これも多視点の群像劇というのかな。視点の変換は章ごとではないけれど、ある程度のエピソードを紡いでから別の人にどんどんバトンが渡されていく感じです。ダロウェイ夫人よりずっと読みやすい(笑)。
震災後の2011年7月から始まり何年かに渡っています。主な舞台というかハブになっているのはある大学。診療室の受付や派遣の掃除人、学生の男女、大学教員、総務の女性と、離婚した元夫。この面々の日常と思考が淡々と描写される中に、有名人の死や身近な人の急逝が織り込まれています。
震災後の話だけど震災について直接触れている部分はほぼありません。死について真正面から考えるというより、ぽつぽつとした感情によって何かを浮き彫りにしようとしている印象。
ちょうど、と言っては不謹慎だけど先日有名女優が若くして急逝されたので、ひとが死ぬことの当たり前だけど当たり前でない奇妙な不思議さ理不尽さが胸にきました。
そういう気持ち、なんだか自分はうまく言葉に表せないけれど、この小説は思ってもわざわざ口にしないしそもそも言語化もできないような人の感情の機微を描いているなあって思います。
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