現在「宇宙暦0079年12月19日」有名なソロモン海戦の5日前です。
既に星一号作戦(広義の意味:チェンバロ作戦も星一号の中に含まれます)
が発動され、ターゲットがソロモン、グラナダ、ア・バオア・クー、
それとも、ジオン本国サイド3? などもまだ現場には連絡されて
いない時期です。(まぁ、ワサビィはマスミン特務大尉から聞いて
知っちゃっていますが・・
サイド5の10バンチコロニーをジオン軍から奪取したグリフィン隊は
味方のエマージェンシーを受信。その緊急信号に呼応しMS隊を緊急発進!
戦闘エリアは地球と月との中間点であるサイド5(ルウム)から、サイド6(リーア)
方面に向かった、地球衛星軌道上から月方面に向かう軌道上です。
その中から敵母艦を攻撃するためセイバーブースターが飛び出しました!
<ここまでの話>
【第1部】
「
<第1話> から <第24話>までのリンク」
【第2部】
「
<第25話>子にゃんこ」
「
<第26話>緊急信号!」
「
<第27話>チーム戦!」
「
<第28話>ジャジャ馬」
------------------------------------------------------------------------------
「・・・ おにいちゃん! まだ解んないの?
大尉はサイド1の出身でしょ? わちゃびさんのおにいちゃん!」
えっ? おにいちゃん? えっ? わちゃび・・それって?・・
「ご・・伍長ぉ・・ ぅ・・ウーミン・・と言ったよな?・・
ひょっとして・・ あの・・ あの『うみちゃん』かぁ??」
「・・・ う~ん・・ 大尉のご交友範囲は存知ませんので、
今、ご想像されている『うみちゃん』が、どの『うみちゃん』なのか
私には解りませんけれども・・
多分、その『うみちゃん』だと思いま~す♪
でね!ウーミンもね、最初は解らなかったんだけどぉ
さっきスカーフ巻くときヘルメット取ったでしょ?
それで確信しちゃいました♪
わちゃびさんのおにいちゃんでしょ?!」
「って、うみちゃん・・ あのちびっこの『うみちゃん』か?・・
その呼び名で呼ぶのは、あのサークルのメンバーだけだやもんなぁ」
複座に改造されているコックピットだが、2つの区画は区切られており、
顔はモニターでしか見えない・・
モニターに写る伍長はヘルメットを取り笑顔を見せてくれた・・
(可愛いじゃないか♪)
というか、街ですれ違っても、あの『うみちゃん』とは気づかないだろう・・
「何年ぶりや? 10年ぐらいか?」
「・・・ えっとぉ・・ ウーミンが小学生だったから・・もう15年ですよぉ!」
「へぇ・・ もう、そんなになるんか・・
確かに、あの時はもう士官学校の学生やったからなぁ・・ 15年かぁ・・
というか、小学生のがきんちょが、立派な美女になって目の前に現れても、
解る訳ないよな! というか、逆に手を出したら犯罪やんか!」
「・・・ えっ? なんで犯罪やの?」
「そりゃ、そうやろ!小学生に手を出したら犯罪やろぉ!!」
「・・・ なに言うてんの!もう! うちはもう大人やで!・・
あっ・・サイド1の言葉になってるね♪」
「あはっ♪そうやな・・ 同郷の人と話してると自然とそうなるなぁ・・」
「・・・ わちゃびのおにいちゃん・・ 会えて良かった・・」
「そやな・・ 同じ思いや・・ この戦争さえ無かったらなぁ・・」
「・・・ えへっ♪・・ 眼から汗が出てきちゃった♪・・」
と伍長はヘルメットを装着し、バイザーを閉めた・・
私はかける言葉も見つからず、前方に広がる漆黒の宇宙を眺めていた・・
サイド1・・ 1年戦争勃発時の1週間戦争で壊滅的な打撃を受けたコロニー群・・
どうして、宇宙に住むもの同士が戦争で戦わないといけないのだろう?
ジオン・ズム・ダイクンの思想は、われわれ、元サイド1居住者も賛同できる内容・・
いや、宇宙に住む人類すべてが共感し理解できる内容だ・・
だからと言って、サイド3が独立を宣言しなければ・・
また、ザビ家がサイド3を公国にしなければ・・
そして、戦争を起こさなければ・・
すべて上手く共存できるのか?は、この戦争が終わっても答えは出ないかもしれない・・
大きな矛盾は知っている・・しかし、私は地球連邦軍の士官だ・・
今は、この戦争を少しでも早く終わらせる事が大事な課題・・
と・・ 自分に聞き聞かせ、洗脳するような自分がそこに居た・・
その時!、沈黙を破るようにアラームが鳴り響く!
