花日和 Hana-biyori

少年事件ー暴力の深層

西山明 編「少年事件―暴力の深層」神戸の少年Aの事件をきっかけに、類似の少年凶悪犯罪を、その家族を中心に丁寧に取材したルポ。

読んでいるうちに、自分が親として何をして何をしないのが正解なのか、そもそも正解を求める姿勢自体いいことなのか、どんどん分からなくなりました。

様々なケースがありましたが、はっきりした暴力や強制はしない、一見子供を尊重しているような「ソフトな支配」が一番厄介かもしれないし、ひとが陥りやすいところかもしれないと思います。
このソフトな支配を続けていた父親は、2年も息子の家庭内暴力に苦しみ、ついに金属バットで息子を殺してしまいました。驚くことに、父親は各種相談機関や医師にアドバイスを仰ぎ、教育関係の本を読みあさっていたといいます。

そこで適切なアドバイスを受けていたにも関わらず、父親の耳には自分独自の解釈、現状を耐えて継続するような言葉しか耳に入っていなかったのが恐ろしいです。親だけが子供を救えると信じて密着を続けてしまった。

本気で殴り続けていたという息子が可哀想です。自分の親を殴るなんて、自分を傷つける行為に他ならない、辛くないわけがない。

「親の価値観が世間一般の価値観からずれることを恐れて、その子なりの幸せや価値観を認めない」「家庭は子供の安らぎの場ではなくなってきている」
「ひとを育てるということをなおざりにして、自分たちだけの幸せのようなものを守っていればそれでいいとしてきてしまった」
「子供が親の人生設計の一部になっている」など、少年の更正に携わる専門家たちから、問題点が次々に示されていますが、解決策や啓蒙は何故か届かないのです。結局、親こそ承認欲求(認めて貰いたい)が強く、大人になりきれないまま子供を育ててきた結果、子供が暴力に向かうということらしい。

親が自分なりの価値観と多様な価値観を認めて、子供も一人の人間であること認識しなくてはいけないことはわかっていても、しつけと押し付けの境界線でふらふらしてしまう。本当に、気を付けなくてはいけないのですけれど。
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