小学校で読みきかせする絵本を探していて、岩崎書店の『さんねん峠』(作:李錦玉、絵:朴民宜)がとてもよかったです。たしか教科書にも載っているお話でした。
「さんねん峠でころぶでない
さんねん峠でころんだならば
三年きりしか生きられぬ」
という言い伝えがあるさんねん峠でうっかり転んでしまったおじいさん。あと三年しか生きられない!と衝撃を受けてすっかり元気をなくして病気になってしまいます。
しかし水車屋のトルトリが「さんねん峠でころべば三年生きる、2回転べば6年…」と教えたことからすっかり元気を取り戻し、さんねん峠で何度も転んで長生きしました!というお話。
言い伝えに振りまわされるおじいさんの切実さがユーモラスで、若者の機転が流れを一変させる爽快感があります。
最初は昔話にめずらしく峠の春と秋の美しさを称える描写がありました。春から始まってタンポポやすみれが、秋にはすすきやりんどうなどが描かれています。おじいさんはこの美しい風景に見とれていて日が暮れて、慌てて帰ろうとしたため転んでしまった…という流れだったので納得です。
言い伝えやトリトルが歌う歌は、声に出して読むと自然と節がつくような言い回しになっていて、とても読み聞かせに向いている楽しい絵本です。(早めに読んで7分くらい)
***
あとこれは「朝鮮のむかしばなし」ということで、作者と画家が日本生まれの韓国人のお二人というのも興味深いです。
あえて「韓国の昔話」としていないのでしょうか。このお話の時代の朝鮮は北と分かれてなんかいなかった、と当たり前なんですけどはっとさせられました。