ヒポグリフから転送された座標に近づいたのだ!
「そろそろ、お仕事の時間だ!」
「・・・ 了解です大尉!!」
元々が、セイバーフィッシュのコックピットである、器類は古く、
性能も最新式であるジムコマンドに比べ、非力だ・・
センサーの類も昔のまま・・ ステックを握る手に湿り気を感じる・・
思い出せ!昔を思い出せ! ルウム戦役でザクと戦った頃の自分を!
アラーム音と同時に即座に覚醒した五感が前方の異常を認識した。
(見つけた!)ブースターをオフにし、慣性で飛行する・・
「伍長! ビーム砲の準備は?」
「・・・ OKです!」
「よし! 軸線を合わせている、射出角Zeroで撃て!」
「・・・ えっ? ターゲットは?」
「かまわん! 撃て!」
「・・・ 了解! ビーム砲!Zero掃射 てぃ!」
大きな轟音とまばゆい閃光に包まれ、
2本の閃光が漆黒の宇宙に吸い込まれるように進んでいく!
ビーム砲の発射の反動で機体が大きく軋み、慣性で進んでいた
セイバーブースター向きが45度上方向に変わる。機体が回転しないよう
一瞬だけ推進剤をフルバーストさせ、一気に機体の方向を変える・・
こちらが放ったビームが闇の中に吸い込まれて見えなくなった・・
そう簡単に当たるものでは無い!
すると、その闇の中から幾つかの光源が発せられた!
即時にその発生位置の座標をインプットする!
太いメガ粒子砲のビーム束が10数本、セイバーブースターが前に居た
場所を貫いた! 10数本か・・ 敵は2~3隻?・・
ムサイ級軽巡洋艦は連装メガ粒子砲を3門装備している。
1隻で6本のビームが飛んでくる計算だ・・ というか・・
よく考えると敵の数を考えていなかった!
少なくとも1次攻撃のMSが8機・・ 2次攻撃と思われる熱源は4つほど・・
敵は12機以上のMS隊を有する艦隊なのだ・・
ムサイ級軽巡洋艦だけの構成であれば、4隻になる計算だ!・・
背中が急に寒くなる・・ちょいと無茶な作戦だったかもしれない
「くっそう・・ 嵌めやがったな! タゴサ艦長め!!
うちの艦長と、どっこいどっこいや!!」
「・・・ そんなぁ・・ 大丈夫? おにいちゃん!」
「ちょっと待て・・ 考えるから!
なぁ・・・ 生きて帰ったらデートしよな♪
そうそう・・ タゴサ艦長には内緒やで? 2人の秘密や♪」
「・・・ えっ?!」
「生きるための目標がいるやろぉ! ほんまに・・」
「・・・ で・・でも・・ 犯罪なんでしょ? 艦長も怖いよ・・」
「大丈夫や! 所属が違うから、言えへんかったらバレへんし!
というか、障害があるってのは、禁断の愛!って感じで
逆に燃えへんか?」
「・・・ 昔のおにいちゃん・・こんなんや無かったのにぃ・・
もう・・ほんまに・・ あほやなぁ♪」
見ていると執拗な敵からのビーム攻撃が放射状に続いている・・
こちらは慣性飛行中だ・・ (まだ、発見されていないか・・)
ビーム砲を撃った反動で機首が上がり、敵位置から高度を取っている、
ムサイ級軽巡洋艦は、真上より後方からの敵にはメガ粒子砲の
仰角を取ることが出来ないはずだ! また、下方の防御も弱い・・
いけるかも・・
「デート・・ OKやな! 覚悟しときや!
・・・
じゃぁ・・ ターゲットスコープをオンにして!
ビーム砲は、次弾チャージは出来てるか? 」
「・・・ えっ・・ あの・・
ターゲットスコープオン!
チャージあと5秒! ターゲットは?」
「目視で合わるんや・・ すぐに眼の前に獲物が見えるから・・」
先ほどインプットした敵の座標と機位座標が重なった・・
後方135度方向にバーニアを吹かす! と同時にブースターを全開にした!
