思い出せない脳 (講談社現代新書) 澤田誠 (著)
もっと記憶力があれば・・・と思ったことがある人は少なくないとは思いますがそんなもどかしい記憶の秘密を明かした本です。ある意味不確かな記憶になっていることが人間らしさを作っているわけでうまく特性を使って使いこなすことが重要だと教えてくれる本です。
人工のメモリと脳の記憶というのはかなり異なり個別に分かれた部屋の電子の出し入れでなく神経細胞間のネットワーク(組み合わせ)で記憶する仕組みという点で大きな違いがあることが記されています。こういった仕組みがあるからこそ人間に記憶は不確かなところがあり、ネットワークがつながらずうまく引き出せなかったり、余分なものはすぐ整理されてしまったり、干渉しあって思い出せなかったりしてしまうことが記されています。
記憶には暗記に近い意味記憶と手続き記憶、エピソード記憶などの分類があるわけですが人工的な記憶は最も意味記憶に近いもので人間としては苦手とするものです。一方で体が連携したり情緒が関係するエピソード記憶は人間固有でありながらある意味、人間の脳の仕組みだからこそ強化されている記憶だと言えるのでしょう。この本でも指摘されているように意味記憶はなるべく情動やエピソードと組み合わせることでネットワークが強化され引き出しされやすくなることが指摘されています(良く暗記法で使われるものですが)
ネット検索や生成系AIが台頭する中で検索という外部記憶があるのであれば記憶の重要性が下がるのではとも思われがちですが検索すればわかるというのと地となり肉となってその場で引き出せるというのはかなり異なると思います。こういった脳の仕組みも踏まえて何かの創造というのは引き出してきたものの組み合わせで生成されるものが多いのでAIにない発想が出来るという観点ではますますすぐに引き出せる記憶の引き出しがあるのかというのが重要になってくるように感じました。
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