「庭園日本一」との看板を掲げた、島根県は安来の里中にある、足立美術館の庭を見に行ってきました。
たしかに立派な石組みでした。 ツツジがきちんと丁寧に刈り込まれていました。 赤松も黒松も、よく行き届いた手入れをされていました。
向こうに見える山々が素晴らしい借景となり、見渡すかぎり、非の打ちようが無い完成度だったと思います。
ですが、あまりにも隙の無い出来栄えには、圧倒されてしまう側面もあるんだなと感じました。
「日本一」というのも、アメリカの日本庭園専門誌が行っているランキングに基くものなので、日本人が好む侘び寂びには欠けていたような気がします。
また、恐れ多くも言わせてもらえば、奥に群生させるのは、そんな立派な枝ぶりの松である必要があったのだろうか、芝の稜線を邪魔するような植栽には意味があるのか、はたまた、数多くあっちこっちに配した蹲(つくばい)は逆効果ではないのか、作庭家に聞いてみたい疑問も浮かびました。
それでも、やっぱり立派なお庭でした。 来館者に精一杯楽しんでもらおうという気持ちが伝わります。
常駐の庭師さんがいて、一年を通して管理されているのに加えて、職員の方々も総出で清掃を行っているそうです。
わずかであっても、日々の手入れによって生まれる端正さには感動を覚えます。
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庭も然ることながら、館内の展示品も見応えがあって、一枚一枚の画にいちいち惹きつけられてしまいます。
その合間で、視線を窓の外に向ければ、様々な庭の景色を楽しめるわけです。
こんな相乗効果は初めての経験でした。
収蔵品の大半は横山大観をはじめとする日本画ですが、陶芸館と称された隣接室には、河井寛次郎と北大路魯山人の陶器が展示してあります。
河井寛次郎は、略解ですが、「木の中に、鉄の中に、土の中に、さらには自分自身の中に、本当の自分を見付けること」を提言しており、
北大路魯山人は、「日々の仕事の中で遊びなさい」と説いていました。 はっとさせられる言葉です。
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ついでに、ここから下は、同ランキングにおいて8位に選出されたことのある、康國寺の庭園です。
足立美術館と同様に、恵まれた山の背景と、さらには貯水池を借景に取り込んでいて、庭自体は小さいながらも広がりを感じさせています。
嬉しかったのは、軒に下足が用意されていて、飛石を渡って歩けたことです。 庭は、眺めるだけじゃ物足りないですよね。
雪の舞う中でしたが、ご住職があたたかく迎え入れてくれて、静寂のひとときを楽しませてもらいました。
こちらにしても、いろいろと思うことはありましたが、慎ましく佇む古刹には、それ相応の佇まいがあるのでしょう。
様々な庭を見て、あーでもないこーでもないと考えることで、今後のお仕事に活かすことができればと思っています。