先日、隣町の田園地帯まで出かけてマンジュシャゲと稲穂が色づいた黄金の波とくっきりとそびえる富士山の、思いがけないコラボを楽しんだ帰り道、農道わきに建てられた簡素な野菜スタンドにビニール袋に入れられたクリが並んでいるのを見かけた。
近づいていくと「クリは如何ですかぁ~」と明るい声で呼びかけられる。
この田園地帯は平らなところには水田が広がり、それ以外の場所では牛や豚が飼われ、クリやカキ、ナシ、などの看板を掲げた果樹園が点在する。
まさにそうした丘陵地の一角で採れたばかりのクリの実を見て、茹でグリでもいいし、クリご飯もいいなぁと、足が止まった。
すると声をかけてくれたおばちゃんは「あの丘で採れたのよ」と目の前の丘を指さす。
一袋500円。
高いんだか安いんだか分からないが、そんなことより、マンジュシャゲと黄金の波と富士山の美しいコラボを堪能してきたばかりの感性に、目の前の丘で採れたばかりのクリというのも随分と魅力的に映ったのである。
こういう出会いは僥倖と呼んでもいいんじゃないか。
僥倖はオーバーすぎるかしらん、と思いつつ千円札を渡してお釣りをもらう。
そして見かけによらずズシリと感じられるビニール袋をぶら下げて立ち去ろうとすると、おばちゃんが「うちのクリはリヘイだからね」と後ろから自慢げな声をかけてきた。
振り返って「リヘーって?」と聞くと、「クリの種類で、うちはこのリヘイとナントカの2種類栽培してるのよ。甘くて美味しいわよ」という。
初めて聞いた。
確かにカキやリンゴ、ナシ、ブドウなど名無しの果物など見当たらない。みんなそれぞれ立派な名前が付けられているからクリに名前が付いていても何ら不思議はない。
どういう字を書くのかと聞くと、「『利用』の『リ』に『平』の『ヘイ』だと思うわ」という。
最初は「利用」を「理容」と聞き間違えたので「理科」の「理」?と聞き返した挙句の「利平」さんだったわけで、「人の名前みたいだなぁ」と言うと、「そう言えばそうですねぇ~」と感心しているが、それ以上の解説はなかった。
家に帰ってネットで調べてみると、たちどころに判明する。
何とリヘーグリは「クリの王様」と言われるほどの名クリなんだそうである。
曰く「果肉は適度に粉質で食感が良く、甘みが強くとても美味しいクリで『クリの王様』と言われ」云々とあり、さらに「香りもしっかりとあり、茹でグリにするだけでとても美味しいですが、渋皮煮も絶品です」とある。
で、ついでに「リヘー」の謎も。
「岐阜県の土田某氏が1940年に日本産のクリと天津甘栗に用いられる中国産のクリを掛け合わせて生み出し、土田家の屋号の『利平治』から付けたとされている」云々。
知らなかった。
かくしてわがブログのネタは尽きることがなく、「平方録」は名前のとおり「へぇ~」「ほぉ~」と感嘆符付きの声を漏らしながら健在でいられるのでございます。
あのおばちゃん、野菜スタンドに「クリの王様リヘー栗」とか「栗の王様 甘~い利平栗」なんて書き添えた札でも掲げていれば、もっと飛ぶように売れたんじゃないかな。
昨夜食べた栗ご飯、それはそれは大変美味しゅうございました。
長野の小布施で食べた栗おこわも美味しゅうございましたが、もち米を使わなくたって、久しぶりに「栗ご飯って美味しい!」と首を何度も立てに振るくらい美味しく感じられたことでございます。
秋という季節は大嫌いだけど、実りの秋だけは素晴らしい ♪