1日中強い雨が降るーという予報が出ていた。
梅雨だからしょうがないが、3日も雨に降りこめられると体にカビが生えかねない。
濡れずに、しかも手っ取り早い気分転換法はと考えて電車に揺られることにした。
窓の外を眺めながらちびりちびり飲るにはボックス席かグリーン車を連結した電車に限る。
とすれば横須賀線か東海道線。
大都会や内陸より海の見える景色がいい…
となると東海道線で熱海か伊東までは直通運転がある。
藤沢駅までバスで出て11:46発の熱海行に乗る。
15両編成の14号車はがら空きで、熱海で降りた乗客はボクを含めて3人。
ボクより先にホームに降りたおあばちゃんがキョロキョロ何かを探している。
どうも熱海より先に行く電車を探しているみたいだった。
ちょうど島田行きが発車間際で、駅のアナウンスも「乗り換えは急いでください」と言っている。
見ると腰の曲がりかけたそのおばあちゃんが必死の形相で歩いている。
そう思ったのは間違いで、歩いているのではなくて走っているのだが、はた目には歩いているとしか思えない速度なのだ。
14号車はホームの端っこに停まり、島田行きはたったの3両編成だからホームの真ん中にちょこんと停まっている。
おばあちゃんには遠すぎるのだ。
車掌の指先は既にドアの開閉ボタンにかかっている。
時計をじっと眺めながら、まさに指先に力を入れようかという瞬間だったろう。
そのおばあちゃんに聞いてみた。
「あの電車に乗りたいんですか? 」
すると地獄で仏に会ったような、ほっとした顔になって頷いたのだ。
電車までの距離はまだ30メートルは残っている。ほっとするのはまだ早い。
多分このままではドアは閉まってしまうだろうと思った。
「お~い、車掌さぁ~ん、このおばあちゃん乗りたいんだってぇ~」と大声を出してみた。
すると車掌がこちらを振り向き、開閉ボタンから指を離すのが見えた。
その後は知らない。
考えて見れば20~30分に1本は西に向かう電車が出ている。
少し待てばいいだけだ。それを余計なことをしてしまった。
思いがけない展開になってしまったので、トイレで用を足して身震いした後、改札を出て予定していなかった散策に出た。
ホームで突如大声を上げるなんて、内気で人見知りのボクにはあり得ない行為なのだ。
人は振り向くし、見世もんじゃァね~ぞって気分なのだ。赤面の至りだ。
ホームの立ち食いソバでもすすって、直ぐ上り電車に乗って戻ろうと思っていたのだが、これ以上ホームにいるのもはばかれると思った。
句会も近づいているし、電車に揺られながらいくつかひねろうと思って家を出てきたのだった…
予定は未定であって変更されるために立てられる。
そんなことわざなかったっけ。
どんよりした梅雨空の下、根府川駅を出るとすぐ白糸川橋梁を渡る。強風が吹くと電車が危険なための防風柵が設けられたので見晴らしが悪くなった
窓の外はこんな色調
熱海駅前の商店街はこんなににぎわっていた
高度経済成長期の大賑わいから一転、一時は閑古鳥が鳴いていた温泉場だが、最近また復活の兆しが見えて、今また新たな投資が活発になってホテルの新築ラッシュだそうだ
路地が好きなので選んで歩いていくと急階段が現れる
急階段と急坂を下り切った先の海岸に建つ御馴染み「キンイロヨマタ」の貫一お宮像。
某新聞社の入社試験問題で出された漢字読み取り問題の珍答の一つは「金色夜叉」の紅葉センセイもビックリ !
列車に揺られている間は雨だったが、熱海の改札口を出ると傘は邪魔になった
海岸沿いの街路樹にはジャカランダが植えられていて紫がかった青い花が印象的
海岸からすぐの商店街でぶらっと入った「熱海餃子」の店。創業1929年だそうで、これが羽根付き餃子で美味しかった。ニンニクが入っていないの?と聞くとすりおろしたニンニクをどっさり持ってきてくれた。
ビールにするかホッピーにするか迷ったが、度数調節のできるホッピーに ♪
店内は色紙がべたべた
午後2時近くまで混んでいた
さすがは温泉場。繁華街の一角にもこういう店が。女性おひとり様でもお気軽にどうぞと書かれているけれど…
こっちは子連れでも
「大湯」の間欠泉。かつては世界有数の間欠泉だったそうだが、今は枯れて人工的に再現している。かつてイギリスの初代総領事オルコックが愛犬を連れて散歩中、間欠泉の熱湯を浴びた愛犬が大やけどを負って死んでしまったんだとか
直ぐ近くに日帰り温泉施設があり、露天風呂に浸ってきた
柔らかないい湯だった
効能はかくのごときだが遅かったようだ
人気のない路地を選んで歩く
少し坂道になっているからか、左のビルは6階建てで右は5階。左の天井は低そうだね
急傾斜の街は交差点の歩道が危なっかしい。酔っぱらっては歩けないな