予測不能の時代: データが明かす新たな生き方、企業、そして幸せ 単行本 –矢野 和男 (著)
人間の根本にある幸せを得るためにデータ分析で何ができるかという可能性を記した本です。久しぶりに非常に感銘受けた内容でした。
データやAIで未来が見通せるようになるというのは一種の幻想であり、あくまで過去の中からパターンや法則を見出しているにすぎません。結局のところ未来というのは予測しがたいものであり、予測できない環境の中では変化に対して柔軟に対応していくというのがベスト。ですが実際のところ多くの企業がリスク管理の観点で重視されている4つの要素(計画とPCDA、標準化と横展開、内部統制、人をコストと見る考え方) はその変化対応に対してはマイナスの要素になってしまっているという皮肉さがあります。むしろPPP(Predict-Perceive-Prioritize)サイクルを回すべきとのこと。
筆者はその変化に対して立ち向かえるのは「幸せ」であるとの主張。幸せというのは「状態」であるようにとらえがちなのですがこの本を読むと「行為」で生み出され、変化を機会に変えるものだということがわかります。 筆者が開発したウエラブルデバイスを用いて人間行動センシングを実施した壮大な実験データを基に示されています。
幸せな職場は①人間関係がフラット、②即興的に5-10分の会話が行われている(長い会議は少ない)、③非言語的(会話中に体が良く動く)、④平等(発言権が平等である)特につながりというのは横のつながりが多い職場がよさそうで上司とだけしかつながっていないのは良くなさそうです。やはり階層はなるべく作らないほうがベストというのとボランチみたいなポジションをまたいで好きなように動ける風通しの良さというのも重要なのでしょう。
これまたすごいと思ったのが最後の方に幸せの16局面という形で2項対立になる幸せの視点をまとめた表があり、それぞれの項目に対していかに「楽観的」に考えるのかという視点で筆者の解釈が解説されていること。筆者は10年間この考え方のトレーニングを実施してきたと言います。そして筆者も過去は半導体技術者でした。そういった面でいろいろと共感を覚えることが多かったのとその分野からの大転換を図り(原点に立ち返り)幸せ学を構築したことにすごさを感じます。
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