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平方録

何も考えない ただ草を抜く

昨日は朝ごはんを食べた後、いつものように新聞に目を通す。
コロナ、株安、そして〝発狂〟法務大臣のニュースばかりでうんざりし、早々に切り上げて庭に出る。
草取りが目的。
急に思い立った。
草取りは地面とにらめっこしていればいい。
嫌になるまで…気が済むまで地面を見詰めてひたすら草を抜く。
空を見上げることも無く、周りを気にすることも無い。ただひたすら地面とにらめっこしながら草を抜く。
何も考える必要がない。考えなくていい。
一心不乱で草を抜く。
坐禅をすると雑念が沸き起こるが、草取りで地面に向き合っている時は不思議と雑念は湧いてこない。
手を染めるまでは億劫だが、始めてしまえばこっちのもの。
集中できるところが草取りの良いところ。
花壇に侵入し始めたドクダミを退治しようと根を掘り進むとミミズが出てきたりする。
いや、すまんすまんと謝り、土の中に戻す。
今度は白い幼虫が現れる。
「運が悪かったな」と別れを告げる。
後は又ひたすら草を抜く。
硬質の膝当てをしているので四つん這いになって草を引くと足腰が痛まなくて済むから、飽きてきたって続けられる。
誰にも邪魔されない。
何も考えなくていい。
ただひたすら地面とにらめっこしながら草を抜く。
お昼でやめにしたから、まだ草は残っている。

今日は真冬の天気に逆戻りだという。
冷たい雨も降るらしい。
なのに早起きのウグイスの鳴き声が聞こえる。
初鳴きまであんなに慎重だったくせに。
ウグイスの真似なんかとてもできないから、また日がな一日、炬燵のシミになる。
シミだからじっとしたまま動かない。動けない。
シミは考えないし、考えなくていい。
シミだから…

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