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半次郎の“だんごんがん”

要するに、居酒屋での会話ですね。
ただし、半次郎風のフレーバーがかかっています。
≪安心ブログ≫

『酔っ払い』

2012年11月09日 12時43分24秒 | ★ やや半次郎の世界 ★

こんにちは、やや半次郎です。

早速、やや半次郎の不思議な世界にご案内しましょう。

………………

『酔っ払い』

おぅ、お兄ちゃん。
よぉ、お兄ちゃんよぉ。
何だよ、さっきから呼んでんだろうよぉ。
何で聞こえない振りすんだよ。
よぉ、お・に・い・ちゃん!

何だよ、耳にそんなモン詰め込んでたのかよ。
中耳炎か?
大丈夫か?

えっ、アイポッドだ?
あっそうぉ、アイポッドなの・か。

そんなこたぁ、どうでもいいよ。
あのよぉ、お兄ちゃん、頼みがあんだけどよぉ。
お兄ちゃんの足下にあるそのペットボトルの水をよぉ、おいチャンに譲ってもれぇ、れぇ、れぇねぇかなぁ。ちょっと呂律が回ってねぇけどよ。まだ、半分入ってるじゃん。

えっ、何、僕は貴方のお兄ちゃんじゃありません?
当たり前じゃねぇかよ、見たところお兄ちゃんは中学生ぐれぇじゃねぇかよ。
おらぁ、見ての通りの、…ほら…ど真ん中だろうよ。
そぅ、そぅ、中年、中年。
ちょっくら言葉が出て来なかっただけでぇ。
いや、だからさぁ、中学生の坊主が、中年のオレ様のお兄ちゃんだったら、そらぁお前ぇ、えれぇことだぜ、えっ。
ノーベル賞もんだろうよ。

えっ、ノーベル賞にはそんな賞はありません?
あた、あた、当たり前ぇじゃあねぇかよ。
…ったく、よぉ。

お・に・い・ちゃん、水頂戴!
ダメなんですか?
イヤなんですか?

あぁそぉ、無視すんだね。シカトだね。
シカト左様か…なんて言っちゃうぞ~。
受けねーからな、寒いぞ~、怖いぞ~!
イ・ヒ・ヒ・ヒ・ヒー。(笑)

…って、どうしてお兄ちゃんは黙っているのれすか?
この、わラしの言うことが聞こえませんか?
ニホンノコトバ、ワカリマセンカ?

…あのさぁ、お兄ちゃんさぁ、2人しかいない状況でさぁ、1人がね、喉が渇いて死にそうなワケよ、ね?
それでさっきから、ウルサいかも知んないけど、騒いでるワケよ。
そんな状況で、あぁたねぇ、もう1人が水を持っていたらさ、その水をくれたってバチは当たらねーだろ?
しかもおいチャンは、只でくれとは言ってないだろ?

えっ、お金の話は一切してないって?

何だよー、お兄ちゃん聞いてんじゃん。聞こえてんじゃん。
そんならそうと最初から言ってくれよぉ。
オレだって暇じゃぁねぇんだから。

…ところで、お前ぇ、ずいぶん固ぇなあ。何か悪いモン食ったんじゃねぇか?
言ってみろよ、どうしてそんなに固くなっちまったんだよぉ?

えっ、私は銅像でございますぅ?

よせやい、銅像が喋れるワケはねぇだろ?
お前ぇ、俺が酔っ払ってると思って遊んでるなぁ?

遊んでません?

じゃあ、何で銅像が喋るんだよ?

「はいはい、純くん、もう帰る時間だよ~。あっ、そろそろ校門を閉めますので、ご父兄の方も校庭の外に出て頂けないでしょうか。」

あれっ、何だよ、急に大人びた声になったと思ったら、オジさんが現れたな。
お前は誰だ?

「私はこの学校の教頭です。」
何を、この学校は京都の学校か?
「…」
何を黙ってるんだよ、答えろよ。
「京都ではありません、教頭だと言ったのです。生徒はもう、1人も残って居ませんからお引き取り願えませんか。」

分かったよ、分かった、わ・か・り・ま・し・た。
もう帰りますぅ。
ただちょっと、二宮金次郎さんと話がしてみたかっただけなの。

「冗談は止めて下さいませんか。銅像が喋る訳ないでしょ。」
あぁ…、そうね。はいはい。ご迷惑をお掛けしました。すんません。

チェッ、酔っ払いだと思って非道い仕打ちだぜ、まったく。
二宮金次郎と話して何が悪いんだよ。
大体、銅像が喋れない事ぐらいは、わ・か・り・ま・す。
でも、校庭で遊んでいた子どもたちが、入れ代わり立ち代わり、おいチャンの相手をしようと二宮金次郎になったつもりで話し掛けてくれたんだ。
それを無にすることは出来ないよ。

おいチャンはもう帰るけ・れ・ど・も、寒くなって来たから、二宮さん、金次郎さんよぉ、あんたも早く家に帰って、温かいモンでも食わして貰いな。
そしていつかよぉ、お前ぇが大きくなって、酒が飲めるようになったら、このオレが居酒屋に連れてってやるからよぉ。

なぁ、それまで無理しないで、頑張ってな。
風邪ぇ、引くなよぉ。
親孝行しろよ~。
じゃあな、あばよ~!

…酔っ払いの後ろ姿をじっと眺めていた二宮金次郎の右目から、一筋の涙が頬を伝って落ちたことを、誰も知らなかった。

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