こんにちは、やや半次郎です。
早速、やや半次郎の世界をお楽しみ下さい。
………………
『土星さんの世界』
私はこの世の者ではない。
かと言って死んでいる訳ではないことは分かって貰えると思う。
“この世”とか“あの世”と言う表現は、君たちの棲む地球に対して神の国が地球外、つまり天上の世界にあることから出来た言葉だ。
嘘だと思うのなら、交番に行ってお巡りさんに訊いてみればいい。
ただし、公務執行妨害か何かで逮捕されても知らんがな。
つまり私が言いたいのは、私が君たちと同じ地球人ではありゃあ~せんと言うことだ。
では私はどこから来た者なのか?
聞いて驚くなよ。
いや、驚いてもいいが、チビるなよ。
実は、私は今、土星に棲んでいる。
お察しの通り、私の正体は土星人ということになる。
“サターン”と言うと悪魔のイメージがあるから好きではない。どちらかと言うとマザーに出て来る“土星さん”の方が近いと思う。
しかし、容貌は似ていない。
何故、私が地球人の言葉を喋れるのか不思議だろう?
その訳をこれからじっくり話すから、しっかりと聞いてくれ。
私たちは確かに土星人なんだが、先祖は何を隠そう、君たちと同じ地球人なんだよ。
地球人の中から選ばれた僅か数人が土星に移住したんだ。
気の遠くなるほど昔のことだがな。
その先人たちが今の土星人の先祖になるんだ。
だから、土星では言葉はみんな地球の言葉と同じなんだ。
ただ、地球に存在しない物質についての固有名詞は、どうしても新しい言葉になってしまう。
それから長い年月を掛けて少しずつ言葉が変化していったこともあり、君たちと違う単語や言い回しもある。
あぁ、まだ名前も名乗っていなかったね。
私は、土星で言語学者をやっている、アレヤッテ・コレヤッテーナと言う者です。
今日は私たちの先祖の故郷、地球の言葉を直に学ぶためにやって来たんだ。
…と言うようなものの、本当はどちらかと言うと高利貸的な考えを得意とする土星さんで、人を見るとお金を貸したくなってしまうのだ。
しかし、私にはお金を貸す際にはポリシーを持っていて、常に高過ぎると言う声をさえずる小鳥たちの歌声に耳を傾け、少しでも安く見せることを皆さんに約束しているのだ。
約束はプロミスと言うからねぇ。
プロミスは地球でも高利貸しの仕事をしていると聞きましたが…。
このプロミスを業界用語風に言うとミスプロとなる。
これは競走馬の一種だな。
つまり競馬で負けが込んで来た人がすがるのがプロミスと言う訳なのだ。
しかし、残念ながら土星には馬は居ない。
だから競馬もないのだが、言語学者である私は、言語を調べる振りをして、競走馬のことも調べ上げた。
今日はこれから、中山競馬場に行って、賭けながら実際の競馬と言う物を調べるつもりでいる。
そしてしこたま儲けた暁には、1日の終わりにハムを食べながらワインを飲もう。
すると、言語学者の私の脳に、地球の古い言葉が浮かんで来る。
「ハムさ噛むのだ!」
「うん、噛むさハムにだ!」
地球の、特にアジア方面の人の会話だ。
どうやら言語学者は私の天職のような気がして来た。
それでは、また会おう!
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