平方録

喜びも中くらいなり…

「休肝日」なのか「禁酒」なのか、字面が違うだけで受け取るイメージも随分変わるのだが、ともかく1週間、一滴の酒も口にしなかった。

で、昨日を解禁日としたのだが、朝、ゴミ出しに行く妻が「大変、大変! お酒の瓶が1本もないのよ」とニコニコ顔でいう。
ほぼ例外なくワインを毎日1本空けてきているので、木曜日のビン類回収の日には7本の瓶と、たまにだが日本酒やウイスキーの瓶を加えて出しているのである。
妻に言わせると、こんなに大量の酒瓶を出す家は近所になく、出されている瓶もお酒以外の瓶が多くて「出しに行くのが恥ずかしい」などとのたまう。自分だって楽しんでいるくせにだ。

こういう話を聞くと、世の中の人たちはあまり飲まないのかねぇと不思議に思うのだ。
盛り場の焼き鳥屋や居酒屋などの飲食店はどこでもにぎわっているんだが、外では飲むが家では飲まないというルールでも作ってるんだろうか。
ボクの場合は頻度は少ないけれど、外でも飲むし家でも飲む。友人にも下戸はいないし、周りは酒の匂いであふれているんですけどねぇ。

毎日のことなので現役引退以降、妻の強権発動があって1本300円台の安ワインに切り替えられてしまったが、捨てる神あれば拾う神あり?で、最近出回っているチリワインなどの中には、そこそこ飲めるものもあって、ささやかな妻との晩酌を支えてもらっているんである。
だからたまに500円超のワインがテーブルに乗ると「おっ、今日は豪勢じゃん!」という気分に浸るのだから、人間というものはある意味で、とてもたくましく、かつ、いじましい動物なんである。
自分で稼いでためたお金で安ワインを楽しんでいるんである。何をはばかることがあるものか。

その妻も下の娘のところに泊りがけで出かけてしまい、1人寂しく解禁明けのアルコールを口にしたのだが、4時ごろからテレビで相撲を見るついでに缶ビールを飲んだところ、これがとってもおいしく感じられた。
普段はめったにビールは口にしないが、炬燵にビールというこういうシチュエーションが良かったのか、その伝で行けば炬燵にミカンだろうが、酒飲みにはアルコールなんですな。とにかく、おっ!と感じられるほどにおいしかった。

晩ご飯に何かワインのつまみになるようなものをと考えたのだが、前夜残ったひと口カツがあったので、そうだ、カツ丼を作ろう!という気になった。
ネットで作り方を調べ、妻が書いて置いてくれたメモを参考に自分流にアレンジして完成した自作第1号カツ丼は甘さ控えめながら、「自作」という手前ミソの味が加わって、つまみというより、飢えた若い男のように、赤銅色の肌を持った労働者のように、わしわしとどんぶりに食らいつくほどのカツ丼らしいカツ丼であった。
カツ丼はおちょぼ口で食べるような真似をしてはいけないんである。
大口を開けてわしわしとかっこむ食べ物なのだ。

もう1品は妻が作り置きしていってくれた好物の「白いサラダ」。
中身はレンコン、カブ、ジャガイモ、タマネギ、カリフラワー、リンゴに真っ白なカッテージチーズをまぶしたものである。歯ごたえと歯触りがとてもヨロシイんである。
これが赤ワインにぴったりのサラダで、このサラダとおいしいフランスパンがあれば、もう大満足。他には何もいらない。
全体に真っ白なサラダの中でリンゴの皮がちらっと赤く、ワインがもっと赤く、見た目にとてもきれいなのもうれしいのだ。

中身を見ればわかるように、このサラダは概ね冬のもので、季節限定の味でもある。
フランスパンの代わりにカツ丼をわしわし食べたせいか、1人飲みの侘しさからか、飲む量もはかばかしくなく、1週間ぶりのワインの感激はちょっぴり物足りなかったのが残念と言えば残念である。
今更だけど、世の中はなかなか思うようには運ばないものなんである。



わが人生第1号手作りカツ丼と白いサラダ。鍋からどんぶりのご飯の上に移す際にぐちゃぐちゃになってしまって、見てくれが悪くなってしまったが、わしわしと食いあっという間に胃袋に消えてしまった
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