みなさん、こんばんは。hkです。
先日、各紙で「コロナ労災による事業者の負担方法を見直す」旨の記事が掲載されていました。
労働者災害補償保険(労災保険)の保険料は、事業者が全額負担します。業種ごとに保険率が決められていますが、過去3年間の業務上の事故に対する保険給付額により、翌年の保険率を±40%増減させるのです。
業務上の事故が全くなかったら保険給付もなかったことになりますので、このような事業者には保険料を安くしてあげます。逆に、業務上の事故があったら保険給付もあった、場合によっては支払っていた保険料より保険給付額の方が多かったこともありますので、こちらは保険料を多くとることにします。
もし、コロナ労災を理由に保険料を高くしたら、医療や介護などの関係者にとっては「泣きっ面に蜂」状態となってしまいます。そこで、コロナ労災は保険料の増減の対象から外すことが検討されるようになったわけです。
ところで、そもそも労災保険とはどのようなものでしょうか。知っている方も多いと思いますが、労働者の業務上または通勤によるけがや病気、障害、死亡などに対して必要な補償がされるものです。
ときどき問題になるのは、けがや病気、障害、死亡などが業務上や通勤によるものなのかどうか、という点です。
業務上の場合、専門用語では「業務遂行性と業務起因性」、簡単にいえば「仕事中に、仕事が原因でけがや病気などになったのか」が問われます。通勤によるものの場合は「通勤途上に、通勤が原因」かどうかですね。
いくつか例をあげます。
休憩時間は一般的に労働時間とはされません。しかし、作業時間中に労働者が水を飲んだりトイレに行ったりしたときなどの作業中断中にけがをしたときは、業務上とされています。
仕事中でも天変地異によるけがは、一般的に労災保険の対象とはされません。業務とは関係ないからです。しかし、ときどき爆発が起きる火山上に設置されているロープウエイの補強工事中に突然火山が爆発し、隕石が落下して作業員が死亡したケースでは業務上とされました。「ときどき爆発」する、つまり通常よりは災害を被りやすい状況で働いていたからですね。
「通勤途上」の要件の一つは「住居と就業場所との間の往復」かどうかです。例えば、アパートの共同階段上でけがをした場合は通勤途上になります。アパートの玄関を出たら就業場所との間になるからです。一方、一戸建ての玄関から門扉の間でけがをしても通勤途上にはありません。門扉までは住居と就業場所との間にはならないからです。
犯罪による被害も、一般的には労災保険の対象とはなりません。しかし、大都市周辺の寂しいところに居住している女性労働者が、夜間の帰宅中にひったくりにあってけがをしたときは、通勤災害とされました。暗い道で女性がひったくりにあうことは一般にあり得ることであり、通勤に通常伴う危険が具体化したと認められたからです。
「労務行刑研究所編『労働法全書』労務行政発行」には、保険給付の対象になるかどうかに関するいろいろな行政通達や判例が掲載されています。興味がある方はご覧になってみてはいかがでしょうか。
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