庭のスイセンが一輪だけ開いた。
ニホンスイセンといわれるおなじみのスイセンで、庭のあちこちに植えっぱなしにしてある。
今暮らしている家には床の間がないが、中学生や高校生だったころ、火の気も人気もないキーンと冷え切った部屋のふすまを開けた途端、床の間に活けたスイセンの香りが部屋中に充満しているのを嗅ぐのが好きだった。
あの静寂の中に漂うスイセンの甘い香りは春そのものの香りで、寒さの底の日々が続いても、どこかホッとして「もうすぐ春だ♪」という思いを強くしたものだった。
そういう意味では「希望の花」と言ってもよい。
苦いことばかりだった多感な時代の遠い思い出だが、冷え切った部屋の中に漂うスイセンの香りを嗅ぐと、今でも当時の気持ちが蘇ってくるようで懐かしい。
去年の暮れ、山の神が「スイセンの切り花が手に入らない」とボヤいていた。
正月に活けるスイセンがどこの花屋にもないというのだ。
我が家にはつぼみがわずかに膨らみ始めているものしかなく、正月には間に合いそうもないが、近所の池と森の公園の陽だまりではチラホラ咲き出していたし、三浦半島の子安の里に行けば道端にいくらでも咲いているはずである。
いざとなればひとっ走り行って無人スタンドでも覗いてこようかと思ったほどだが、幸いその必要はなかったものの、わが家のスイセンを年末に開花させるのも手だなと思った。
わが家では正月用に活ける花材はスイセンとセンリョウと松の3種。
センリョウは庭に植えてあり、鳥に食べられないようにネットをかぶせて保護してきた。
松は買えばいいとして、スイセンは庭に植えてあるのだから直調達できれば一番いい。
手始めに花が終わったら球根のいくつかを掘り出して日だまりに移してみよう。
今年の年末は「もうスイセンが咲いている庭」にしたいと思う。
思い出した…
昔、ブラザース・フォーが「セブンダフォディルス」という曲を歌っていたのを。
あの曲、好きだった。
ほろ苦い記憶ばかりの高校生のころよく聞いた…
you tube で聞き直してみたら、やっぱりいい曲だった♪
(曲を張りつけられれば一番いいんでしょうが、うまくいかないので…悪しからず)
たった1輪だが……庭のスイセンが咲いた♪