こんばんは、やや半次郎です。
ホントに久し振りの登場でございます。
覚えていてくれたでしょうか?
寒くなって来ましたが、相変わらずバカバカしいネタでご機嫌を伺います。
それでは早速、やや半次郎の可笑しな世界をお楽しみ下さい。
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『張り込み』
ジャ~ン! どうだ、颯爽と登場した俺はイカスだろ? 遠慮しなくても良い。俺に憧れているのは分かる。
えっ、訳がわかんないってか?
まっ、そういう輩も中には居るだろうから、気にしないで先に進むぞ。
俺は今、重要な任務に就いている最中だ。ここだけの話だが、ある事件の犯人を追いかけて、今、張り込みをしているところだ。もう8時間が過ぎたのだが、全く動きがないから、こうやって少しばかり息抜きをしておるのだ。
少しでも動きがあったら俺は、本職らしく格好良く微動だにせず張り込みに神経を注ぐんだ。
いや、「心血を注ぐ」かな? 「死力を注ぐ」の方が格好いいかな?
でも、文語的過ぎて、喋りの中で出てくると違和感があるよな~。いっそのこと、平たく「必死をこく」としようか。これなら自然だろう。
・・・まだ動きはない。
ところで、この俺が張り込んでいる犯人は誰だと思う?
いや、誰かと聞いても分からないだろう。「どんな犯人だと思う?」と聞くべきか? いやいや、犯人の風体を聞いているように捉えられる。ここはオーソドックスに、「犯人がどんな奴か知りたいか?」と訊こう。
まてよ、「知りたいか?」と訊いた場合、万一「知りたくない」と答えられたら会話が終わってしまう。そうなると、この俺はまた黙々と張り込みを続ける以外になくなってしまうのだ。そんな退屈な事態は堪えられない・・・、おっと、つい本音が漏れてしまった。張り込みを続けよう。
おっ、動きがあったぞ! 誰か入って行く。そら来た、俄然、慌ただしくなってきた。俺の一番得意なパターンだ。
3人居る。先頭は女だ。パッと見たところセールスマンのような出で立ちをしている。スーツ姿だしな。
その後に続くのが、若い男女だ。若いと言っても最近の若者は年齢が分からないからな、30歳前後かな。いや、そこまで若くないぞ。サバ読んでそのくらいだから、35歳~40歳といったところだろう。いや、着ている物が若いということは、案外、年齢がイッテいることが多いものだ。ここは50歳前後まで覚悟しておこう。
お、最初の女がカギでドアを開けて・・・、後ろの二人に中に入るように促している。ははぁ、秘密のアジトで秘密の会合だな。ペコペコ頭を下げていたから、後ろの二人が偉い人のようだ。アジア支局長とかそんな感じかな? ・・・極東本部長とかかも知れない。一般人のように見えるのは、彼らの変装が上手いからだろう。
これはあの部屋に行って、密談の現場を押さえるか?
いやいや、いきなり行ってもとんちんかんだ。ここは、忍の一字で、彼らの動きをウォッチするんだ。
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ところで、あの女はどうやって現れたのだ? 歩いて来るには駅からそんなに近くないぞ。
おっ、あんなところに乗用車が停まってる。あれで来たんだな。「○○ホーム」と書いてある。どうやら民間会社を偽装しているようだ。
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おっ、出て来たぞ。今度は二人の男女が頭を下げている。
一体、何があったんだ?
何やら喋っているぞ。俺はなぁ、読唇術が最も得意なんだ。過去に、二年連続で大会で優勝したんだ。その名も“読唇大王”だ! どうだ、名誉な賞だろ?
しまった、そんなことはどうでも良かった。早速、彼らの唇を読んでみよう。
フムフム、「きょうは、あ○がとうござ○ま○た。」
おっと、“い”の唇の形が読みづらいな。まぁ、当たり障りのないただの挨拶だな。
「○○○って、○ただけたら、ぜ○、け○やく○ましょう。」
なんだ、難しいぞ。
「け○やくすると○は、でんわ○ます。」
“け○やく”って何だ? 間に“い”の列が入っているんだな。
“いきしちにひみいりい”を入れてみよう。
・・・分かった、“けいやく”だ!
“けいやく○ましょう”は、たぶん“けいやくしましょう”だな。こういう時の俺の勘は鋭いだろ?
“契約しましょう”だ。
ははぁ、何かの契約をすると見える。
となれば、次は容易に推測できる。「けいやくするときは、でんわします。」だ。
いよいよ、秘密が明らかになっていくぞ~。身震いするな~。
おっ、アジア支局長と極東本部長が話し始めたぞ。
なになに・・・。
「きょうは、○○○てよかったね。あかちゃんもうまれる○、おれもがんばるよ。」
「そうね、あなた。○ろくて、○れいなへや○すめるわね。」
なんだ? 勘が冴え渡るぞ。
“今日は、見に来て良かったね” だな。次が、“赤ちゃんも産まれるし、俺も頑張るよ” か。
そして最後は、“広くて、キレイな部屋に住めるわね” で合ってるだろ。どうだ~!
・・・って、何だ? 部屋を借りに来た人の会話のように思えるが・・・、気のせいかな?
そう言えば、車に○○ホームと書いてあったし、セールスマンのような出で立ちも当然と言えば当然だ。
つまりあの二人は、近々、子どもが産まれる夫婦で、借りる部屋を見に来たのだ。
と言うことは・・・。
あぁ、俺はまたやっちまった~!
俺が張り込んでいたあの部屋は、誰も住んでいない空き家だったんだ~!
From やや半次郎
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