350メートルのアーケードの下に140軒近い店が並ぶ安さで知られる商店街である。
このあたりは横浜でも古くから人が住みついた埋立地で、いわゆる下町である。芝居小屋なども近くにあって庶民的な暮らしやすい街として知られている。
41年前、結婚したてのころこの近くに住んでいた。
深夜2階の窓辺で語り合っていた大学生2人が、男が酔っ払いに絡みついて財布を抜き取るところを目撃、男をひっ捕らえて交番に突き出そうとしたが、生憎交番に警察官の姿はなく、それに気付いた男が持っていたナイフで2人を刺して逃走。このうち1人の大学生が命を落とすという痛ましい事件があった。
前途有為な大学生の勇気ある行動が命を落とすきっかけになったことは大きな反響を呼び、開会中の衆院の予算委員会で「不在交番」の存在が問題となり、連日集中して審議される事態となった。
警察官の肩代わりをした青年が命を落としたとあって警察が血眼になって捜査した結果、10日ほどして犯人逮捕にこぎつけ、かろうじて面目を保ったが、今から30年ほど前の1985年ごろの話である。
この事件には秘話があって、犯人はナイフにかぶせていた鞘を落としていた。ノートの切れ端を丸めてセロファンテープで止めて作った鞘で、何とそのノートの切れ端から足紋が採取されていたのである。警察は容疑者を連れてくると身長を測るという口実をつくって、わざわざ靴下を脱がせて計測台に上がらせ、足紋を採取していたのである。終生不変・万人不同の足紋のおかげで犯人を逮捕できたのである。
事件現場で警察官が地べたにはいつくばって、何か犯人に結び付く手掛かりはないかと探しまわるのはおなじみの光景だが、手掛かりは落ちているのである。
この鞘の事実を知っていたのはウチだけであった。
この事件のあった場所がこの商店街の裏通りである。
歳末の昼下がり、人はそれなりに出ていたが、まだピークには程遠いようであった。
30日か大晦日になると投げ売りも始まって、それこそ大賑わいになるんだろう。
1人風邪をひいて出席できなかったが、侃々諤々8人で盛り上がった。
わが提出の5句
朔旦のめでたさ重なる冬至かな
歳末や賑わいよそに駒の音
木枯らしやぎっくり腰を置いてゆき
木枯らしやトロトロ柿をすすりけり
年の瀬やわが手に残る棘の傷

アジア系の外国人の経営する店もチラホラ見られるようになってきた横浜橋商店街

大通り公園の交番脇の日だまりでは路上将棋に人がたかっていた