知能は測定可能なのか?

 06 「性格」を科学的に分析すると何が見えてくるのか?

 07 ストレスとの上手な付き合い方は?

 08 情報は、どのようにして記憶に変わるのか?

 09 効果的に情報を覚えるにはどんな工夫が必要か?

 10 すぐ忘れる記憶といつまでも残る記憶の違いは何か?

 Column 効率的な学習方法とはどういうもの?  


第6章   「技法」を提示する心理学

 OUTLINE 理論を応用し臨床で役立てるための心理学

 01 「問題行動」を抑えるにはどうすればいいのか?

 02 うつを招きやすい特有の考え方とは?

 03 気にするから具合が悪くなる…この悪循環から抜け出すには?

 04 自己中心的な考え方から脱却するには?

 05 心を見つめ直す究極の方法は?

 06 メンタルヘルスを保つ自己暗示のひけつとは?

 07 カウンセラーに求められるクライアントとの関係は?

 08 内面へのアプローチがスムーズになる方法とは?

 09 家族全体がカウンセリングの対象となることもある?

 Column あなたは客観的発想ができますか?

参考文献

さくいん




「平均的な意見」も「一番、頭の良い人の意見」と同じくらい優れている

2020-09-01 | 読んだ本
「みんなの意見」は案外正しい  ジェームズ・スロウィッキー作 小高尚子訳


舞台は食肉用家畜見本市で行われる、雄牛の重さを当てるコンテスト。

雄牛の重さに見当をつけたら、重量の推定値を記入してコンテストにエントリーすると「一番、正解に近い人が賞品をもらえる」というもの。

この運試しに参加したのは800人で畜産農家の人や、食肉店の人間も多いが家畜についてほとんど知らない人も多かった。

この場に居合わせたイギリス人科学者のゴールドンは、この背景も経験も全く違う人々がそれぞれ一票を投じるさまは民主主義における「選挙」の手法とそっくりだ、と思い、かねてから気になっていた「平均的な有権者」に「社会にとって適切な判断ができるかどうか」を確認してみたいと思った。

というか、統計データと遺伝に関する研究、優生学で名を知らしめたゴールドンは「選ばれたごく少数の人間だけが社会を健全に保つのに必要な特性を持ち合わせている」と信じていたから、おそらく「平均的な有権者」には何もできないであろう、という自説を証明したかったのだ。

コンテストが終了した後コンテストの主催者に掛け合い、投票に使われたチケットを借り受けて統計的な検証を行った。

チケットに記された数値を「最大」から「最小」に順に並べて正規分布になるかを調べ、次には書かれた数値をすべて足し上げて「参加者全体の平均値」を算出した。

非常に優秀な人が少し、凡庸な人がもう少し、そこに多数の愚民の判断が混ざってしまえば、全く的外れな数値が出るだろうとゴールドンは予想した。

参加者の予測平均値が「1197ポンド」に対して実際の重さは「1198ポンド」で、結果はゴールドンの予想に反し、両者の間にあまり差が無かったのである。

この後、ゴールドンは「当初の予測よりも民主的な判断に信頼がおけることを示しているとも考えられないわけでもないかもしれない」と述べたそう。


たいていの場合「平均的」という言葉は「普通」「凡庸」との意味に使われることが多い。

しかし多数の人間が集まり、問題を解決したり、意思決定する場では「一番、頭の良い人の意見と同じくらい」もしかすると、それ以上「平均的な意見も優れている」ことが多いことが分かる。


「賢い集団の特徴」として4つの要件が挙げられている。

意見の多様性(それが既知の事実の突拍子のない解釈だとしても、各人が独自の私的情報を持っている)

独立性(他者の考えに左右されない)

分散性(身近な情報に特化し、それを利用できる)

集約性(個々人の判断を集約して、集団として一つの判断に集約するメカニズムの存在)


多様性には集団に「新しい視点」を加えるだけでなく、集団のメンバーの意見を言いやすくするメリットがあるし、意見の独立性にも集団が賢明な選択をするのに必要不可欠な要素でありながら、それを維持することがきわめて難しいのだという。

なぜなら人間は「自律的」であると同時に「社会的な存在」でもあるので、自分の住んでいる場所や学校・職場などの影響を受ける「社会的な存在」だと気づいていながら、人々の好みや意見に「周りの人が与える影響」を過小評価しがちで、「個人の自律性」ばかりを強調する。

