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馬花 115 お見合い 給年1組

2024-11-12 00:44:00 | HAMIRU

 



ハミルカンパニー




「チャリル、ちょっといいか」



「はい、ミナア課長」

「なんか、社長がお呼びだそうだ」

「私ですか」

「そうだ、社長室に行ってくれ」

「・・・はい、分かりました」


チャリルは7階の営業部から社長室のある9階へ階段で上がった



失礼します



「チャリルくん」

「ルミヤ社長、お呼びでしょうか」

「うん、掛けたまえ」

「はい、失礼します」

「そっちじゃなくて」

「いや、そちらは社長椅子ではないですか」

「うん、いいから」

「いや、できません」

「練習だよ」

「練習?」

「座りなさい」

 

係長チャリルは指示に従いボルドー色の社長椅子に腰掛けた


「どうだい」

「宙に浮いているようです」


地に足がつかないというか、

座ってるのに空気椅子のような、引力を失ったような、

今ならニュートンの法則さえ否定できそうだった


「チャリルくん」

「はい」

「当社がお見合い事業部を新設するのは認識しているね」

「ええ、もちろん」


先日、社長ルミヤ自ら全社員向けに説明会を催した


「チャリルくんに担当をしてもらいたいのです」

「私ですか」

「そう、当面は1人で」

「いえ、社長。新設事業部の立上げを任せていただけるのは光栄なのですが」

「うん、問題あるかね」

「私がハミルENの住人なのはご存知でしょうか」

「うん、知ってるよ」

「私たちは結婚を、婚姻制度を否定的に捉えています」

「うん、知ってるよ」

「その私がお見合いを推進することは、大変遺憾ですができません」

「駄目です。だからこそです。チャリルくんがハミルENの住人で結婚を否定している立場だからこそ、お見合い事業部を担ってもらうのです」

「しかし」

「仕事です。信念を曲げる必要はない。割り切ってやってごらんなさい」

「・・・具体的にはどのような」

「説明会の時に話しましたが、お見合いの家族の役割を会社が担うのです。仲人です。つまり、我が社の社員と得意先の社員の、うーん、恋のキューピットですね」

「私には向いていないと思います」

「結婚を否定する君だからこそできることがあるはずです。それに」

「はい」

「淡白な考え方の人間の方がいいんです。親身にならなくていいんです。事務的に感情など入れずに。アドバイスなんかしなくていい。ただ、お見合い事業部を利用したい人間同士を引き合わせればいいだけです」


お見合いに会社が介入する

昭和初期には成婚の7割がお見合いだったという

従来の家族の役割を会社が担う


「まずは、当社のお見合い事業部に記名しても構わない独身社員を集めてください。並行して得意先にもお見合い事業部の設立を持ちかけてください」

「本当に私が・」

「はい、想像してごらんなさい。この国の様々な会社でお見合い事業部が設立される。業種の垣根を超えて今まで全く縁のない企業ともお見合いを通じて関連ができる。経済面でも今まで考えもつかなかったような発想が起こるかもしれない・・・戦略結婚も面白いですね。あの企業を狙ってうちの社員をお見合い相手としてENコートする」

「そんなことこのコンプライアンスの時代に・・」

「何が幸せに繋がるかなんてわかりません。強要されて嫌な想いしながら行動したことが、後に大きな恩恵をもたらしたことはありませんか」

「あるかもしれません」

「強要するわけではありません。利用するかもしれませんが。それも全て本人の承諾の上です。利用されても構わない。あれですね、対象の人間には必ず全て正直に話してください。会社にメリットがあるからあの会社の社員をENコートする、とか。その上で。幸せなんてどう転ぶか、誰にも、わからないんですよ」

「社長、あの、ENコートってなんですか」

「君はハミルENでしょう」


ENGAGEMENT

 

「それから、これは参議院議員のクニタさんと連動していますので。増税政策議員です。いつか紹介します」

「はい」


・・・・ 


優凛党のクニタの演説が始まろうとしている



「皆さん、優凛党のクニタです。

よくお集まりくださいました。

ありがとうございます!

宜しくお願いします」


月曜日の15:00頃に

船橋駅前の路上では、足早に人々が交差して

クニタの演説を聞こうと耳を傾けようとしているのは

15人前後といったところであった


少数政党優凛党所属の国会議員クニタは前回参議院選挙比例代表で初当選を果たした

39歳エネルギーと野心に満ちた若手だった

日本を良くしたい、

野心とは言えども、己の改革を断行するにはそれ相応の立場の人間となっていなければならない

優凛党を野党第一党へ

そして

政権交代、与党、要職の大臣職に就いて、幹事長へ


そして 


・・・・


翼望をはためかせて街頭演説のマイクを轟かせた


「消費税を1%上げます!

私にお任せください。必ず皆さんの暮らしを豊かにしてみせます」


聴衆のしらけ顔と対峙する


「現在消費税10%の税収は年間約24兆円です。皆さん。

消費税を1%増税するとですね。毎年2.4兆円の財源が確保できるのです。これをですね。

少子高齢化対策に全額ぶっ込みます!


宜しいですか。

1970年には65歳以上の人口に対して、15~64歳の世代の人口は10倍だったんですね。つまり、10人で1人の高齢者を支えていた、と。

2020年には、その割合は2対1になりました。

現在の日本は、働く世代2人で65歳以上1人を支えている状況です。

さらに深刻化していきます。

この人口構成は労働、社会保障、介護、皆さんの負担が増える一方です。全世代においてです。

国は弱体化していき、威信を失った国は諸外国との外交面でも対等性を失い、私たちの、日本の未来は光を失うばかりです。


1%の増税


現在日本においては年間約50万組がご結婚されて夫婦となります。

1%の増税によって得た2.4兆円をご祝儀とします。

2.4兆円を50万組に配分すれば、1組あたり480万円です。


つまり皆さんの1%の増税は新婚の夫婦の手に渡ります。

ご自身の手に戻ってくる可能性もあるということです。

ご祝儀です。


真髄は

国民全員で新婚夫婦を祝う

国民全員でご祝儀を渡す


その1%の増税です!


ご祝儀欲しさに結婚を繰り返されるのは問題がありますので1人1回ですね。金銭の受け渡しは夫婦ではなく個人各々に240万です。

ご祝儀なので籍を入れた時点です。

即離婚は返金です。

石の上にも3年。


この施策が成功すれば、婚姻件数は増加し配分は減ります。

年間100万組が婚姻すれば、1組で240万円、個人で120万です。それでいいのです。

婚姻が増加し家族形態の増加は好況に繋がる筈です。消費は増加し、企業は潤い、経済は令和のバルーン景気を・・

その頃には


"皆さんの給料が上がっている"


・・・・


いろいろ試算しましたが、国からの、いや国民同士によるご祝儀は満額支払われない場合があります


手数料

いや仲人料です


ある企業と連動してこの方策を私は話しています」

 

・・・・


月20万の消費をすれば、消費税が1%上がれば2,000円の負担増。しかし、給料が3,000円上がれば問題はない。

経済起爆の一手

 


バルーン景気を

 


笑のスパイラルを

 


増税大臣

 



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