<前回の話>
第1話「宇宙暦0079年 12月11日・・・」http://blog.goo.ne.jp/ichigowasabi/e/5a747c41d00b1628eb0c8e21e849a9e6
マスミン特務大尉からの異動通知を受取り、そこにサインをしたが・・
こんな紙切れ一枚でチェスの駒のように扱いやがる!ジャブローの奴らって一体・・
まぁ空調の効いた部屋でフカフカの椅子に座って、ふんぞり返って判子を押す・・
それだけなんだろうなぁ・・ 奴らは宇宙(そら)にあがった事があるんだろうか?
宇宙に上がらずして、一体何が解るんだろう・・ そんな減らず口も叩きたくなるが
気が付くとグリフィンのモビルスーツデッキは、人が少なくなっていた。
なんやら、反対側の港に船が到着したらしい・・
こう、頻繁に上がってくる所を見ると、そろそろ大きな海戦があるのかもしれない・・
「うひょ~! 隊長~ぉ! こいつすごいっすよ!」
新型ジムの所に行っているヒロ中尉だ・・ やはり新型には興味がある。
「なにが、すごいんだ?」
「この数値! 見てください!」
それは、新型ジムのスペック表であった・・
---------------------------
■ジム・コマンド宇宙戦仕様
型式番号 RGM-79GS
頭頂高 18.0m
本体重量 44.6t
全備重量 75.0t
ジェネレーター出力 1,390kW
スラスター総推力 74,000kg
装甲材質 チタン・セラミック複合材
武装 ビーム・ガン、ビームサーベル、60mmバルカン砲x2
装備 シールド
---------------------------
「ほう! これはすごいな・・
白い悪魔のガンダムと呼ばれる試作機より、スペック上は上の数値じゃないか!」
「そうなんですよ! 今まで乗っていたRGM-79は、ジェネレーター出力 1,250kW
スラスター総推力 55,500kgって所でしょ・・それが1,390kW に74,000kg っす
また、何がすごいのか!ですが、ビーム・ガン標準装備っす!
巡洋艦クラスのビーム兵器っすよ! ザクやリックドムなんていちころっすね!」
「そう簡単にはいかないわよ・・
今まで私たちが使ってきた、ビームスプレーガンより、
ビームの収束率が上がっているのでしょう? つまり命中精度が下がるって事・・
早く熟練テスト飛行を行うべきですね隊長?、我々の戦場はソロモンですから・・」
「そうだな・・ テストは・・ えっ? なに? ソロモンだって?」
「隊長ぉ・・・ またやりましたね! どうせ、マスミン特務大尉に見とれてて
全くなんにも聞いてなかったのではないでしょうね?!」
「いや・・ そんな事はないぞ・・ うん・・ ちゃんと聞いていた・・
なぁ・・中尉!」
と、ヒロ中尉を探すが・・ 一体何処に行ったんだ・・さっきまでここに居たのに!
「たいちょ~? 聞いてなかったでしょう?・・」
「いや・・ 我々は新型ジムでこの船の所属になるんだろ?」
「それからぁ?」
いやはや・・ まいったぜ! 確かに聞いていない自分も悪いのだが・・
ここは大人の対応だな・・
「すまん、特務大尉のお言葉を復唱してくれ・・」
「やっぱり・・ 思ったとおりだわ! でね・・」
・・・ とリン少尉から話を聞いた・・ 大変だな・・ ソロモン掃海かぁ・・
ジオンの船がうようよしているし・・ 13独立部隊と連携だって? あのガンダムとか?
それは楽しみでもあるな・・
話を聞き終わって、深刻な状況に追いやられている事が解ってくる・・(解るのが遅い)
暫くは、平和な中立コロニーの酒場のおねぇちゃんともオサラバかぁ・・
さて・・ そうなってくると話は別だ・・ 我々の装備について調査し、理解しておく
必要がある・・ まずは新型のジム・・我々の武器はこれだけと考えた方が良いだろう
「そうだな・・ 本来の受領予定だったRGM-79Gと同じスペックと思っていたが・・
そのジムよりも、スペックが上だな・・ このMSはじゃじゃ馬だ!・・
また1人の補充要員もいるのか、3機ではなく4機の戦闘体系訓練も必要だな・・
特務大尉に訓練実施を進言しよう
すまんが、少尉は訓練計画案を作成しておいてくれ!」
「了解しました・・ プランを作成し、後でメールで送付しておきます! では!」
リン少尉がその場を離れていった・・
グルっと周りを見渡した・・
以前乗艦した事があるコロンブス級に比べ、少々狭く感じる・・
ジムを立てて積み込めば片方で25機は入るカーゴスペースが、異様に狭い・・
4機のジムコマンドGSを整備するデッキが4つ・・ 射出用の簡易カタパルトが
1機・・それにMS用の兵器庫と弾薬庫・・確かに場所を取る物が多いのではあるが
ふと、ジムコマンドGSの胸部に人影を見かけた・・
「誰か居るのか?」
「はぁ?・・・・」
「何をしているのかね?」
「ジムに識別マーキングをしています!こいつは独立21の3号機だから 213です」
「なるほど・・ じゃあ私の機体は 211号機か?」
「えっ・・ あっ! MS隊のワサビィ大尉でありますか!
