こんにちは、やや半次郎です。
早速、やや半次郎の可笑しな世界をお楽しみ下さい。
………………
『薄暗い室内』
ここは薄暗い室内。
日差しが入らない上、電灯も小さなものが入り口に一つあるだけで、奥の方には光が届かない。
何故、入り口にしか電灯が無いのかは分からない。
私がこの部屋を借りた時からそうだった。
家主には一度、部屋の奥にも電灯を付けてくれるようお願いしたことがあったが、アッサリ断られた。
理由は定かではない。
でも、さし当たり寝るだけの部屋なので支障はない。
2~3度、自分で取り付けようかと思ったのだが、天井が高くて手が届かない。
テーブルに椅子を乗せて上ってみたが、それでも天井には手が届かない。
それほど高い天井だ。
そう、今の話の中でチラッと出たが、この部屋には中央にテーブルがある。
4人掛けの食卓だが、私には必要のないモノだ。
一人暮らしで、しかも寝るだけの部屋なのだから。
家主には必要ないと伝えたが、取り合っては貰えなかった。
家主はいつも取り合ってくれない。
取り合ってくれないのが家主なんだ。
そのテーブルは、何でも名のあるデザイナーが作ったものだそうだ。
だから置いておくというのが彼の言い分だ。
でも、その有名だというデザイナーの名前を、一度も教えてくれたことはない。
教えてくれないのが家主なんだ。
そう、この部屋を借りた当初、寝るだけの私にとってそのテーブルは、ただの邪魔な存在でしかなかった。
しかし、いつからか利用価値を見いだしたのだ。
人間、心底利用しようと思えば、アイデアも湧くというもんだ。
私は、そのテーブルの下に入り込んで寝ることにした。
これなら安心だ。
夜中に地震が起きてもテーブルの下に隠れていることになるからな。
それはそうと、薄暗い。
全くの暗闇ではないから良いものの、薄暗いのも生活には不便だ。
私は寝るだけだから良いが、ここで生活する人が居るとしたら、きっと不便に違いない。
いや、不便であることよりももっと重大な問題がある。
こんな薄暗い室内には、きっと何かが棲み着いているに違いない。
怖い!
ハッキリ言って、怖い!
ハッキリ言わなくても、怖いものは怖い!
薄暗い室内には、きっとオタマジャクシのお化けとか、カエルの子のお化けとかが居るような気がする。
…カエルの子もオタマジャクシも同じだと思うだろ?
ところが、さにあらず。
カエルの子はオタマジャクシなんかじゃない。
“カエルの子はカエル”と言うだろ?
アハハ、アハハ、アハハ…。(笑)
ここは薄暗い室内。
バカを言っても虚しく響くだけ。(苦笑)
寝るだけだからしょうがない。
バカを言うことは不動産屋に伝えていなかったから、こんな部屋を借りる羽目になったのだ。
ここは薄暗い室内。
あの時、ちゃんと伝えていたら…。
そう思うと…涙が溢れてくる。
とめどなく溢れる涙が、ただ寂しい独り寝の枕を濡らす。
ここは薄暗い室内。
いや、もしかしたら疑っているのではないか?
ここは本当に薄暗いんだ。
どうしたら疑いが晴れるのだろう。
この室内が薄暗いことを証明するには、どうしたら良いのか。
友達に来て貰って、つぶやいて貰うか?
「薄暗い室内、ナウ!」とか…。
ダメだ、こんなつぶやきだけで信じて貰えるほど世間は甘くない。
写メも掲載しなきゃならないだろう。
おぉ、新たな疑問が頭をもたげて来た。
薄暗い室内で、薄暗い室内であることが分かるように、ちゃんと写るのだろうか?
フラッシュを焚いたら明るい室内になってしまう。
薄暗い室内でフラッシュを焚かずに写メを撮ったら、ただの“暗い室内”と区別がつかなくなる。
“暗い室内”ではなく“薄暗い室内”なんだ。
この違いは大きい。
う~む、悩ましい。
ここは薄暗い室内。
私はいつも、この薄暗い室内で悩んでいる。
言わば、悩ましい薄暗い室内だ。
悩ましい…。
悩ましい…。
ここは薄暗い室内。
From やや半次郎
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