最近若い子が来てくれたこともあって、いろいろと話をしたり、考え直したりすることが増えてきました。
成功も失敗もある中で、考え方の一つとして書き留めて置こうと思います。
私は絵を書いて作る人なので、絵を書いたころにはもう頭の中で2.3回作っています。
完成のイメージをする為に頭の中でシュミレートするので、取り掛かるときにはセミオートマチックに体が動きます。
スノーボードや、サーフィンをするのに頭で考えながらやっていないのと同じで、目に見えている事に合わせる行為は頭で考えてからではなく、あらかた想定の上で動いている感覚と同じです。
特にサーフィンは大工と同じでいつも初めての波(仕事)で、経験と想定と身体がその事に対応するのに必要な能力なのと同じ感覚です。
完成というイメージを明確に持つことで、その時どのように見えたら美しいか、どのような問題がその時や未来に起きるかが想像出来るので、後はその完成イメージを解体して、再構築するとそこでの最短ルートが決まる。そんな感じ。分かります?(笑)
作り始めても、身体は現在ですが、頭は3~4手先を想像しています。
頭では処理済みなので、身体はセミオートマです。考えながら動くのは今のことを考えてるわけじゃなく、先のことです。
じゃないと身体は動かない。だから早い大工ほど先が見えているんですね。
先が見えないと、手伝いに指示できないし、職方との打ち合わせも的確に話が出来ないんですね。
急な変更や「やっぱりこっちの方がいいでしょ?」と思うことも先を見ていれば舵取りも簡単なんです。
方向転換が現在ではないので。
手前しか見えてない人ほど、変更を嫌うんですね。
現在なので。
頑固でいることが職人と思われがちな一面もありますが、頑固でいることはそこじゃない。
かたくなに居ることは、お客さんの為に動くこと。
自分の能力のなさを固めちゃダメなんです。伸びませんから。
実際、職人は今を生きて居ます。
出来上がった家に住むのはその先の未来です。
職人の今、頑固でいることなんて、ちょっと先の未来では忘れています。
お客さんがもし不満でため息をついているかもしれないとき、僕たちはもう次の仕事に居ます。
だからお客さんの未来、3手先4手先を考えて居ないと、本当のプロでは無いし、プロだと胸を張るべきではないと思います。
いつでも柔軟に、未来でお客さんがため息をつかないように「あの人に頼んだ私の判断は間違いなかったんだ」そう信じてもらえるような未来を考えて、今身体を動かすんです。
それが職人。
そのために頑固で居るのが私の理想です。
そんな大工が溢れてくれたら、死ぬ寸前に「大工として生きてて良かった」と思うかな。
能力が無いのに、今でも誰かの家を作っている、そんな切ない事実を知っていながら、何もできない自分が居て。
少しでも選ぶ人の判断に、作る人の意識の変化になったとしたらいいなと思って、書いてみたのでした。
家を作る皆さんが「良かった」と思える家が溢れたら嬉しいです。