半次郎の“だんごんがん”

要するに、居酒屋での会話ですね。
ただし、半次郎風のフレーバーがかかっています。
≪安心ブログ≫

『ノストラダムスの弟子』

2012年07月27日 12時49分03秒 | ★ やや半次郎の世界 ★

こんにちは、やや半次郎です。

早速、やや半次郎の世界をお楽しみ下さい。

………………

『ノストラダムスの弟子』

オレ様は占い師だ。名前をノフトラダムフと言う。名前から分かるように、かの偉大なるノストラダムスの弟子だ。

何、時代が合わないって?

ツッコミが早すぎるだろ。(汗)
…でも、それに対する答えは用意してある。
偉大なるノストラダムス先生は、人知を超えた力で数々の予言を的中させた。だから弟子も時空を超えて育てることが出来たのだ。
どう、この明快さ。これなら納得するだろ?

えっ、何故お前が弟子になれたのかって?

そう、良く訊いてくれた!
これからその辺りをとうとうと喋るからよ~く心して聴くように。
“とうとう”と言っても便器じゃないぞ、漢字で書くと“滔々”だぞ。

オレ様はなぁ、ノストラダムス先生の弟子になる前は、東大の赤門脇でしがない占い師をやっていた。
しかし、考えてもみろ、東大の学生が占いに頼ると思うか?
占いの世界から最も遠いところに居るのが、東大の学生なんだと思える。
その証拠に、4年間占いをしていたが、客として来てくれたのは僅か3人だけだった。
素見のアベックが1組と、何だか恐ろしく陰気な助手だか助教授だかが1人。
全く商売にも何もなったものではなかった。

考えてみたら、そんな場所で占い師を開業したこともセンスがなかった証拠だし、何より、自分の商売が繁盛するのかどうかすら占えなかったのだから、当時は占い師を名乗る資格などなかったってことだ。

それでも、そんなオレ様の前に、ノストラダムス先生の使者がやって来たんだ。
オレ様は、本当に驚いて飛び上がったよ。30cm、いや12cmだったかな?

いや、そんなことはどうでもいい。
オレ様にとっては転機になること間違いなしだ。
運が向いて来たんだ。
頑張ってやっていれば必ず報われるってことが分かっただけでも有り難い。

その使者は、見たところ全く普通の人間と同じだった。
オレ様は最初、珍しく客かと思って手相を見始めたんだが、手を見て驚いた。手のひらに一本もシワがなかったのだ。
つまり運命線も生命線も環状線の外回りも、何もありゃぁせん。

オレ様は狼狽した。だってそうだろう、何かしら線らしきものがあれば、いくらでも都合良く話を作ることが出来る。自分の得意とするストーリーを創って、そこに断片的に占った内容を散りばめて行くのがオレ様のやり方だ。

だがな、手相が全くないんだから、何も創れやしない。
無い袖は振れないの喩え通りだ。
ストーリーの無い占いなんて、誰が信じる気になる?
だからオレ様は自分の能力不足を嘆いて、涙を流したのだ。

ノストラダムスの使者は、そんなオレ様に声を掛けてくれたのだ。「涙の種を大地に蒔く時、また新しい生命が湧き出る。」…とな。

それを聞いてオレ様は嬉しかったな。これはきっとノストラダムス先生がオレ様を弟子にしようと吐いた言葉に違いないと、ピ~ンと来たよ。

その使者は続けてこう言った。
「桃栗三年、柿八年」…とな。
その言葉で全ての意味を悟ったんだ。

ノストラダムス先生はオレ様に八年間修行をし、立派な予言者になりなさいと仰っておられたに違いないのだ。オレ様には分かるんだ。

そこでオレ様は先生の弟子になることに決めた。
先ず手始めに『ノストラダムス全集』を購入した。勿論、ブックオフでだ。
そして、最後の頁に書いてある“あとがき”を読んだんだ。
やはり偉大なる先生だ、“あとがき”を読んだだけで全てが手に取るように分かったんだ。

こうしてオレ様は、占い師の中でも最高に難しいとされる予言者になった。

言っておくがな、オレ様の予言は、ノストラダムス先生の予言よりも遥かに難解だぞ。
先生の予言は4行詩だが、オレ様はそれを5・7・5にしてみた。

ところが予言を込めるとなるとどうしても字余りになる。
例えば、オレ様の初期の予言だが…。

「古池に飛び込むものは蛙だけじゃない」

字余りだろ?

その次に読んだのがこれだ…。

「蛙が飛び込むのは古池だけじゃない」

どうだ、この句に至っては全く俳句とは呼べない代物になってしまった。普通の文章と何ら変わらない。
でも内容は真理を突いた予言になっているだろ?
オレ様は、両生類の蛙の行動さえ占えるのだ。
ただ、字余りが多過ぎて俳句の体をなしていない。
だからまだ代表作と呼べるものはないがな。

どうだ、ノストラダムス先生の弟子と言うだけで凄いだろ?
納得したかな?

それではオレ様の渾身の予言を一句。

「オレ様は、これから帰って寝るだろう」

もう一句…。
「寝る前に、一杯やるかも知れません」

どうだ、惚れ惚れするくらい傑作だろ?

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