平方録

とげとげのチョッキ

「金帰月来」という、単身赴任のサラリーマンの生態を表す言葉が、かつてあった。
金曜日の夕方、仕事を終えたら単身赴任先から急いで列車や車に飛び乗って、妻や子の待つ自宅へ帰り、日曜日の夜に赴任地に戻って仕事に備えるという、とても日本的で涙ぐましい生活ぶりを指した言葉である。

娘の出産に備えて手伝いに行っていた妻が、5日ぶりに戻ってきた。
産気づく気配もないからという理由に加えて、土日は旦那がいるのだから世話をさせた方がいい、という理由である。
したがって、日曜の夕飯までには戻るという。
「戻る」というのはおかしいか。拠点はこちらだから「出向く」が正しいかもしれない。

ともあれ、夕飯の支度までには戻ってきたので、食事の支度をしないで済み、楽チンである。
と言ったって、持ち帰った名物の餃子を焼いたのは私で、妻は2種類の野菜サラダを用意しただけだが、後片付けは任せた。
週2回の生ごみの収集日だったので、朝はきちんと市指定の有料のゴミ袋に入れて出したし、洗濯もし、風呂を沸かして待っていたのも私である。
柔軟性に富んでいるというか、従順といおうか、主夫業というものはすぐに板につくもののようである。

この間に気付いたのだが、ゴミ出しは7時前後にしているのだが、近所の人と1度も出会っていない。
にもかかわらず私が出しに行くと、ごみは既に結構積まれているから、みなさん相当早く出すようである。
お陰でいちいち挨拶する必要もないので好都合である。

ごみの集積場所の近くに横断歩道があって、この時間、黄色いチョッキを着て手には黄色い旗を持った年寄りが4人も立っていて、小学生の通学を見守っている。
感心だが、彼らがこちらにじっと誰何するような視線を送って寄こすのは怪しからんことである。不審者になった気分だ。
ま、デビュー間もないので仕方ないか。

「戦争法」に先立って制定された「特定秘密保護法」は今でこそ表面的には羊の皮をかぶって大人しくしているが、いずれ化けの皮が剥がれて“1億総活躍社会”が戦前のような“1億総監視社会”というチョッキに装いを変えていくことだろう。
首相官邸のホームページには「安全保障上の秘匿性の高い情報の漏えいを防止し、国と国民の安全を確保するためものです」と趣旨が記されている。
後段の「国と国民の安全を確保するため」と言うところが曲者で、何だって例外なく取り締まれちゃうんですよ、と書かれているに等しい。

黄色いチョッキの善良なおじちゃんおばちゃんたちが、とげとげのついた別のチョッキを身にまとう姿を想像してみてよ。
くわばらくわばらですな。



鎌倉駅近辺まで出たので、ついでに立ち寄ってきた


本堂前のシュウメイギクが満開
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