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とんかつの扇を惜しむ

入る前から嫌な予感はしていたのだ。薄切り肉を重ねたミルクレープみたいなカツが名物だという。しかも店名の前に銀座の文字がある。ここは吉祥寺だぜ。もっと直球で勝負しろよ。バントもなってない。つまみの茶豆を頼んだら指で潰せる柔らかさだった。ぶどう豆(正月の黒豆)なら辻嘉一氏が褒めてくれるだろうが、ビールにはもっと歯応えが欲しい。

ヒレカツが出てきた。一口カツを削ぎ切りにしてある。まい泉なら3個分って所だし、要らん事をするから冷えきっている。ご飯はよく炊けているものの、小鉢のようなお櫃に入れて持ってきた。茶碗に盛ると一膳飯に、こんな量なら最初から茶碗に盛って来いよ。しかもお代わりをしたら250円(笑)くれると言うスタンプカードは丁寧に断る。二度と来るかっちゅうねん。

吉祥寺でとんかつと言えば『扇』に決めていた。ヒレ、ロースは勿論、カニクリームコロッケでも雑誌に取り上げられていた店だったが、冬に出るカキフライが最高だった。なにせ自分で金を出してカキフライを食べたことのないぼーずが食べるようになったのだもの。あ、それまで食い逃げしてきた訳ではないからね。さして美味いと思わなかったので店で注文したことがなかったのだ。

カキフライのソースが独特だった。親父と顔見知りになってからレシピを尋ねた事があったが、ウスターをベースに昆布を使うのだと丁寧に教えてくれた。親父は雑学の塊のような人で話をしても飽きる事がなかった。家のとんかつとの違いは油の温度管理だけとも言っていたが腕に自信があるから教えられるのだろう。素人の場合2種類の鍋を使って高温と低温に分け、最初は高温で周りを固め、次に低温でじっくり火を通し、最後にもう一度高温で仕上げるとカリッと揚がる。そう教えてくれたのだ。

とんかつソースやドレッシングも自分でブレンドしていたが、漬物にも手を抜かない。自家製の糠漬けなのだが、これが鉢に一杯付いていた。とんかつが出来上がるまでこいつでビールを飲む常連客が多かったが、単品で頼めば450円。量の多さは想像が付くだろう。

千切りキャベツの量は半端ではなく追加する気も起きない程。また、常連のご飯の底にはそっと生卵を割り入れてくれるサービスが親父の心意気だった。目の前で常連と差を付けられるのは余り愉快ではない。目立たないようにしていたのだと思う。

たまたま客の少ない時に入ったら『うちのカキフライは生で食べられるカキ使ってんだよ』と言って酢牡蛎で食べさせてくれたこともあった。ある時、医者から揚げ物を控えろと言われ暫く行かなかったので、たまにはいいだろうと久しぶりに行った。なんと扇があった所は・・・Tシャツ屋に変わっていた。

止める前、もう一度親父の話を肴にビールが飲みたかった。それ以来吉祥寺でとんかつを食べ無くなって久しい。そのまま食べなければよかったのだろうが。ところで親父は元気にしてるのかなぁ。

※店が無くなって直ぐに探したけどと思いながら、もう一度検索をかけると・・レレ2008年で扇の記事が(笑)。なんと場所を変えて店を出していた。親父、待っとれよ。メタボのぼーずが行くぞ。
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