
![]() | 戦略の地政学 ランドパワーVSシーパワー |
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地政学というのは地理的な環境が国家に与える政治的、軍事的、経済的な影響を、巨視的な視点で研究する学問です。日本の国内でさえ地形が歴史を創るということがあるので世界的な規模で言えばなおさらのことでしょう。この本はその地政学をロシア、中国を代表とするランドパワー派閥とイギリス、日本、アメリカなどを主とするシーパワー派閥の二極構造にあることに注目して直近の状況を含め、わかりやすく解説されています。所変われば見方が変わるという視点で初めの症で紹介されているのが逆さの地球地図。南半球ではよく見かけるものですがアジアとオセアニアの関係が近いことが一目瞭然です。そして中国がなぜに南沙諸島に拠点を築こうとしているのか?これまた中国を中心とした地図を見れば一目瞭然です。また上記に挙げたランドパワーとシーパワーの陣地争いという観点で見れば紛争が起こっている要因が良くわかってきます。
たとえば
・内戦状態のシリアでロシアが独裁者アサドの政権を支援するのは…
ロシアは本国以外に二つしか不凍港をもっていない。ひとつはウクライナのセヴァストポリ、もうひとつはシリアのタルトゥース。このシリア国内でロシア軍が駐留する不凍港を維持するためにシリアの現政権を支えようとしている。
・北朝鮮のミサイル発射実験や核開発に対して中国が強い態度に出ないのは…
中国は古来より「以夷制夷」(いいせいい=野蛮人を使って野蛮人をやっつける)という名の安全保障戦略を用いてきた。つまり北朝鮮が「どんな国でも米国に対峙するなら良い国だ」ということで北朝鮮を利用するため。
・沖縄から基地が無くらない理由の一つ…
特に沖縄という場所の地政学的に考えると1万キロ同心円で世界の主要な地域を覆うことができる太平洋上の場所で重要性は言うまでも無く。沖縄駐留米軍は海兵隊であり、陸・海・空の応援体制が確立する前に独自に戦闘を開始する急襲部隊。自前の戦闘機や輸送機などを保有している自己完結型軍隊なので司令部の機能や各種部隊が近在している必要があるからこそ分散配置よりも可能な限り一か所での駐留が望ましい。ただ部隊の移動が高速化すれば集約の必要性が薄れていくわけで今後はグアムへの移転が進んでいくようなことはありそう。
これだけインターネットが発達してくると昔ながらの地政の影響がどれほどのものだと思ってしまいますが消費するエネルギーや食糧や水は、相変わらずどこかから運んでこなければならないわけですし、その供給先の政治事情や運搬手段、それにそれをどのルートから運んでくるのかという点から生まれる脆弱性に関する外交・安全保障問題から逃れることはできません。自分たちの住んでいるところだっていまだ駅から徒歩○○分というので序列が決まっているのは変わらない事実です。
地政な観点からいうと日本というのは海に囲まれていることで領海も大きく、非常に恵まれた国であるというのと同時にランドパワーvsシーパワーの前線に立っている重要な国であることは間違いありません。本著の中で、日英同盟消滅から約100年の歳月を経て復活すると予言。EUを離脱し、再び「栄光ある孤立状態」にあるイギリスと、大陸国家の海洋への進出という戦略的挑戦を受ける日本が置かれた両国の戦略環境は100年前と似ていなくもなですです。そうなると「シーパワー同士」の日英両国が再び同盟関係に入ったとしても不思議ではなさそう・・・ 今後の動きに注目です。
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