平方録

香り立つガーデン

横浜イングリッシュガーデンはバラもコスモスも満開である。

バラが真っ盛りに咲き競っている中の、曲がりくねって伸びている細い園路を進むとほのかな香りが漂ってくる。
秋バラというのは時間をかけて蕾が膨らんで行くので、初夏のシーズンと比べるとひとつ一つの花が大きく咲くのが特徴であるらしい。
だからひときわ華やかに見えるのである。おまけに香りも秋のほうが強い。
ただ、花数は初夏に比べるとやや少ないそうである。

今年限りのコスモスの群落も2度の台風の大風にも耐えて、まさに満開。
こちらも群落の中を伸びる園路を辿ると、ほのかな香りが漂っていることに気づく。
バラと違って一つ一つの花からは特段香りなどは感じないが、たくさんの花が集まると、かくも匂いたつものか。初めての体験である。

スーパーバイザーに就任した河合伸志の努力もあって、ガーデンの充実は目覚ましいものがある。おかげでリニューアルして3年目になるが、2012年度34,618人、13年度65,564人と順調に来園者を増やしてきた。
今年は10月30日の時点ですでに94,000人を超えるお客さんに喜んでもらっているのである。
年度当初の集客見通しは10万人に設定してある。来年3月までにどれだけのお客さんが来てくれることか。

このにぎわう園路の片隅で、地面にひざまずき、習字用と思しき縦長の白い紙を置いて絵を描いている御婦人を見かけた。
バラを水墨画で描いているのである。墨の濃淡だけで表現する水墨画があでやかなバラを題材にするというのはユニークである。
完成まで見ていたわけではないが、ちまちま描き込むのではなく、一輪一輪を大きく大胆に描いていて、好感が持てた。掛け軸にでもするのだろうか。

時雨の予報が出ていたが、結局、夜明け前にパラパラ降っただけで、その後は何とか持ってくれた。3連休が始まるが天候は悪いらしい。来園を楽しみにしてくれている人たちはがっかりだろう。我々とて同じである。
10月は5日の日曜日に台風18号が接近し、6日の朝に掛けて通過して行った。13日の連休最終日には19号と、休日に立て続けに台風に襲われたのである。
バラが雨で傷まないことを祈るのみである。

昨日はメーンイベントがあった。
土地を借りているF社の会長、担当役員、人事総務部長を招き、バラを鑑賞してもらったのである。その後、芝生の上で目刺を焼いてワインを飲む小宴を開いた。会長さんは初めての来園で、見事さに少々びっくりしたようだ。案内したが、経済学部出身の大企業の経営者には見えず、植物の名前や育成に相当な知識を持っていて、こちらはたじたじになるほどであった。

大いに喜んでもらった。花好きの経営トップだったのだ。挙句に港南台にある自宅の庭の手入れまで頼まれた。
これでさらに一層、信頼関係が深まることになれば、こちらとしても嬉しい限りである。

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