今後とも宜しくお願いします! 整備班長のサミー曹長であります!」
「いやいや、そんなに硬くならんでも良いから・・で、聞きたいことがあるんだが
どうもこの船のカーゴデッキというかモビルスーツデッキが狭いように感じるのだが」
「ああ・・ それはですね・・ 元々補給艦の設計ですので、壁が薄っぺらなんです
ですから、内壁を二重強化し、三重隔壁化されています・・
強度はマゼラン級ですよ・・
また、外壁には対ビームコーティングを試験的に施しています
ジオンの新型MSは、どうやらビームライフルを携帯しているとの情報があるそうで
まぁ、本艦は一種の実験艦でそのための戦略行動も計画されているようですね・・」
なるほど・・ だからジムも最新型だし、特務大尉の乗艦も理解できるか・・
「そういえば・・ 副長のクロヒッツ少佐・・ 砲雷長とか・・?」
「ああ・・ 本艦にはビーム砲が1門、ミサイル8本が装備されています
あとは・・上部と前部に重機銃が2機ずつ、後部は上部機銃でカバーですが・・
大尉・・ 下部を敵に取られないようお願いしますね
下部を狙われたらおしまいです・・ 女と同じで、下から狙えってネ」
「そうか・・ 少佐殿は下半身を狙えば良いのだな・・♪」
どうやら、お仲間が出来たようだ・・ ヒロ中尉にも伝えておこう・・
「あっ! 大尉! このジムの肩の部分に、部隊マークでも入れましょうか?
何かマークはありますか?」
「いや・・ 今はマークは無いが・・」
「じゃ、思いついたら言って下さい! すぐに書いちゃいますね!」
「おう・・ そのときは、酒でもおごらせてもらおう!
そうだ・・ さっきまで沢山いたが、みんな何処に行ったんだ?」
「ああ・・ シャトルが向こうの港についたでしょう・・
あれに新型ガンダムの本体が載ってたんだそうです・・
我々はおとりだったようで・・」
「なに? おとり・・?」
「どうやら、北極基地がジオンに攻められたようで・・
ジオンには新型の情報が漏れているようですね・・」
「じゃあ・・このコロニーも危ないのではないか?」
「だから、ここなんですよ・・ なんせサイド6は中立だし・・
良く見てくださいよ・・ 銃口に張り紙がしてあるでしょ?
形式上はドンパチ禁止で、軍事行動は取れないはずなのに
こうして我々は軍事行動の準備をする事が出来る・・・
ジオンも一緒です
金さえ払えば、なんとでもなんですよね・・ ああ・・ 嫌だ嫌だ・・」
「まぁ・・ 政治の事は解らんさ!」
確かに・・戦争中に中立を貫くのは容易ではないだろう・・ しかし金とはなぁ・・
少々解せぬ気持ちを押さえつつ、私は、モビルスーツデッキから居住区に向かった・・
・・・
居住区は簡素な作りだった・・ それは仕方がないが、せめて簡易重力発生装置は
欲しいと感じる・・ 長時間の乗艦ではやはり重力がいとおしいものだ・・
このあたりが、この実験艦の課題になるのだろう・・
宇宙酔いにでもなってしまったら大変な事になる、医学の力では直せない不治の病だ、
また、人間の足は第2の心臓とも言われている、つまり重力下で歩く事で、
足に溜まった血液を心臓に戻す事が楽に行えるのである。
更に重力場が無いという事は、食事が宇宙食になる・・これも辛い・
やはり設備が整っているペガサス級の揚陸艦やマゼラン級の戦艦が羨ましくなるが、
それらの居住区の擬似重力発生装置も回転直径がコロニーのように決して大きくは
ないので、船酔いになってしまうのだが・・ 無いのと有るのでは雲泥の差がある。
トレーニングルームには小型の重力発生装置があるだろうが、あれは自分が
ハムスターになったような気分になるので・・ どうも好きにはなれない・・
しかし、お世話になるしかないようだ・・ 贅沢は言えない・・
ふと救護室から声が聞こえて来た・・
「これ! おいしいっすよねぇ~!」
聞き慣れた声だ・・ 間違いない・・
「で・・ 少尉は何処の出身なんすか?
