第7章 パブリック・コメント?
厚生年金基金は、制度発足30年を経過し、日本の社会・経済構造のきしみの典型になったと言えるのではないでしょうか。というのも、超少子・超高齢化のインパクト、国の統制・計画経済方式による立法・司法・行政の疑義多発、政府の金融・財政政策の行き詰まり、金融制度の後進性露呈、社会保障の機能頓挫、企業活動のグローバル化に伴う企業会計制度等の構造改革、官離れを始めた国民意識の刷新等々、諸々のきしみが総じて基金問題に噴き上がってきているからである。
他方で、基金制度そのものは30年もの間に、行政サイドの法令・通知・指導という体系に全面的にからめ取られ、気がついてみれば「死に体」となっていたのである。
この間、基金の現場では様々な場面、例えば免除料率の改訂、給付改善、業務の機械化、代議員会等の運営、福祉施設事業の展開等々の場面で行政サイドとの折衝経験は蓄積されてきたが、行政判断のブラックボックスは透明化されず、この辺り、あの線まで、こういう組み合わせであれば等という疑義申立ての類推・想定のレベルでしか行政を動かし得ず、事務局レベルで多少の業務改善(代行型から加算型への移行、業務委託Ⅱ型からⅠA型への移行、退職金の基金への一部移行、数理業務の指定法人化、総幹事離れの達成等)は行えたものの、大半は社会保険行政の中に取り押さえられたままなのが実態であった。
一方、厚生省の審議会方式や厚生年金基金連合会等の委員会組織を通じての熱心・執拗な改善申立て、要望書の上申等の方式で実現されたものは、業務とか事務レベルの問題であり、どちらかというと現実との妥協に終始する事柄が大半で、そもそもの前提を廃棄するような抜本的な制度改革の進展がないまま推移してきてしまったのも事実である。そのほかに、圧力団体陳情方式や政治献金方式、接待攻勢方式等、様々な方式が試されてきたのがこの30年の経験である。
しかし、問題の中核をなす裁量行政そのものの妥当性はあらゆる場面を通じて間接的に再々問題にされてはいたが、直接問い質されることがなかったのも事実であろう。それが、社会・経済のきしみの高まりにつれて誰の目にも裁量行政の機能不全が明らかになってきたのである。数年前より厚生省も自ら<裁量行政から事後監視型行政>への転換を表明しつつあるようである。こういう動きは、厚生省のみのことではなく、総務庁を始め大蔵省、通産省等にもみられる行政サイドの一般的な現象となってきたようである。
この事後監視型行政の一つの手法として、最近「パブリック・コメント」(規制の設定又は改廃に係る意見提出手続き)ということが言われ始めてきた。裁量のブラックボックスに委ねられていた行政手法の透明性確保の一手段として、平成11年の3月に閣議決定され制度化されたばかりである。基金の世界では未だ馴染の言葉とはなっていないようであるが、民間活力を旨として導入された基金制度がいつの間にか<裁量行政>の典型で<死に体>になっている世界で、日々呻吟されている基金の皆さんにこそ関心を持って頂きたいものである。
実は筆者も「パブリック・コメント」を全く承知していなかったが、連合会の受託者責任研究会ワーキンググループに参加させて頂き、そこで始めて知ったという訳です。
現在このワーキンググループでは3班に分かれて「資産運用機関の受託者責任」について鋭意研究中であり、近々そのとりまとめ(案)について「パブリック・コメント」を求める段階にきています。是非、皆さんのご意見を反映させて頂きたいものです。
30年もの基金の<裁量行政>の経験にとって「パブリック・コメント」という手法は、目を見開かせるような事態の進展であり、隔世の感を禁じえません。この起爆剤が必ずや、関係諸事項を巻き込みパブリック、公衆、民意反映の潮流を作り出して、新しい世紀において基金制度を再生させる一つになるものと考えています。
【資料】
・「ジュリスト」1999.7.1号「特集・規制に係る意見提出(パブリック・コメント)手続き」
・通商産業省・電気事業審議会第6回基本政策部会・専門委員会議事録(平成10年11月25日) (www.miti.go.jp/reportーj/g81125of. Html)
・通商産業省・電気事業審議会第15回基本政策部会・第34回料金制度部会合同部会議事録(平成11年1月21日)「議題パブリック・コメントの紹介について」
(www.miti.go.jp/reportーj/g90121aj.html)
・総務庁ホームページ(www.somucho.go.jp/soumu/)「各省庁における「規制の制定又は改廃に係る意見提出手続(パブリック・コメント)」実施状況
・大蔵省ホームページ(www.mof.go.jp/)「意見提出手続(パブリック・コメント)実施一覧」
・厚生省ホームページ(www.mhw.go.jp/)
・厚生年金基金連合会ホームページ(www.pfa.or.jp/)
出所:単独連合厚生年金基金協議会 冊子「たん・れん」2000/1号掲載記事
