先週の月曜日は労働法における「労働者」のお話をしました。今日は「使用者」についてお話しさせていただきます。
定義は、ご多分に漏れず、法律によって異なります。
労働契約法(労契法)では「使用する労働者に対して賃金を支払う者」としています。個人企業の場合は企業主個人、法人組織の場合は法人そのものとなります。
一方、労働基準法(労基法)では「事業主又は事業の経営担当者その他その事業の労働者に関する事項について、事業主のために行為をするすべての者」としています。労契法の使用者は労基法の事業主に該当し、労基法の使用者は労契法のものより概念が広いことになります(実際は労契法のほうがあとに施行されていますので、「労契法の使用者は労基法のものより概念が狭い」と言った方が正解です)。
行政通達では、「労基法各条で定められた義務を履行する責任者が使用者であり、部長や課長などの名称にとらわれることなく、実質的に一定の権限を与えられているかどうかによる」としています。〇〇課長という肩書があっても、単に上司の命令の伝達者にすぎなければ使用者とはみなされないわけです。
また、多くの企業の使用者は労働者の性質も有します。例えば課長は部下である一般社員に対する使用者となりますが、上司である部長に対しては労働者となります。上司がいる役職者である限り、使用者でもあり労働者でもあるわけです。
使用者と労働者が同一の事業主に雇われているとき、問題になることは少ないでしょう。元請と下請、親会社と子会社のように事業主が異なるときに使用者性の有無が争われることがあります。
例えば、親会社が子会社の組合つぶしのために子会社を解散させたことにより子会社の労働者が解雇されたとき、実質的に親会社が当該労働者の使用者としての責任を負う、とされた判例があります。使用者責任があるということは労基法上の義務が課せられる、逆に言えば子会社の労働者だった者は労基法上の権利を親会社に請求できる、というわけです。
いろいろな会社の労働者が混在している職場では、この点にも注意しましょう。