世界に類を見ないソマリアの内戦。
氏族間の内戦を早々に終わらせたのが、北部のソマリランド。
資源がない中央は、
漁師が多かったため海賊天国になり、プントランドと名乗った。
そして資源も土地も肥沃な南部は奪い合いとなり、
超デンジャラスな南部ソマリアに。
この三国に分断される前から、
ソマリアには従わなければならない闇があった。
その闇を世界に発信し告発したのが、
ソマリア出身の超スーパーモデル<ワリス・ディリー>だった。
モデルとして世界トップクラスにいたワリスが書いた「砂漠の女ディリー」。
ワリスの魂と人生を賭けた衝撃的な告白、、
そして
本の出版から10年後、この実話は映画になる。
◇映画「デザートフラワー」◇
この映画を観るまで、ソマリアの事はどこか遠くに置き去りにしていた。
氏族の力関係と欲が絡んだエンドレスの内乱。
圧倒的な武力で臨んだアメリカですら凄まじい反撃に撤退してしまう。
そこは
平和で安全な暮らしなどなく、
武力と力を誇示する男社会で成り立っている、、南部ソマリア。
男社会の仕組みにとって、女・子供・年寄りの命はモノ同然だともいえる。
主人公のワリスは、
首都モガディショから砂漠を抜けた荒野で暮らす遊牧民として生まれる。
旧ソマリアでは当たり前に行われていた儀式「割礼」。
幼い子供の陰部を切り取り、
医師の資格もない、そこらの婆さまが麻酔なしで行い縫合する。
凄まじい痛みと出血で、そのまま息絶える子供もいる。
切り取られた部分は、当たり前のように鳥がついばむ。
そして
縫合された部分は、結婚する相手が糸を開くまで閉じたまま。
不衛生で、病気で亡くなることも。
少女たちの結婚相手は、物品とラクダで結婚する少女を親から買う。
少女たちは、見ず知らずの相手と結婚し何番目かの妻になり、
そのまま意思も尊厳もない世界で、一生過ごすという。
もし少女が割礼をしてない場合は、もっと悲惨な現実に直面する。
少女は結婚出来ず、一生娼婦と同じ扱いを受け続ける。
13歳のワリスは婚礼前夜に砂漠に渡り切り、
祖母のいる遠い首都モガディショに逃げ込む。
強運だったのは、祖母が親元へ送り返されなかったこと。
そして
祖母のツテでイギリスのソマリア大使館のメイドとしてイギリスに。
その6年後
ソマリアの内乱が始り大使館は閉鎖、ワリスはホームレス同然の生活を送る。
が
ワリスの美貌は更なる強運を呼びこみ、
瞬く間にトップモデルへと駆け上がっていく。
その一方で、
ワリスの妹たちは、一人は割礼による出血多量で死亡。
もう一人はお産の時、割礼の後遺症で亡くなる。
ワリス自身も割礼の後遺症で苦しみ、精神的に男性と向き合えない状態だった。
それはトップモデルになり、人並以上の暮らしになっても同じだった。
彼女は
全世界に自分の過酷な体験と
今も尊厳のない世界で暮らす女性たちのために動き出した。
雑誌にカミングアウトし、一冊の本を書く。
彼女は国連で特別大使に就き、
ソマリアの女性たちのために<割礼廃止>を訴え続けた。
その活動の成果はめざましく、
30か国で行われている「割礼」は、徐々になくなりつつある。
女性の「割礼」は主にアフリカに集中。
植民地支配の激しかった時代、純潔を守るための手段だったともいわれている。
が、、
ソマリアの男尊女卑の激しさはとんでもなく、
女性にはノーと言う術もチャンスもなかった。
ワリスのように、
命からがら砂漠を越え生き延びれたのは奇跡と云える。
映画は、現在と少女時代の回想が交互に出てくる。
重いテーマだが、
ワリスが上り詰めていく姿を応援し続ける友人たち。
強欲なアパートの家主がワリスの多額の保釈金払ったり、
尻軽なアルバイト店員だが、ワリスを妹のように思う気持ちだったり。
人から愛を受け、ワリスは立ち向かう勇気と覚悟をした。
ワリス・ディリーの行動は、何百万人の女性を救った。
が
祖国ソマリアでは、未だ報われていない現実もある。
余談だが、
南部ソマリアは今もって内乱の真っ最中。
色んな氏族が政権を握ったが、こんなに真っ当な時代もあった。
*1969~1991年
シアド・バーレ政権の時には
男女平等
氏族中心主義を廃止。
ソマリ語表記をアラビア文字からローマ字に変え、識字率を飛躍的に上げた。
アラブ同盟に加盟。
イスラムの過激思想を抑える。
道路・学校・病院・工場を多く作った。
*参考文献:高野秀行「謎の独立国家ソマリランド」より*
実は20年間のバーレ政権の時にだけ、男女平等があった。
現在はかなり酷い、、、、
幼い男の子は兵士として、女の子は兵士の結婚相手として差し出す。
そうしなければ、親たちはその場で殺されれてしまうからだ。
そんな行き場のない負の連鎖が、南部ソマリアで今も続いている。
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全文読まさせてもらいました、ソマリアが酷い場所だとは知っていましたが、純潔を守るためにと性器を縫い合わせる行為に絶句しました、
行き過ぎた過激な思想が力のない者である子供や女性や老人を物のように扱い尊厳を踏みにじるのですね、
動物の殺処分もそうですし、国も部族も人間一人一人の集合体ですから、世界が関心を持って世の中を良い方向に変えて行きたいですね。