花日和 Hana-biyori

「ファイト・クラブ」はラブストーリーだった

引き続き『お砂糖とスパイスと爆発的な何か~不真面目な批評家によるフェミニスト批評入門』の話ですが。

【男らしさについて考えてみよう】の章で、”ロマンティックな映画としての「ファイト・クラブ」”という評論があり、映画を見ていない人は観てから読んでくださいとあったので、アマゾンの配信で2日かけて見ました。自動車会社でリコール調査員として働く不眠症の男(エドワート・ノートン)が、自由人ぽいナイスガイ(ブラット・ピット)と出会い、地下で殴り合いに興じる「ファイト・クラブ」を結成、やがて社会を騒がせるテロリスト集団になっていく…という話です。

当時大ヒットしていたこの映画、映画館に観に行ったのですが、どう感じたのかほとんど思い出せないし、どういう驚きのオチがあるのかもまったく忘れていました。なんか地下で殴りあいをしていたな、くらいの印象で。

正直、暴力シーンがえげつない映像ものは嫌いなので、そんなに好きな感じの映画ではありません。ですが、当時の(今も変わらないのかも?)若い男性の鬱屈とした心情はわかる気がしました。殴り合わなきゃ生きてる気がしないというのは、男性なら共感するところがあるのかな?

で、映画を見てからこのフェミニスト批評を読んだら、またすごく面白い!ミソジニー色が強いとか、色々な解釈があるらしいですが、著者の解説が一番ぴったりしっくりきました。男臭い映画の印象でしたが、著者によれば、これは”とてもロマンティックな映画”とのこと。若干ネタバレになりますが引用すると、

全体として、この作品は女への愛と向き合うのを避けて男の世界に逃避し、男らしく美しいものと思って暴力に身を浸した男が、とんでもない破局を招いてしまい、結局は女との愛を選んだ方がよかったことに気づくという、とても皮肉なラブストーリーだと思います。(p99)

言われてみれば、ものすごく納得でした。ぜひこの前後の文も読んでいただきたい。私なんて話を把握するので精一杯で、こんなに深くて的確な捉え方はできないわ…と、感心してしまいました。ホモソーシャル万歳映画かなあと思ってしまっていた。最後まで見れば、ちゃんと答えが出ていました。
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