大気圏内であれば、最大出力での急降下と言った所か・・
見えた! 1つ、2つ、3つ・・ ムサイ級が2つ、パプア型が1つ・・
「・・・ もう・・だめぇ・・ ああっ・・」
「おい! 伍長! 大丈夫か? !!!」
「・・・ 頭に血が集まって・・ 前が真っ赤にレッドアウト・・
だって・・急なんだもん・・ 」
「意識はあるな? ターゲットは?ロックしたか?
真ん中の奴に合わせろ! 合ったらすぐに撃て!」
「・・・ わぁ・・ ドンドン近づいてくる・・ すっご~い!
ムサイ級かぁ・・ 見たの初めて!! 変な形!」
突然3隻がバラバラに軌道を変え始めた! 見つかったか?
上部機銃がこちらに向けられるのが見える・・ でも・・ もう遅い!
「・・・ これで外すような、甘い女じゃ無いからねっ♪」
目の前がムサイ級の艦色である緑色で一杯になる・・と同時に、
セイバーブースターのビーム砲から2本の閃光が、緑色の艦体中央部を貫いた!
すぐさま、ステックを引き上げ、下部バーニアを全開にし、
ムサイ級の真横をすり抜ける・・ 相変わらずGがきつい・・
「ビーム砲次弾チャージは?」
「・・・ 20秒かかります!」
「OK! すぐにチャージを!! 5秒後に反転するぞ!
次は左舷のムサイだ! 先に巡洋艦を討つ!」
「・・・ 了解!」
「ブースターオフ! 4・・3・・2・・1・・」
前部下方バーニアと後部上方バーニアをあて
180度機体を回転させる・・と同時にブースターにフルスロットルをくれてやる!
こんなGを過去に受けたことが無い! 体が押しつぶされそうになる・・
「くっそう!・・ いっけぇ!!」
「・・・ ああっ・・ またぁ・・ だめぇ・・」
何か言おうとするが、声が出ない!!
しばらくすると、Gが緩やいでくる・・
「・・・ もう・・また、ちびっちゃった・・ 」
ん? 聞こえたぞ・・
「どうした? また?って ちびったのか?」
「・・・ ばか!! ばか!!! ちびってなんかないよ!
って・・ 大尉! 前を見て!!! 」
ん? 前を見る・・ と・・ (くそぉ!!腹は見せないか!!)
無傷のムサイ級が前部をこちらの方向に転舵していた・・
「ビーム砲は?」
「・・・ まだ・・あと5秒ぐらい・・」
「溜まったら、何も考えずに引き金を引け!!」
どんどんターゲットが目の前で大きくなってくる・・
そして不気味なメガ粒子砲が全門こちらを向いているのも見える・・
(やばい!)5秒が長い! ・・
ムサイ級から、機銃掃射が始まった
メガ粒子砲の銃身の底部がピンク色に変化している・・
「まだか!!」
「・・・ 2・・1・・ てぃ!!」
こちらのビーム砲とムサイ級のビーム砲がほぼ同時に火を噴いた!
思わず機体をロールさせ、ムサイ級のビームを避ける・・
こちらのビームは敵ムサイ級の艦橋を貫いていた!
強烈な振動が機体を襲う!と同時にモニターがすべて沈黙した!
ビームの束の真横を通過したのだ・・ 影響を受けない筈はない・・
また、数発の機銃がコックピットのフロントガラスを破壊していた、
全体にどの程度のダメージか? 把握ができない!!
機体はムサイ級の艦橋部をすり抜ける、ブースターは? まだ全開だ!
(まだ、機体は死んでない!! なんとかなる!)
「伍長! ウーミン! 大丈夫か?!!」
返事が無いのか? 通信が切れているのか?
強烈な電磁波が電気系統を焼いた可能性が高い・・
ただ、モニター類がすべて消えても、戦闘機のコックピットは
外が見えるのでありがたい!
(とにかく、この場を離れよう!)
ぐずぐずしていると
先ほど追い抜いた、ザクなどのMS部隊がここに到着してしまう・・
後方を振り返ると、2隻のムサイ級に赤く燃える部分を確認した、
しかし誘爆する様子は見えない・・ が、確実に「中破」以上の戦禍だろう
2隻は作戦から確実に離脱するはずだ・・ 作戦は成功だ!
その時、急に機体の振動が停止した・・
急な静けさが襲う・・ ブースターが止まった・・
うっ・・ こいつも故障か? いや・・ロケット燃料が底をついたのか??
