平方録

雑木の庭

「じいじのお家は森の中にあるみたいだね」
この夏遊びに来た孫娘の一言には我が意を得た思いがしたものだ。

15年ほど前に家の建て直しを余儀なくされた。
その時、どうせなら年来の夢に一歩近づいてやろう、と考えた。それが雑木林の中に家を建て、自然の木々に囲まれて暮らしたい、ということ。
ただし、条件は現在地でそれを実現すること。どこか景色のよい雑木林を購入して家を立てるのが一番に違いないが、そんな経済的余裕があろうはずがない。

どんな樹木に囲まれたいのか。
まず、落葉樹であること。木漏れ日ができるような、葉が小ぶりであまり大きくなく、風が吹けば葉っぱが風にそよいで風の音が聞こえる木。できれば春には花が咲き、秋には実のなる木。

そんな基準で藤沢市北部にある植木屋さんと相談しつつ選んだのがヤマボウシ2本、カツラ1本、ハナミズキ1本、ヒメシャラ1本、アメリカザイフリボク1本、エゴノキ1本、そして秋の奈良公園で知ってすっかりほれ込んでしまったナンキンハゼ2本。合わせて9本の落葉樹。加えて以前から庭の端に植えてあったツバキ3本、キンモクセイ1本、イロハモミジ1本のを合わせて14本の木が茂っている。

敷地は70坪しかないから、“所狭し”の状態ではある。
ナンキンハゼは成長が早く、狭い庭を覆い尽くさんばかりになるので、毎年枝を切っている。
カツラ、イロハモミジ以外はみんな花が咲く。イロハモミジは紅葉が見事。実はカツラの花を見たことがある。咲くとは知らなかったが、葉が芽吹く前の季節に数筋の赤いひも状のものが3つ4つ木にくっついているのを見た。ただし一度きりである。来年はどうだろうか。

夏のナンキンハゼは実ににぎやかな木になる。
今年は比較的少なかったが、例年、最盛期になると常時20~30数匹のアブラゼミが1本の木に取り付いて蝉しぐれになる。
真夏らしい好きな光景である。

ナンキンハゼの紅葉は素晴らしい。あらかた周囲の木が葉を落としてしまった初冬に赤や黄色に色づく。
我が家の脇を通る人が木の名前を尋ねていくほどである。
ナンキンハゼは葉が落ちてしまうと、鈴なりに実った実が白銀色に輝く。
餌が減る季節に鳥たちの格好の餌場が出現する。

スズメ、シジュウカラ、ジョウビタキなどに加えてヒヨドリも来る。ヒヨドリが来るとギャーギャーと甲高くうるさく鳴くし、他の小鳥たちはみな逃げてしまう。狼藉者である。歓迎したくない。
そして最近はムクドリも増えてきた。この鳥は群れるので、大勢で来る。この鳥はくぐもったギャーギャー声で鳴いて気に障る。
ドバトも多い。庭の片隅からいきなり飛びあがって驚くことがある。

そして今年からはあのガビチョウが加わるのではないかと思っている。
果たしてどんなことになるのやら。2本のナンキンハゼをめぐり緊張が高まるのだろうか。なにせガビチョウは中国系である。関係ないか。

我が家に何度か足を運んだことのある長崎の友人が、昨年5月に我が家に寄った際、若葉の茂る木漏れ日の庭を見ながら「うちの庭も木の枝を切らずに伸び放題にして葉を茂らせたら、隣近所から『とても素敵!』と言われた」とポツリ。
同志が増えましたナ。

最近、本屋の園芸コーナーをのぞくと「樹木ガーデン」とか「木々に囲まれて暮らす」とか、同じような趣旨の庭を志向する向きが増えていることを示唆する本が並んでいる。実現させるには木々を植えるスペースがあるかどうかだが、都会でたっぷりの敷地を確保できないところでも樹種と本数を上手に考えれば、木々に囲まれた気分は十分味わえる。

町中の住宅地に緑が増えていけば素晴らしい。


カツラ(左)とナンキンハゼが庭の真ん中に茂っている。奥にハナミズキとヤマボウシ
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