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千里の道も一歩から

日本式経営で創る価値創造の民主化

2024-01-13 22:17:47 | Books
 

日本企業はなぜ「強み」を捨てるのか~増補改訂版『日本“式”経営の逆襲』~ (光文社新書) 

岩尾 俊兵 (著)

 日本型の経営に対して改めて脚光を当ててヒト重視の経営、本当の強みの見極めと見直しを勧めている本です。この本の目的はあくまで問題点の指摘と警報であるのでこの本自体に解があるわけではない(筆者もその点は弱点だと言っていますが)のですが何が強みだったのかというのを認識するには重要な指摘がされているように思います。著者は東大初の経営学博士取得された方でちょうど自分の10歳年下で平成生まれだそうです。アマゾンがカイゼン手法を使って成長したというのは聞いていたのでうまくパーツとしては生かしているのかとは思っていたのですが日本の経営技術が体系化されて企業に生かされていたり、コンサルティングのパッケージになっていたり、はたまた逆輸入されている事例があることまでは知らず驚きました。日本から飛び立った手法が単なる現場の技術だけでなくビジネスモデル自体にも影響を与えているというのはある意味すごいことではあるのですがその仕組みづくり、体系化というのが日本の国そのもので出来なかったというのは残念なところです。(これは三枝さんも同じことを指摘)
 両利きの経営、リーン生産、オープンイノベーション、ティール組織なども元々は日本にあったコンセプトで下手したら逆輸入のようになっている状況になっている状況というのは改めて皮肉だとは思うのですが逆にこれらを元々から備えていてうまく回っていないだけとしたら歯車さえ回してやれば大きな力を生み出せるのだと思います。日本企業の中でこれらの強みを生かすには価値創造を民主化して個の力を生かし、それを組織の力につなげるところとなるのでしょう。幸い筆者が指摘されているように日本ではまだ短期的な成果プレッシャーがまだまだ少ないというのはプラスに働く要素かと思います。言うのは易し、行うのは難しではありますが問題点の把握歳参考になる内容でした。

◎本書の目次
はじめに:日本が失った経営
序章 日本の経営をめぐる悲観論は正しいのか
序章への補足:国際政治に翻弄された日本式経営
第1章 逆輸入される日本の経営
第1章の要約・用語解説/「両利きの経営」ブームの源流はどこに/日本企業というオープン・イノベーションの先進事例/ユーザー・イノベーション、フリー・イノベーションと現場の知恵/リーン・スタートアップとリーン思考/アジャイルとは何だったのか/ティール組織の流行と日本的経営
第1章のまとめ/第1章への補足:アジャイル開発の源流は日本か?
第2章 実践一辺倒の日本、コンセプト化のアメリカ
第2章の要約・用語解説/ケイレツから組織間関係論、そして企業のソーシャル・キャピタル論へ/ホンダの原付が「創発的戦略」に昇華されるまで
/『ザ・ゴール』が広めたボトルネックの理論/フロントローディング開発とコンカレント・エンジニアリング/日本の経営実践とダイナミック・ケイパビリティ論/知識創造理論、QRコード、コールドチェーンという希望/第2章のまとめ/第2章への補足:日本式経営の強みを活かしてイノベーション創出へ
第3章 経営技術をめぐるグローバル競争時代を生き抜くために
第3章の要約・用語解説/経営技術の逆輸入モデル/現場の混乱はこうして引き起こされる/コンセプト自体の経済効果は?/グローバル経営時代における経営技術とコンセプト化/日本企業はなぜ強みを捨てるのか/第3章のまとめ/第3章への補足:企業間競争の三層構造モデル
第4章 長年にわたる日本企業の強みもメイド・イン・アメリカに?
第4章の要約・用語解説/アマゾン創業者を魅了するカイゼン/カイゼンの研究もアメリカが中心に/カイゼン・イベントというアメリカ発のコンセプト/サービスに落とし込むのも海外企業/カイゼン研究を虎視眈々と狙うインド、スウェーデン、中国/日本は「何に」負けたのか/第4章のまとめ/第4章への補足:海外におけるカイゼン研究の「罠」
第5章 最新シミュレーションで日本の経営技術をよみがえらせる
第5章の要約・用語解説/カイゼンの3類型という発見/カギは「潜在的な問題解決の連鎖」にある/人工社会実験でカイゼン研究をよみがえらせる/カイゼンは必然的に経営戦略となる/カイゼン・イノベーションというコンセプト/イノベーション「それ自体」のマネジメントへ/ありきたりな個人の卓越した組織:情報の滞留モデル/第5章のまとめ/第5章への補足:バブル期の「財テク」失敗の本質
第6章 コンセプト化とグローバル競争の先にある未来
第6章の要約・用語解説/コンセプトから理論へ/経営学には本当にディシプリンがないのか/日本発ものづくり経営学の功罪/日本だからこそできること/おわりに:日本式経営は「これから」だ/第6章への補足:価値創造の民主化という「解」
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