セイバーフィッシュとは違う、大飯食らいだった事を思い出した・・
(ちっ! 航続距離ぐらい聞いておけよ!)
そんなことより、ウーミン伍長は大丈夫か?
「ウーミン!! ウーミン!!・・ ウーミン!!!」
再度後方を振り返る・・
後部コックピットにも数発の機銃着弾跡が見える・・
8点式のシートベルトを外し、機外作業用のライン(ロープ)を腕に通した、
一連の動作で前部風防を開け、機外に飛び出し、後部風防に取り付く!
中の様子は鏡面加工のため、見ることが出来ない・・
ヘルメットのバイザーは閉めているはずだが・・
もし、開けたままであれば後部風防を開けることはできない・・
コックピット内はエアーが充填されているはずだ・・
私はヘルメットを後部風防に接地させ、風防をドンドンと叩きながら叫んでいた!
「ウーミン!! 返事をしろ!! 伍長ぉ!!!」
ん? かすかな声が聞こえる・・・ なんだ?・・
「う~ん、えっ? ここは? どこ?・・」
聞き取った瞬間に、すっかり力が抜け涙が溢れ出した・・
(うみちゃん大丈夫だ・・ 嬉しいときも涙って出るんだ・・)
「聞こえるか? うみちゃん! ワサビィだ!」
「えっ・・ 何が何か思い出せないや・・
えっと・・ そうだ! ムサイは? ムサイはどうなったの!?」
「ああ・・ なんとか、損害は与えたよ・・
その分、近接弾を受け、ちょっと機体がトラぶったようだ・・
ちょっと表周りを調べるので、うみちゃんは電気系統を調べてくれ!」
「了解です・・ って、死んじゃったのかな・・ この子・・」
「いや、メインの反応炉はまだ動いている・・
ただ排熱装置は電気系だから
早く直さんと、反応炉を停止しなければならんだろうな・・」
「急いで見てくれ!」
と言い残し、私は機体の底部に体を流した・・
すごい・・ 耐ビームコーティングをしているとはいえ
底部の表面が焼けこけている・・ 直撃だったらお陀仏だった・・
ただ・・ 中まではやられていないようだが・・基盤がやられたかぁ・・
そんな事を感じていたとき、視界の片隅にランプが点った・・
おっ? 電気系統が直ったか?
前部のコックピットに戻りハッチを閉め、エアーを充填した。
「伍長・・直ったのか?」
「・・・ いいえ・・ 非常用の電源に自動的に変わるはずなのに
変わって無かったですね・・ 電磁波の影響と見て間違い
無いと思います・・ ただ・・ メインコンソールと
サーマルセンサー、金属センサーは駄目ですね・・
動作系はどうですか大尉?・・」
「ちょっと動かしてみるか・・」
アポジモータに直結するステックを右にあててみた・・
軽く、バーニアが噴射し体制が変わる!
次にメインロケットのスロットルを蹴飛ばしてみる・・ が反応が無い・・
やはり、燃料が底をついた可能性が高いか・・
でも、バーニアさえあれば移動は可能だ・・
エアーの残量は? あと10数時間時間は持つ!
「よし!行けそうだな!
じゃ・・ 機位を確定させたいが・・ ん? 月は見えるか?」
太陽は明るく輝く光源なのですぐに解る、
また、地球も大きな惑星なので、常に確認できるのだが、
月だけは新月時の場合、そう簡単には見えない。
重力センサーが機能しているとコンピュータが方向を割り出すのだが・・・
今は視認しか方法が無い。
月の位置は非常に重要だ!
遭難時の心得として、まず行うことが「機位を深度0に固定する」ことなのだが・・
深度とは地球上の高度と同じと思えばよい・・
宇宙暦になり、宇宙を自由に航行するようになったが、
基本的には「深度0」が基本だ、あとは軍や民間企業に対し
航路が交差しないよう、細かな深度が規程されている・・
太陽と地球と月と自分の機位が同一平面上になっていると、そこが深度0だ。
「・・・ 大尉!ありました・・ 下方5時20分方向に月です・・」
「そうか・・ となると・・深度プラス4あたりまで流されているなぁ・・
このままだと・・ う~ん地球の引力に引っ張られ、激突かぁ・・」
「・・・ その前に燃え尽きちゃうってばぁ・・
あ~あ・・ 良い彼が出来る前に、おにいちゃんなんかと
空の藻屑に消えちゃうかぁ・・
なんて可愛そうな、うみちゃんの運命やいかに!」
「はぁ? だれが可愛そうだ?・・ というか余裕やなぁ?」
「・・・ うん♪ だって一人じゃないやん♪」
「あのなぁ・・ 遭難しているんやで?」
「・・・ ええ~・・ うそぉ!! 大丈夫ちゃうの?」
「能天気やなぁ! ほんまに!」
「・・・ だって・・ おにいちゃんは歴戦のエースでしょ?
