1969年、ノースカロライナ州の汽水湖に面した湿地で、若い男の死体が発見された。殺人の疑いをかけられたのは、湿地の小屋で幼い頃からたった一人で生きてきた女性だった。
物語は、“湿地の少女”と蔑まれながら生きてきたカイアの1952年からの成長と、事件の捜査が進む様子が交互に描かれ、1970年の結末へ向かう。事件の謎とカイアの人生が徐々に明かされ惹き込まれていく巧みな構造だ。
母や兄姉たちは、暴力を振るう飲んだくれの父親に苦しめられ、カイアを一人残して去っていく。その父もいつしか失踪。読み書きを教えてくれた少年テイトと惹かれ合うが、彼もまた大学進学を機にカイアのもとを離れてしまう。人恋しさに苦しむカイアのもとに、アメフトの人気選手でもある青年チェイスが訪れるようになる。
***
幼い少女がたった一人で生き延びる術を見つけていく様子は、健気さと危うさに満ちていて見ていてつらい。だけどそれだけに目が離せず最後まで引き込まれた。6歳のころ母に去られたカイアだが、私の息子は6歳のときまだ一人で寝ることも出来なかったと思うとたまらなかった。
最愛の子どもたちを捨てて行った母親の立場もつらいが、カイアがそれは種の保存のため生物が取る一つの手段だとのちに理解する場面もつらい。
カイアの選択は、善悪など超越した野生の世界でしか生き方を学んでこれなかった彼女の、自然を味方につけた壮大な生き残り戦術だったと思う。
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