やっぱりなぁ・・ あそこは美人が多いっていいますからぁ!」
中尉・・絶好調だな どうやらいつもの病気か・・
「ヒロ中尉! 何をしとるか?!」
と救護室の扉を開けた・・
そこには2人の少尉に囲まれてヒロ中尉がいちごを食べていた最中であった。
いちごは私の大好物である!
「おい! いちごじゃないか! 中尉! まだあるのか?!」
「隊長・・ 遅いっすよ・・ 救護班のコンペット准尉の差し入れだそうで
実はこれが最後です・・」
とかじりかけのいちごを私の目の前に差し出した・・
「キサマァ・・ 俺との付き合いは長いくせに・・・
俺がいちごには目が無い事は知っているだろう!!
どうして残しておかないんだ!」
食べ物の恨みは怖いのである! これは中尉にペナルティをあたえねば!
「ヒロ中尉! モビルスーツデッキで作業中のサミー曹長の作業を手伝って来い!」
「はぁい・・ 了解でありま~す・・ 隊長どの・・」
「サミー曹長は、出航時からこの艦に乗り組んでいる・・ 色々と情報が聞けるぞ」
「ん? そうでありますか?」
「ああ・・ 多分、気が合うはずだ・・ お仲間かもな ♪」
「はっ!ただ今よりモビルスーツデッキにて情報収集任務を遂行してまいります!
お二人さん・・ また後でね~ ♪」
ヒロ中尉は残ったいちごをポイっと口にほおばり、モビルスーツデッキに流れていった・・
「あのぉ・・ MSパイロット記章をつけておられる大尉ってぇ・・ 」
ヒロ中尉と一緒になって、いちごを食べていた2人の少尉の1人が声を掛けてきた
「あ・・申し訳ない・・ 自分の部下が粗相をしませんでしたかな?お嬢さんがた
私は本日からこの船のMS隊を任された、ワサビィというケチなおやじで・・
こんなお嬢さん方が乗られている船とは・・私も運が向いてきましたかな♪
どうですか? 今晩、一緒にお食事でも・・」
「あっ・・やっぱりワサビィ隊長ですね・・ ナンパしているしぃ・・ ♪
私、今度、MS隊に配属になりましたミィ少尉です。
宜しくお願いいたします。」
えっ・・ しまった・・ 自分の部下をナンパするところだった・・
あぶない、あぶない・・(というか、ナンパしかけてたじゃないか・・)
「ふふふ・・ やはりお噂の通りの隊長ですね・・
私はMS隊オペレーターのユカ少尉です、以後お見知り置きを!」
うっ・・ こちらも部下だ・・MSオペレータはMSには乗らないものの
小隊の一員である・・
先にマスミン大尉に紹介してもらっておけば、こんな自体にはならないものを・・
ヒロ中尉もヒロ中尉だ・・ ちょっと一言言ってくれれば・・
「そ・・そうか・・ 2人は私の配下になるんだな・・
うん・・ こちらこそ宜しく・・
あ・・ 新型のジムのスペックは確認しているか?」
「はい、ルナ2からの航海中に、慣らし運行を各機10時間ずつ実施しておきました
ユカ少尉もパイロットライセンスを取得されていますので、交代勤務で乗務しました」
「誰がそんな危険な事を! 君たちは士官学校を出たところだろ・・
実戦経験はあるのか?
確かに我々連邦軍はジオンをソロモン、ア・バオア・クー、グラナダ、サイド3に
押し込んではいるが、隠れジオンが、何処に出るか解らんのだぞ!
もしジオン軍と遭遇したらどうするのか!?
MSはどうでも良い! でも、お前らの命は1つしかないのだぞ!
命を粗末にするような奴は、私の隊には必要ない!
以後、そのような行動は絶対に取らないよう、注意する事! 以上だ!」
戦争なんだぞ・・ やられたら死んじゃうんだぞ・・ もう私の隊から不幸な奴は
絶対に出してはいけない・・ 絶対に・・
そんな事をつぶやきながら、リン少尉に依頼した訓練計画を早く提出しなければ
ならないなぁ・・ と考えていた・・
「さて・・ いちごは何処だ・・ コンペット准尉とか言っていたなぁ・・」
悩み多き年頃である♪
「死んでも直らんなぁ・・」
ソロモン海戦まであと13日・・
「<第3話>敵襲!」http://blog.goo.ne.jp/ichigowasabi/e/febb0ea54cab1eec8a5e43ef3c1fc04eに続く
(2007/04/27 19:49)