こんなん簡単にすいすいっと戻れるんちゃうの?」
「あんたなぁ・・ 宇宙の怖さ・・ 知らんやろ!! ほんまぁ!・・」
「・・・ でも・・ なんとかなるんやろ? おにいちゃん♪」
(こいつ・・全然変わってへんなぁ・・) 思わず口元が緩んでいた・・
と、気分も随分と楽になって、余裕が出ている自分がいた・・
冷静に天体と他の星の位置を確認し、深度0に機位を戻すようバーニアを
吹かす・・
(さてと・・戦闘区域はメインモニターが死んでいるから解らんか・・
推測で移動することは死を意味する。 ヒポグリフには戻れない・・
戦闘がどうなったか心配だが・・・ まぁ、母艦が襲われたら、MSは自分の
死を意味するからなぁ・・ 敵も必死で戻るだろ・・ まぁ、ヒロ中尉達も
応援に駆けつけているはずだし・・ ユカちゃんミィちゃんのコンビは
最近強力だし・・ ヒポグリフは大丈夫と思うが・・
さて・・ そんな事より、私達だ・・
移動先が解るポイントは?・・ どこだ?・・ サイド6?・・
いや、ラグランジュ4への移動は、月の公転に向かい合う形での移動と
60度の角度で位置を算出するためにはコンピュータでの計算が必要だ・・
というか、遠い・・
じゃ、地球の引力を利用して移動するとしたら・・・
連邦軍が集結しているジャブロー上空の低軌道上か?・・
しかし、最後に衛星軌道に乗るための推進力が無い・・
これでは地球に激突してしまう・・
あとは・・ ルウムか・・ ここしかないな・・
月と地球の間のラグランジュ1! グリフィンが居る10バンチコロニーが
一番近い! また、月の公転を追いかけるような移動は目視でも可能だ!
ただ・・ 地球の引力に逆らう移動になるから、アポジモータの燃料が
どれだけ残っているかが気掛かりだが・・
まぁ、位置的にはラグランジュに近いから、引力の影響がどれだけ出るか・・は
やってみないと解らんか・・)
「うみちゃん! サンキュー!大丈夫や、多分助かる・・」
「・・・ うん・・ 信じてるから・・」
私は地球の引力に逆らってルウムに向かう必要があるため、バーニアを
少々強く吹かし、機体をルウム方面に流した。
常備パックから飲料水ボトルを取り出し、口に含んだ・・ 生き返る・・
一撃離脱と言う言葉がある・・
たった数ヶ月前・・ セイバーフイッシュでの戦闘時は
戦闘力の差があることから、一撃&退避を原則とし、巴戦は避け、
機体の速度を実弾にも乗せるべく、高速度で敵に突っ込み
一撃を食らわせ、離脱する・・ が常道であった・・
今回も同じ戦法を考えていたが、
獲物が目の前に沢山あって、ちょっと戦禍を焦ったのか?・・
反転し、再度突っ込んでしまった
少々、機体の性能にうぬぼれていたのか?・・
というか・・ 実弾ではない・・ ビーム砲だ・・
次弾のチャージに時間がかかる・・
あっ! 実弾ではないので、機体の速度を上げる必要もないのか!
そうか・・ 実弾は弾速が遅いので回避される可能性が高いが、
ビームは弾速が早い・・ 引き付けて撃つ必要は無いのかも・・
セイバーフィッシュと同じコックピットが、錯覚を起こしていた・・
今回の戦い方は間違いだ! こいつはジャジャ馬だけではない!
全く性格が異なる機体なのだ・・ (いかんなぁ・・)
なぜか頭が覚醒している・・ こいつの使い方が解ってきた・・
「ふっ・・とんでもないサプライズだぜ! サンキュー司令!」
「
<第30話>帰艦・・」に続く・・・
------------------------------------------------------------------------------
Copyright ichigowasabi