拡張が計画されている米軍施設の対岸にあるホテルで、目の前にジュゴンの生息する沖縄特有の美しい海が広がり、ゴルフ場も併設された素晴らしいところだった。
ここのオーナーから大歓待を受けて、夜はもちろん朝から大御馳走でお腹が膨れ上がってグミのようにパンパンになったことをよく覚えている。
空前絶後のことであったのだ。
その辺野古への基地移設計画に示された沖縄の民意は知事選や地元市長選、果ては衆院選を含めた何度もの選挙を経ても「ＮＯ！」なのである。
これほど一貫した民意が示され続けることは、そうやすやすと、どこにでも存在するというわけではない。
それだけ沖縄の人々の切実さの表れなのである。
私が住む神奈川県は沖縄県に次いで米軍基地が集積する全国２番目の基地県なんである。
わけてもアメリカの前方展開戦略の要である第七艦隊の西太平洋における拠点、空母機動部隊の艦船修理、補給のための重要な基地となっているヨコスカを抱えているから、重要度は群を抜いている。
その空母は、時として乗組員の休養と補給、修理などの目的で定期的に港に入ることになる。
その時が問題なのだ。
水兵たちが街に繰り出して、飲んで歌って明け方まで大騒ぎして、中には日本人に悪さをしたりする輩も出てきてひと騒動が必ず起こる。
しかし、それにも増して深刻なのが、空母艦載機の１日たりとも欠かせない離着艦訓練の猛烈な騒音なのである。
当然、港に入っている空母では訓練は不可能だから、陸上の飛行場を空母の甲板に見立てて行うのだが、この騒音たるや、体感したものでなければ想像できない猛烈なものなのである。
なにしろ、あの重量の重い戦闘機が着陸のためにエンジンを絞って着陸態勢に入り、地上に足が触れた瞬間に再び跳び上がる訓練を繰り返すのである。
司令官に聞いたことがあるが、この訓練は毎日のように行わなければ、大海原の中で、ちっぽけな空母の甲板めがけて降りてきて、しかも無事に着艦することは至難の業であるという。
それ故に、訓練は日を開けずに行うのが、米海軍のマニュアルに記されているところだ、というのである。
エンジンを絞って降りてくるところの騒音も相当なものだが、これがスピードを殺しに殺して着艦直前に再び飛び上がる時は、エンジンはフルスロットルになるから、その騒音たるや想像を絶する轟音となって１０キロ四方の人々の五臓六腑を揺さぶるほどに荒れ狂うのである。
過去に墜落事故も起きて幼い子どもたちが犠牲になっているし、周辺は沖縄の普天間以上の人口密集地である。
家々の窓は国が金を出して二重ガラスにしているが、そんなものの効果は限定的でしかないのである。
しかも、訓練は庶民の団らんの時間、即ち日が暮れかかるころから２２時くらいまで、ひっきりなしに続くのである。
住民は何度も騒音被害の軽減を訴えて、裁判を起こし、裁判所はその都度「受忍の限度を超えている」と理解を示すが、飛行差し止めまでは認めたことがない。騒音被害は続いていたのである。
そんななかで、１人の実務的な知事が米軍や防衛省と静かに折衝を重ね、広島と山口県境の岩国基地沖合の瀬戸内海を埋め立てた場所への基地機能移転を承認させたのである。
完全移転は予定よりも遅れているが、滑走路は既に出来上がり、今はオスプレイが使っているのではないか。基地機能の移転、という問題解決のドラスティックな方法は既に存在するのである。
それが、沖縄ではどうして実現しないのか。
辺野古への移設を認めた前の知事が下した辺野古の埋め立て承認の手続きも、反対の声に押されて当選した新しい知事が、承認を取り消した。
これに対する、国の態度は沖縄県民の意思などどこ吹く風で、この問題に散り組んでいる官房長官の高圧的で「上から目線」の傲慢な態度が目立つばかりなのである。
結論ありきで物事を進めるから、こういうことになる。五寸釘で打たれるぞ！
世間知らずの鳩ぽっぽ首相が「最低でも県外」と言い放って以来、県内移転には無理があるのだ。
これはもう、完全に間違いなんだから、潔く認めてアメリカと再交渉、計画を白紙に戻すしかない。その上で普天間基地の県外移設を考えるしかあるまい。
神奈川でできたんだ、沖縄でできないことがあるまい。
アメリカの言いなりで戦争法案まで強引に通したんだ。それほどまでに従順にしているなら、一つくらいおねだりしたって聞いてくれるんじゃないの。えアベちゃん、お兄ちゃんのところに行っておねだりしてきたらどうよ。
わが家の「空蝉」が初夏に続いて、何とも優雅に秋の花を開いた