厚生年金基金は、制度発足30年を経過し、日本の社会・経済構造のきしみの典型になったと言えるのではないでしょうか。というのも、超少子・超高齢化のインパクト、国の統制・計画経済方式による立法・司法・行政の疑義多発、政府の金融・財政政策の行き詰まり、金融制度の後進性露呈、社会保障の機能頓挫、企業活動のグローバル化に伴う企業会計制度等の構造改革、官離れを始めた国民意識の刷新等々、諸々のきしみが総じて基金問題に噴き上がってきているからである。
他方で、基金制度そのものは30年もの間に、行政サイドの法令・通知・指導という体系に全面的にからめ取られ、気がついてみれば「死に体」となっていたのである。
この間、基金の現場では様々な場面、例えば免除料率の改訂、給付改善、業務の機械化、代議員会等の運営、福祉施設事業の展開等々の場面で行政サイドとの折衝経験は蓄積されてきたが、行政判断のブラックボックスは透明化されず、この辺り、あの線まで、こういう組み合わせであれば等という疑義申立ての類推・想定のレベルでしか行政を動かし得ず、事務局レベルで多少の業務改善(代行型から加算型への移行、業務委託Ⅱ型からⅠA型への移行、退職金の基金への一部移行、数理業務の指定法人化、総幹事離れの達成等)は行えたものの、大半は社会保険行政の中に取り押さえられたままなのが実態であった。
一方、厚生省の審議会方式や厚生年金基金連合会等の委員会組織を通じての熱心・執拗な改善申立て、要望書の上申等の方式で実現されたものは、業務とか事務レベルの問題であり、どちらかというと現実との妥協に終始する事柄が大半で、そもそもの前提を廃棄するような抜本的な制度改革の進展がないまま推移してきてしまったのも事実である。そのほかに、圧力団体陳情方式や政治献金方式、接待攻勢方式等、様々な方式が試されてきたのがこの30年の経験である。
しかし、問題の中核をなす裁量行政そのものの妥当性はあらゆる場面を通じて間接的に再々問題にされてはいたが、直接問い質されることがなかったのも事実であろう。それが、社会・経済のきしみの高まりにつれて誰の目にも裁量行政の機能不全が明らかになってきたのである。数年前より厚生省も自ら<裁量行政から事後監視型行政>への転換を表明しつつあるようである。こういう動きは、厚生省のみのことではなく、総務庁を始め大蔵省、通産省等にもみられる行政サイドの一般的な現象となってきたようである。
この事後監視型行政の一つの手法として、最近「パブリック・コメント」(規制の設定又は改廃に係る意見提出手続き)ということが言われ始めてきた。裁量のブラックボックスに委ねられていた行政手法の透明性確保の一手段として、平成11年の3月に閣議決定され制度化されたばかりである。基金の世界では未だ馴染の言葉とはなっていないようであるが、民間活力を旨として導入された基金制度がいつの間にか<裁量行政>の典型で<死に体>になっている世界で、日々呻吟されている基金の皆さんにこそ関心を持って頂きたいものである。
実は筆者も「パブリック・コメント」を全く承知していなかったが、連合会の受託者責任研究会ワーキンググループに参加させて頂き、そこで始めて知ったという訳です。
現在このワーキンググループでは3班に分かれて「資産運用機関の受託者責任」について鋭意研究中であり、近々そのとりまとめ(案)について「パブリック・コメント」を求める段階にきています。是非、皆さんのご意見を反映させて頂きたいものです。
30年もの基金の<裁量行政>の経験にとって「パブリック・コメント」という手法は、目を見開かせるような事態の進展であり、隔世の感を禁じえません。この起爆剤が必ずや、関係諸事項を巻き込みパブリック、公衆、民意反映の潮流を作り出して、新しい世紀において基金制度を再生させる一つになるものと考えています。
【資料】
・「ジュリスト」1999.7.1号「特集・規制に係る意見提出(パブリック・コメント)手続き」
・通商産業省・電気事業審議会第6回基本政策部会・専門委員会議事録(平成10年11月25日) (www.miti.go.jp/reportーj/g81125of. Html)
・通商産業省・電気事業審議会第15回基本政策部会・第34回料金制度部会合同部会議事録(平成11年1月21日)「議題パブリック・コメントの紹介について」
(www.miti.go.jp/reportーj/g90121aj.html)
・総務庁ホームページ(www.somucho.go.jp/soumu/)「各省庁における「規制の制定又は改廃に係る意見提出手続(パブリック・コメント)」実施状況
・大蔵省ホームページ(www.mof.go.jp/)「意見提出手続(パブリック・コメント)実施一覧」
・厚生省ホームページ(www.mhw.go.jp/)
・厚生年金基金連合会ホームページ(www.pfa.or.jp/)
出所:単独連合厚生年金基金協議会 冊子「たん・れん」2000/1号掲載記事
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