銀輪の巨人 Giantに学ぶ

雨が降ったおかげか涼しくなり一気に過ごしやすくなりました。

	銀輪の巨人
	クリエーター情報なし
	東洋経済新報社

いまや世界一のメーカーとなった台湾のGiant。その歴史を解き明かした本です。最近は環境意識の高まりもあり自転車の人気が高まっていますがそれにしても大手の日本の自転車メーカーというのはいつの間にかほとんどいわゆるママチャリしか作らないようになってしまいました。自動車が世界でまだ存在感を示しているのとは対照的です。もちろん日本は自転車競技の風土があまりないということもあるのかとは思いますが日本とそこまで変わらないであろう台湾のメーカー(GiantだけでなくMeridaも)がツールドフランスをはじめとする世界のトップクラスの機材として利用されているのとは対照的です。日本でも自動車は一大産業であったはずですが1990年代の後半にかけてのこと。この自動車産業の現状は今の電機業界の苦境とも近いものがあるのかもしれません。台湾の自転車産業はOEMとして力を伸ばして自社のブランドを背伸びして売ることでより付加価値の高い製品にシフトして利幅を確保。それをツールドフランス等の競技トップの現場へのサポートとフィードバックでの成長という良い循環を繰り返してきたように思います。特に台湾は変に国内での市場は無く、主に輸出に目が向いているということもあるのかと思いますが。
　逆に日本は今までの中低価格帯の自転車を中心にという戦略は変わらず結局、生産の中心が新興国に移った今、まったく太刀打ちできていないのが現状です。Giantが成功したのは今まで競技者のものに過ぎなかった高付加価値の市場を時間がかかっても作るという一貫した戦略が見事に当たったということがあるのかと。かたや欧米のメーカーは日本のメーカーを尻目にすでに高付加価値の自転車のみの　これとなんか似ているのが日本の電機産業です。　結局、戦い方を換えられず価格競争という消耗戦になって体力切れを起こすという流れ。今年は衝撃的な赤字のニュースがありました。日本でも市場を生み出したものが出ていないわけではありません。古くはウオークマン、最近ではハイブリッド自動車など。　ただAppleのようなパラダイムシフトは残念ながらハード面ではまだまだ少ないのが現状です。
業績が苦しくなるとどうしても先行投資が薄くなり、長期的な戦略も無いという悪循環に陥ってしまうのが苦しいところ。
決してIdeaや思想で他の国に劣っているわけではないと思います。あとは見極める洞察力と一歩を前に踏み出す実行力さえ備えられれば良いのですが・・・　

かく言う私もGiantの自転車を使ってました。ロード界に革命を起こしたスローピングフレームを用いたTCRシリーズの2年目の作品です(1999年モデル?)。確かこの年からツールドフランスに参戦するスペインのONCE　Deutche Bankチームに機材を提供。ゆるぎない地位を手にしたきっかけを掴んだ時期だったかと思います。
このフレームとは苦楽を共にしました。写真はIRONMAN　HAWAII出場時です。