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バージニア・ウルフを初めて読んでみた。ロンドンの政治中心街で政治家の奥方として暮らすダロウェイ夫人を中心に、その周辺の人々の1日が描かれる。
登場人物の心の動きのみで構成された小説で、語り手をどんどん変えながら進行していくので度肝を抜かれた。
変わるタイミングは章ごとでも段落でもなく、なんの前触れもなくスイッチする。だから正直、読みやすくはないし難解なところも多い。しかしこういうものだと受け入れると非常に面白かった。
最初に吹いたのはダロウェイ夫人の元恋人ピーター・ウォルシュが街で見かけた若い美女にふらふらついてまわっちゃう場面。あんたインドでW不倫の末、離婚準備で一時帰国してるんじゃねえのか何しとんじゃコラ!と呆れながらツッコミを入れてしまう。つまりこういうしょうもない男ですよ、ということがめちゃめちゃ分かりやすく描写されているのだった。
ダロウェイ夫人の娘エリザベスの家庭教師の独白も、今どきの非モテがネットに書き込む自意識過剰なメンヘラ文とも似ていて、古典なんだけど古くささはなくてむしろ普遍的な感情の見本市みたいになっていた。読み継がれる古典とはそういうものだろうけれど。
最初は個々の独奏のようなイメージだけど、終盤に入るとパズルが合わさったように一つの有機物になる感じ。パーティーの場面では人々の意識がじゃんじゃか鳴り響く、オーケストラ的な盛り上がりを感じた。
町医者や権威ある精神科医の胸中などの描きかたも皮肉に満ちていて、この人の意識をこう書くかあという、作者の人間観察の鋭さにも舌を巻く思いだった。
ただ、最後まで読んだときは結局全体として何が言いたかった作品かということは掴みきれず。一読でわかった気にはなれないところがこの小説が人を魅了する要因かもしれない。
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