集団のメンバー間で「個人的な関わり」が強くなり、お互いに影響を与えるような関係性が出来あがると、周りの人間に同調して意見を合わせてしまったり、「集団の論理」に従うように圧力をかけたりするようになると「集団としては愚かになる」可能性が高くなる。


第12章では、選挙の投票率について書かれていて面白いと思ったところをちょっと。

~~ アメリカの政界では「投票率の低さ」を嘆くのがお約束となっているが、経済学者の観点から見れば「投票なんかをする人がいる事実」こそが不可解な現象なのである。 自分が投じる一票が「選挙の結果」を変える可能性はゼロに近い。 それに、ほとんどの人にとって ーーそれが大統領であってもーー たった一人の政治家が「自分の日々の生活に及ぼす影響」は限られている。

投票をしても大勢に影響はないし、そもそも誰が当選しても大きな違いがないのなら、なぜ投票するのだろうか? 公共選択論者は「人々が投票する理由」を手を替え、品を替え、説明しようとしている。 たとえばウィリアム・ライカーは、人々は「投票を通して選挙結果に影響を与えよう」としているのではなく、「自分の政治的な信条を確認し、政治制度における(自らの)有効性を主張しようとしている」と分析する。

だが、真実はライカーの説明より、ずっとつまらないようだ。 人々が投票するのは「自分が投票すべきだと考えている」からだ。 ライカー自身が集めた1950年代以降の選挙に関するデータは、投票するか・否かは「その人が感じている義務感にかかっている」ことを示している。

ともあれ、仮に有権者の投票が「自己表現の一種」だとすると「自分の利益になるような投票結果」を求めて投票するより、「自分の政治スタンスを公にするために」投票した方が、社会全体にとって「メリットになる結果」に結びつく可能性は高いと言えよう。 人々が「自己利益以外の理由」から行動するにしても、彼らが「実際に投じた票が自己利益を反映していない」とは言えないことは確かだ。 だが、ここにも自己利益理論の限界はある。

そもそも「自己利益」と「投票行動」の間に、「明確な相関関係」は見出されていないのだ。~~



「投票率が低い」のを嘆くのがお約束なのは、日本も同じだけどね。

確かに、投票に行っても「票を入れた人が必ず当選する」とは限らないし、誰が当選してもそんなに変わらないような印象はあるけど。

だから、選挙に行くときは「自分の一票が世の中を変える」というよりは、政治に対して「自身の考え方を発信している」と考えた方が「投票に行く意味」もあるのかな。



目次

はじめに

第1部  

第1章  集団の知恵

第2章  違いから生まれる違い ―― 8の字ダンス ピッグス湾事件 多様性

第3章  ひと真似は近道 ―― 模倣 情報の流れ 独立性

第4章  バラバラのカケラを一つに集める ―― CIA リナックス 分散性

第5章  シャル・ウィ・ダンス? ―― 複雑な世の中でコーディネーションをする

第6章  社会は確かに存在している ―― 税金 チップ テレビ 信頼

第7章  渋滞 ―― 調整が失敗したとき

第8章  科学 ―― 協力 競争 名声

第9章  委員会 陪審 チーム ―― コロンビア号の惨事と小さなチームの動かし方

第10章  企業 ―― 新しいボスって、どうよ? 

第11章  市場 ―― 美人投票 ボウリング場 株価

第12章  民主主義 ―― 公益という夢


訳者あとがき

解説  山形浩生




飛行機は、なぜ飛ぶのか?

2016-03-09 | 読んだ本
99.9%は仮説  思いこみで判断しないための考え方   竹内薫


実は「飛行機が飛ぶ仕組み」は、まだ完全には解明されていないそうです。

驚きますよね。 

「じゃあ、どうして飛んでいるのか?」

一応「子供にもわかりやすい解説」がされているそうですが…。


この本は2006年2月20日に初版出版されていますが、2016年現在でも、そういったニュースは聞きません。

現在、「飛行機が飛ぶ原理」として、挙げられているものは、


1.「わかりやすい説明」として流布されている飛行原理は完全なウソであること。

2.「渦理論」を使った専門家による飛行原理の説明にも微妙な問題が残ること


今現在で、されている説明は、「おそらくそうだろう」という仮説と、試行錯誤の「経験則」による推測で、実際、「なぜ飛行機が空を飛ぶのか」は完全には解明されていないのだそうです。

