曹達記

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2021年8月ポケスペ剣盾編感想

2021-09-19 23:09:00 | ポケスペ
前回の記事で、8月掲載回はかなり重要だと書いたのだが、図鑑所有者周りだけでなく色々な情報が一気に開示されているのがその理由だ。

まずはキルクスジム戦。といってもダイジェスト形式で終わってしまい、その点については前回指摘したので置いておく。
それ以外で指摘しておきたいのが、割と前から布石を置いていた「マクワとメロンの和解」という話は全く触れられていないこと。
原因はおそらく休載だろう。というのも、前回の話から今回に至るまでの繋ぎがやや不自然なのだ。
前回のラストはビートで〆ており、普通に考えればビートの場面から続くというのが自然である。
なのに、今回はいきなりジム戦から始まるという構成になっており、あまりスムーズな繋がりとは言えない。またマクワが風邪でダウンしたにも関わらずすぐに復帰している点も不合理だ。
これは完全な推測だが、日下先生が体調不良になった時点で7月掲載回(本来6月掲載予定)の大半は出来上がっており、8月掲載回は本来予定されていた回を二つ合わせて作ったのではないだろうか?
確証は持てないが、そのために今回は台詞の量が非常に多く感じるのである。

ジム戦後に行われるマリィとホップの会話。ここが今回の話で最初の重要なポイントと言える。

多くの読者が連載当初疑問に思った、ホップがダンデの推薦を受けていないこと。
その理由がまず語られるのだが、ホップ自身がダンデの名前に泥を塗ることを嫌がったのが原因だった。
自分がいくらバカにされようと気にはしないあたり、気質がよく出ている。
ただこの理由からしたら、敗退したしーちゃんに蟠りを抱いてもおかしくないと思うのだが。

マリィとホップは「リーグ関係者が兄である」という点で類似しているのだが、ゲームではほぼ絡みがない。
というか、マリィ自体エール団以外で主人公と絡む点がないため、他のレギュラーキャラとストーリーでは絡まないのである。
このせいで、ポケスペに於いては今一つの存在感となってしまった。ゲームと同じ立ち回りをしているだけと言えばその通りなのだが、逆にそのせいで対立も協調もすることなく話が進んでしまった。
以前から説明しているが、ビートはそーちゃんと対立軸を仕込んでいて、作中でも存在感を見せている。
折角味方レギュラーキャラが三人いるのだから、それぞれがライバルと対立軸を持てば良かったのだが…。

ホップの口から語られるソニアとダンデの過去。
幼いときから強かったのはソニアの方で、その信念を受け継いだのがダンデだったというのはちょっと意外。
ただ、「博士の孫」というポジションが初代のライバルを受け継いでいることからしたら、ダンデより強かったのはおかしくないのかもしれない。
そしてポプラに敗北したことであっさり諦めてしまった。これはアラベスクジムで読めるポプラのソニアへの評価から来ているのだろう。
ソニアが去ったことで、ダンデは後ろ向きなところを見せなくなった。それも手伝ってホップは余計な負担をかけたくないと思うようになり、推薦を断ったと語っている。
以前マナブの考察記事でも書いた通り(ポケスペ剣盾編におけるマナブの立ち位置について - 曹達記)、ホップが推薦を受けていないのはポケスペの作劇上の都合が大きい。そこをどう味付けするのかが剣盾編の肝になると思っていた。
今回の話でソニアとダンデの過去に絡めた動機付けがされたことで、方向性が定まってきたと感じられる。

ソニアとダンデの過去が明らかに屈折したものであることは、ダンデ登場時に示唆されていた。
そこにジムチャレンジでの出来事が大きく絡んでいたのも明白に示されていて、序盤の話で丁寧に布石が置かれていたと思える。
しかし、しーちゃんが同じようにアラベスクジムで敗退したことはどう考えればいいのだろうか。
対比の構造は明確だし、作中の意味付けとしては割と分かりやすい。
ただ、ソニアの場合は「エリートとして走ってきた人生の挫折」だったのに対し、しーちゃんの場合は「手持ち探しの途中で負けたけど、そーちゃんが引き継ぐから問題ない」と、位置付けの落差が激しすぎる。
それに敗北回で書いた通り(2021年2~4月ポケスペ剣盾編感想 - 曹達記)、負けたことに対して全く深刻に受け止めてないし、その反応もあっさり流され過ぎだったのである。
大体、そんな過去があるならソニアもしーちゃんと再会したときに言及するのが自然に思えてならない。言及しないならしないなりに溜めを作っておくとか、工夫はあるように思えるのだ。
まあ、そんな尺はないだけなんだろうが…。


場面は変わり、アラベスクジムでのビートの訓練。短いながら次の重要点はここ。
ポケモンの性質から、ビートの本心を見抜くのは流石。
ひねくれているようで根は真面目、表面上の激情にもかかわらず本心は穏やかであるという部分は、以前そーちゃんも「邪な感情はない」と評していた面と合致する。
またポプラはローズの性質をよく知っているようだ。勿論ローズより年上だし、彼が委員長になる前からジムリーダーをやってたわけだから、おかしくない。
ここでポプラはローズの行動に違和感を覚え、ジムリーダー同士の連携で探ろうとする。これはポケスペだから描ける展開と言える。
ローズの行動はおそらくゲームと同様と思われるが、彼がどのような思考をしているのかはプレイヤーには理解が難しい。
その部分をうまく補完できれば、あくまでポケスペ内ではあるがキャラとしての一貫性が出てくるように思える。


バリコオル…改め、ステッキンとそーちゃんの交流が後半の多くを占めている。
手持ちになってからの交流をいれてきたのはちょっと意外に思えた。
というのも、ステッキンについては手持ちになる前に十分なドラマが描かれていたし、尺がない近年では手持ちになる前のエピソードでおしまい、というケースが多いからだ。

その合間にしーちゃんが伝説関係のものに初めて触れたことで、物語の黒幕としてソッドとシルディが出てくることが示唆された。
ポプラの言動からするにローズにも関わっていそうだが、果たしてどうなのか。ガラルを支配する巨悪となるのだろうか。
ただ、デザイン的に悪役としての箔があるかどうか…。そもそも、剣盾の原作キャラに巨悪としての箔がある人はあまりいないと個人的には思うので、どう料理するのか怖くもあり、楽しみでもあり…。

それに、一つ謎もある。ポケモンの誘拐が武装解除目的なら、なぜしーちゃんだけだったのだろうか。
現在出ている情報だけでは動機や手法の解明には至らないので、次回でどの程度明かされるのかに着目していきたい。


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