<ここまでの話>
【第1部】
「<第1話> から <第24話>までのリンク」
【第2部】
「<第25話> から <第46話>までのリンク」
【第3部】
「<第47話>月面着陸・・」
「<第48話>敵か味方か?」
「<第49話>アロー市自衛軍」
「<第50話>大丈夫だよね・・」
「<第51話>フォン・ブラウンへ・・」
「<第52話>セカンド・ルナ」
「<第53話>スパイ容疑・・」
「<第54話>特務の内容・・」
「<第55話>情報戦・・」
「<第56話>妄想と現実・・」
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「ああ・・ 頼む・・
って・・ 店の裏ってこの辺だよな・・ どこに止めれば良い?」
と、バギーを店の裏の空き地に止めると同時に、裏口のドアが開き人影が飛び出してきた。
「もう!! どこに行ってたのよぉ!! 私を置いてぇ!!!」
チロル三尉だ・・ かなりのオカンムリの様子だが・・
彼女は私達とは関係無く、この作戦に巻き込むわけには行かない・・
「ああ・・ すまんすまん♪ そんなに怒ると可愛い顔が台無しだぞぉ♪
こいつと2人でちょっとな♪ チィロちゃんが寝ちゃったんで、お約束の1発もできないし
暇だからな・・ ちょいと、素敵なお姉ちゃんがいっぱい居るところにな♪
いやぁ・・ あの、お姉ちゃん、ホント良かったよな? なっ!? なっ!!!」
「えっ? あ・・ ああ・・ そりゃもう♪
ボインボインで、おっぱいがいっぱいで、最高でしたよね♪」
チロル三尉の目がまん丸になり、顔がみるみる赤くなる・・
こういう、純な表情が可愛く、妙に萌える♪
と、その時、聞きなれた声が・・
「そうか・・ 本隊では大事な決戦が開始されるという大事な局面だというのに
特務という事を傘に着て、貴様は綺麗で可愛いボインボインのおねいちゃん達と
あんなことやこんなことを楽しむ、リクレーションをしてたって訳か?
本当に最低な種馬だな?・・ あきれて物も言えん!」
「えっ・・ マ・・ マスミン?・・」
「なんだ、そのお化けを見るような目は? 足はあるからな!
というか、奇跡の再会で感激した振りをし、ドサクサにまぎれて私に抱きつこうなどと
人間の風上にも置けないような卑怯な事を考えている疾しい目かもしれんな?」
「ひょっとしたら・・ この方が噂の特務大尉殿で?」
「ああ・・ その通りだ・・」
「ん? 何が噂だ? 容姿端麗、才色兼備、純粋無垢・・
軍隊に置いておくにはもったいない美貌の持ち主との噂か?」
「中尉・・ 納得です・・ 中尉にはぴったりだ♪」
「おい! どこがだ!それはないだろ? こいつの何処が私に・・?」
「何をそこでごちょごちょしゃべっているか? 女の腐った奴みたいに・・
とにかく、気絶している事をこれ幸いに、私の胸をまさぐり、更に唇をも平気で奪うような卑怯な輩が、
この大変な時期だと言うのに、おっぱいがいっぱいの不純な貴様ら畜生もどきには非常に楽しい場所で、
夢と希望で、胸をあそこを膨らませていたんだろ? ん?」
「え~! え~!! え~!!! 唇を奪われたんですかぁ!!!」
またぁ・・・ ややこしい奴が話に割り込んできた・・
「おい!チィロ! 奴の話は信じるな!」
「なんだと? あの出来事は全て嘘だというのか?
ああ神様!!・・ か弱き私の操はこうやって汚されていくのですか・・
私の純な心は、ぼろ雑巾のようにズタズタに引き裂かれ、
そしてそれらの事象がまるで無かったかの如く
爬虫類脳と暴れん棒将軍と化した下半身でのみ行動する、この腐れ野獣は、
飄々と次のターゲットに狙いを移していくのでしょうか・・ 」
「そうなんですか?
やっぱり、狙われていたんですね!
やっぱり、野獣さんだったんですね!!
やっぱり、私も襲われる所だったんですね!!!」
「おお! か弱き乙女よ・・ 貴様も種馬の毒牙にかかるところだったのか?
