今から半世紀ほど前、垂水という神戸の西端にある街の大学に僕は通っていた。今は母校の名前も変わり学園都市に移転してしまったが、この垂水ってのは昼間遊ぶには不適な街だった。僕は麻雀をやらないため、学生でも行ける安い寿司屋かパチンコ屋くらいしか行き場がなかった。大人もそうだったらしくパチンコ屋で小説家の筒井康隆氏を何度か見掛けた覚えがある。
となると三宮や元町で通学定期の特権、途中下車が増える(笑)。最初は授業が終わってからだったのが、1時限目を取らない日などは行く前に降りることも。たまにやったのが、焼き立ての食パンを買うこと。NHKの連続テレビドラマ「風見鶏」のモデルになったフロインドリーブは当時、店で食パンを焼いており9時?頃に行くと焼き立てのホカホカが買えた。(今は工場で焼いているので冷ましてから運ばれてくる)
外はパリッとしてるのに中はケーキみたいで、めっちゃくちゃ美味しい。これをゼミの研究室に持ち込んだ。ちょっと普通の食パンより小ぶりだったが1本(3斤)で確か400円だった覚えがある。先生より女性の先輩がこれを気に入り、何度か買って行った。
先日、卒業して40余年ぶりにゼミの同窓会が開かれ、先生や先輩友人たちと会うことが出来た。パンの話になると『あんたに甘えて、ええ迷惑やったやろ』と言われたが、こっちも食うしそんな気は全くなかった。先日その先輩から若狭の干物が大量に届く。『あの時のお礼』だそうだ。食パンで大量の干物を釣った(笑)。食べ切れずに痛ませたら申し訳ないので、一部を冷凍にしたくらいだ。
コロナ騒ぎで蟄居を強いられ、暇つぶしに料理を作ったのはいいがそのせいでちょっとウエイトが(笑)。しばらく干物中心の和食に変更したが、これが美味く、有名な若狭ガレイは撮影前に食ってしまう。で、定番のアジになめこの味噌汁。
最初、色白のメヒカリと思ったがニギスというらしい。初めて食ったが骨ごと食えてメザシよりもジューシー。ビールの当てにも良い。これを誰かに上げてさらに高価値なものをもらえばわらしべ長者になるが、そんなもったいないことが出来るかと一人で食らう。僕にはワラ長者あたりが丁度いい。