花日和 Hana-biyori

何者

朝井リョウ 著/新潮文庫(2015年7月発行)
就職活動する大学生、男女5人の人間模様を描く。

「就活の辛さはふたつあって、拒絶される経験を繰り返すことと、自分をたいしたもののように見せなくてはならないこと」
「内定って、その人がまるごと肯定されてるって感じ」


など、おそらく著者の経験を踏まえた現在の就活事情がかなりリアルで、そこにまつわる感情の部分も恐らく本物だろう。

さらにツイッターなどのSNSが却って辛さを倍増している。お互いの真意や状況を探ろうとする様は痛々しく、検索ワード一つで、自分の中の闇もはっきり表層化してしまう。いまの若い子はホント大変だわ…と、他人事で読んでいるとあら大変、足元をすくわれ心をえぐられるラスト。ホラーかこれは!と思ったほどです。

SNSに振り回されて人間関係や生き方までねじれていく人の心を容赦なく暴き、ツイッターなどを利用する、主に若者に警鐘をならしているような。サワ先輩や瑞月の言葉によくそれが表れていた。

「短い言葉で表現しなくちゃならないなら、そこに選ばれなかった言葉のほうが圧倒的に多いわけだろ。だから、選ばれなかった言葉のほうがよっぽどその人のことを表わしているんだと思う」
「ほんの少し言葉の向こうにいる人間そのものを、想像してあげろよ、もっと」


「心の掃出し口」に共感してもらえるかもしれない、そんな場が与えられているなかで人間形成していくというのは随分な事だと思う。匿名とはいえ、けっこう無防備になんでも言ってしまう若者たちの危うさを感じる。

でも、SNSを全否定しているわけでもない。否定したところで必ずあり続けるものだから。最終的には若者たちの健気さも感じて、毒気はある程度中和されていたような気がする。
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