私の暮らしている街は東京から真南に下った海辺の町だが、古都の玄関駅から4キロ、湘南の玄関駅から4キロ、交通の要衝にして、かつて撮影所で栄えた街の駅からも4キロという、絶妙な場所にある。
歩くとどこに出るにも1時間もかかるじゃないかと言われればそれまでだが、ものは考えようで、1里歩きさえすれば岡蒸気に乗れる。どの駅とも等距離なのである。
しかも、3つの拠点ともに街の性格がはっきり異なっているから、それはそれで好都合で、気分や目的に合わせて3通りの楽しみ、利用の仕方があるというべきなのだ。
40年近く、通勤にはJR3線とモノレールが集まる交通の要衝を利用してきたおかげで、事故などで路線の1つが止まってしまっても、他の動いている線を使えば、何とかなるくらいの便利さを備えていたのである。
古都の玄関は説明不要だろう。
湘南の玄関には江ノ電と小田急線が乗り入れていて、駅前にはハイセンスというわけにはいかなくなってきてしまったが、1つ閉店してしまったもののデパートがまだ2つ、家電を中心にした大型量販店が1つと大型スーパーが3つ、そして大型の本屋が2つあり、それらを取り巻くようにさまざまな店が軒を並べている。
健康志向にも訴えていて、スイミングクラブを含めたスポーツ施設が知っている限りで4つもあるのも特徴である。
さて交通の要衝にして撮影所で栄えた街には、撮影所の後に女子大が移転してきたし、隣にはバブリーな「芸術館」という名の立派な施設が出来て、街の様子はだいぶ変わってしまった。
それでも寅さんが好んで出前を取ったラーメン屋とか、あまたの監督たちが贔屓にした洋食屋などが今も健在である。
そして駅前には人々の暮らしを支え、胃袋を満たすさまざまな食料品をとびきり安く売る店が密集する市場のような一画があり、ここには午前中から大勢の買い物客が集まって活気づいている実に庶民的で、しかも整然と言う語の真逆のような街でもある。
日が暮れかかれば明かりを灯す店が、それこそ軒を並べ肩を寄せ合うように並んでいるのも、ありがたくも親しみのもてる街なのである。
しかし、現役時代にこの駅を通過するのは深夜ばかりで、多くの店は店じまいの時間だったり、もっと遅い時間にタクシーで通りかかるだけの、芝居の書割のような存在だったのだ。
この魅力的な街をいつか徹底的に探訪してやろうと思っている。
雨の上がった昨日の午後、運動と復習を兼ねてつい最近発見したばかりの江ノ島古道を辿り、1時間弱歩いて「偵察」に行ってきた。
古くからある店のいくつかは閉店してしまったものもあるようだが、その代わりイタリアンやら、沖縄料理やら、無国籍を標榜する店やら、新しくて、しかも魅力的な店がいくつもできている。
最近、この街だけにスポットを当てたグルメ本が本屋の店頭に並ぶ時代である。さもあらん、の活況なのだ。
一番にぎわっている100メートル四方のエリアだけだが、路地裏まで入り込んでつぶさに見てきたが、こじんまりしたレストランから赤ちょうちんまで、魅力的な店が並んでいるものである。
午後4時。歩いてきたし、街を歩き回ったので喉が渇き、挨拶がてら喉でも潤そうかと思ったのだが、土曜日ゆえか立ち飲み屋はどこも満員で、カウンターに隙間もないのであきらめたが、驚きである。
そう言えば古都の玄関にある観光客がけして寄りつかない、2階の奥まったところにある地元の人だけの立ち飲み屋も4時前から、平日でも混み合っている。
ここら辺りは立ち飲み文化なのかね。しかも明るいうちから…。新たな発見である。
“アル中”ール・ランボーたちの暮らす街なのであろうか。
雑居ビルの細い通路の奥に掲げられた看板。夜はキーマカレ―のルゥで一杯どうか、と誘っている。気になる店である。
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