平方録

江の島 薄暑の賑わい

海を眺めたいと思って江の島の防波堤まで行った。

お前のところは海に近いのだから、わざわざ出かけることもあるまいと言われるかもしれないが、一人でポツンと海を見ていようとしたら、それなりの場所が必要なんである。
江の島がそれにふさわしい場所かと言えばそうでもないのだが、たまたま思いついたに過ぎない。

弁天橋を渡った江の島側の参道やシラスを食べさせる食堂が立ち並んだ辺りは月曜日だというのにとても混みあっていて、まるで休日かと錯覚するほどである。
朝から抜けるような青空で、その青空に誘われてどこかに出かけたいと思っていた人たちの中で、海を見て何かおいしいものでも食べたいと思った人たちが、集まったんだと思う。
動機こそ違っているけれど、ボクだってふらふらと江の島に出かけて行ったわけだからね。

下世話な噂では、宮家の長女の婚約者が夏の「湘南江の島海の女王・海の王子」コンテストで海の王子に選ばれたことのある男性だというので、何かと江の島が話題になっているんだとか。
江の島に観光客が詰めかけていたのは青空やシラスに誘われただけでなく、そうした羨望やあこがれが入り混じった噂が関係しているのかもしれない。

国会に出かけて行って参院で始まった「何とか罪」の行方に注目しろ! とは言わないけれど、少しは関心を示して見極めておかないと窮屈な世の中になっちゃうんだけれどねぇ。
と言ったって、そんなもんに関心を示すはずがないよな。
海の王子の雰囲気を感じ、シラスを味わえば、とりあえず満ち足りるんだろう。つけ込まれるわけである。

梅雨入り前までのこの時期はとても気持ちの良い季節だ。
盛夏をもって1年のうちで最も素晴らしい季節だと思っているボクも、この季節の気持ち良さには何の異存もない。文句のつけようがないのだ。
いつまでも暗くならないし、夜が来たってすぐに夜明けがやってくる。

ちょっと文学的なことを言えばこの時期には「薄暑」という言葉がある。
俳句の季語にもなっているのだが、初夏のころの少し感じる程度の暑さ、のことである。
随分と繊細なことだが、そこが日本人の祖先が身に付けていた五感の研ぎ澄まされたところだろう。

旅帰り軽暖薄暑心地よし

薄暑はや日陰うれしき屋形船

この2句は高浜虚子の作である。
軽暖という言葉は手紙の冒頭などで「軽暖の候」などという使い方をするように、薄暑と同じような意味合いだが、ボクに言わせれば「冬とは違って暖かくなっているから、着るものも薄くて軽いもので済むから誠に都合がよろしい。旅行も荷物が軽くて済むからなお好都合」という解釈になるのだ。
ともあれ軽く汗ばむ季節はいかにも気持ちが良いものだ、と感じている虚子センセイに同意しよう。

声かけし眉のくもれる薄暑かな

知人と行き合って声をかけたのだが、相手の反応はここでは言わず、ただ相手の眉がかすかに曇っていたことに気づいて、それを表現している。心理の陰影と言うのか、そこをとらえた薄暑にたがわぬ繊細な句である。
暑さが理由で眉を曇らせていたわけでない。

これは原裕という原石鼎の養子になった人の句で、1930年生まれというから、まだお元気かもしれない。

昨日の江の島・湘南港の堤防の上は午後と言うこともあって南寄りの風が強く、しばらく座っていると半そでシャツには肌寒いほどで、早々に退散してきた。
風も強くなるとうっとおしいものなのだ。
でも午前中は風も弱く、近所の自然公園になっている森の中を散歩してきたら、さすがに汗ばんだから、薄暑というものは十分に味わっているんである。





隣家との間のフェンスに絡めているわが家のバラのラストバッターには名前がないが、直径3~4センチの小花がびっしりと株を覆うように咲く。まだ満開には早いが、旺盛に開き始めた


わが家の庭で〝保護・栽培中〟の八重のドクダミ
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