原理が分からなくても「飛行機は空を飛んでいるんだから、それでOK!」って、飛行機嫌いの人が聞いたら、ますます飛行機に乗れませんね~。


第5章の「『大仮説』はありえる世界」は、なんだか映画の「マトリックス」のよう。

それぞれに自分の生活を送っている、と思っているのが本当はすべて夢の中…。


などなど、科学には、まだまだ謎が多いのです。

前回の「超常現象」しかり、科学の世界は面白いですね。



目次


プロローグ  飛行機はなぜ飛ぶのか? 実はよくわかっていない

驚くべきことに、飛行機が飛ぶしくみは、まだ完全には解明されていません。 いまある説明は、ひとつの仮説にすぎないのです。  これは、飛行機だけに限りません。 だれもが科学的に100%解明されていると思っていることも、つきつめて考えると、すべては仮説なのです。 科学はぜんぶ仮説にすぎないのです ――。


第1章  世界は仮説でできている

科学だけではなく、わたしたちをとりまく世界も、実は仮説に満ちあふれています。 親から教わることも、教科書に載っていることも、だれもがあたりまえだと思っている常識や習慣や定説も、ぜんぶがぜんぶ、ただの仮説にすぎないのです。 そして、仮説であるからこそ、くつがえすことも可能なのです ――。

(あたまが柔らかくなる仮説①) 「麻酔はよく効く仮説」


第2章  自分の頭のなかの仮説に気づく

頭の柔らかい人は、常識がただの仮説にすぎないことを知っています。 逆に、頭の固い人は、先入観や固定観念にしばられて、思いこみでものをいいます。 では、天才ではないわたしたちは、どうやって自分の頭にこびりついた仮説をはがしていけばよいのでしょうか ――。

(あたまが柔らかくなる仮説②) 「日本の海岸線は二四〇〇キロメートル仮説」


第3章  仮説は一八〇度くつがえる

ひとくちに仮説といっても、みんなが正しいと信じているものから、ほとんどの人がまちがいだと決めつけているものまで、実にさまざまな種類があります。 仮説には、白から黒までの幅広いグラデーションがあるのです。 この章では、そういった仮説の信じがたい大逆転劇をみていきましょう ――。

(あたまが柔らかくなる仮説③) 「意識は続いている仮説」


第4章  仮説と真理は切ない関係

頭の固い人は、自分に都合のいいように、事実をねじ曲げて解釈します。 また、自分の思い込みを最優先し、それに反する考え方や都合の悪いデータを無視します。 こういう人たちには、科学の定義を教えてあげるといいでしょう。 科学は、いつでもまちがいを潔く認めるものなのです ――。

(あたまが柔らかくなる仮説④) 「マイナスイオンはからだにいい仮説」


第5章  「大仮説」はありえる世界

もしかしたら、この宇宙は、どこかの実験室で創られたものなのかもしれない……。 こういった突飛な考え方を、頭ごなしに否定してはいけません。 科学では、どんな発想もアリなのです。 前例がないから、常識からはずれているからといって否定するのは、まったく科学的な態度ではないのです ――。

(あたまが柔らかくなる仮説⑤) 「世界誕生数秒前仮説」


第6章  仮説をはずして考える

世の中を科学的にみるためにはどうすればいいのか? この章では、余分な常識にしばられないための思考法を学びます。 コツは、ものごとを疑う技術を毎日の生活のなかで磨くことです。 暗黙の了解ほど、疑うべきなのです ――。

(あたまが柔らかくなる仮説⑥) 「百人一首カルタ仮説」


第7章  相対的にものごとをみる

「なんでこんな簡単な話が通じないんだ!」などとイライラしたときは、相手がどんな仮説の世界に生きているのか想像してみてください。 頭が固いから、バカだから話が通じないのではなく、ただ単に、自分とは異なる仮説を信じているだけだということがわかるでしょう ――。

(あたまが柔らかくなる仮説⑦) 「殺人はこの座標で起きた仮説」


エピローグ  すべては仮説にはじまり、仮説におわる

「あたまが柔らかくなる仮説」の答え

もっと知りたい人のための参考文献

本当のエピローグ