うんうん・・ よく頑張ったぞ! お姉さんが来たからにはもう大丈夫だ♪」
「そこで永遠に喜劇でもやってろ・・ おい、チーフ・・ 店に入るぞ・・」
「えっ・・ 良いんですか? この修羅場を・・」
「何処が修羅場だ・・ 奴の減らず口が絶好調の時は、機嫌が良い証拠なのさ♪ 行くぞ!」
と、マスミンとチィロに背を向け、店の通用口に向かった・・
すると・・
「おい・・ この状況で放置プレーに移行できるとは、変態力を更に向上させたようだな・・
短期間で、素晴らしい成長だ! わが軍にとっては全くメリットもクソも無いがな・・
おい! そこの変態! 店には入らなくても良いぞ・・ すぐに出発だ!
というか、店の中の奥さんに、用事でもあるのか?」
「なに? 出発だと?・・ つうか、一言二言多いがな・・」 振り返りマスミンを直視する・・
「ああ・・ 時間が無い・・ で・・奥さんにはまだ手は出していないのか?」
「まさか、グリフィンに戻るのか? ・・ って、私の戦友の奥さんには手は出せんだろ?」
チラッとチーフに目をやり、マスミンが続ける
「軍機だからな、ここでは話せないが、今回の決戦には参加できそうもない・・
今は、特務が優先だ! 話は移動中に車の中で聞く・・ チロル君も一緒だ! いいな!
で・・ 大好きな人妻だぞ?」
「人妻でも、戦友の奥さんは駄目だろ・・」
「戦友の奥さんで無ければ、他の人妻は良い訳だ・・」
「ずっと言ってろ・・」
ふと、気付く・・ マスミンの制服もアロー市自衛軍の軍服だ、
2本線に星2つ・・二佐殿という訳だが・・
やはり、B-25でトムが言っていたように、ヒックス司令は全てを把握していた・・と言う事か?
しかし、なぜ隠蔽しようとした? 悶々とした疑問が残る・・
「で・・ 貴様は? 数日前に通信した際に交信した、ワサビィの元同僚だな?」
「ハイ♪ 申し遅れました、元ルナ2防衛隊チーフです。
本名はチャイコフスキーって高尚な名前なんですがね、元階級も曹長(チーフ)って事もあり
なんか、あだ名か階級かわからないまま「チーフ」って呼ばれています。
この足は1週間戦争で、ザクにやられちまって・・
でも、リザーブ(予備役)なので、また、声をかけてください」
「そうか 曹長なのか!! 歴戦の勇士だな♪
そんな勇士にお願いするのは、本当に申し訳ないが、1つ聞いてくれないか?」
「なんでしょうか?」
「このへたれ変態野郎が乗ってきた、アロー市のエレカーだがな、
フォンブラウンのエレカー回収センターにリターンしておいて欲しいのだが・・」
「了解であります。ただ、リターン時には中尉・・ いや、彼のカードが必要ですが・・」
「おい! ワサビィ・・ すぐに出撃だからな、カードは不要だ、曹長に渡しておけ!」
「って、出撃なのか? どこに出撃なのだ? 機体はYUKIKAZEか?」
「命令は後で伝える・・ 早くカードを渡しておけ!
ということだ・・ すまんが曹長、宜しく頼む!・・ おっと・・忘れ物だ・・」
と、マスミンがポケットから封書をだし、チーフに手渡した・・
「連邦軍の正式な委託依頼書だ・・ 中には作戦指令のコード番号がある・・
そのコード番号で連邦軍に請求書を送付してくれ・・ ロハじゃ動かんのだろ?
送付先はルナツー司令本部宛で、悪いがカーボンコピーを私とワッケイン司令宛で頼む・・」
「アイサぁ~! てか、中尉の事を宜しくお願いしますよ♪」
「ん? どういう事だ?」
チーフが目を三角形にし、上目使いで、私を見る・・
(こりゃ、また酒でも奢らないと駄目かもしれんな・・)
・・・
少し離れた場所に、アロー市軍の月面バギーが駐車していた。
マスミンに言われるまま、バギーに乗り込み、規定のノーマルスーツを着用する
パイロット用ではないノーマルスーツは非常に動きにくく好きではないが・・
運転席に座り、バギーをスタートさせた・・
「さて・・
私を放置し、一体今まで、何処で何をしていたのだ?」
月面を進むバギーの中で、マスミンがこれまでの事を聞いてきた・・
拿捕され収容されたこと、アロー市に移送されヒックス司令に会ったこと、
チロル三尉とフォンブラウンに来たこと、そして、チーフに会ったこと・・ それまでを
包み隠さず話をしたが、チロル三尉が同乗している関係からB-25での情報収集については
話すことが出来なかった・・
「ほう・・ そしてボインのお姉ちゃんか・・ 最低だな♪・・」
「ああ・・ そういう事にしておいてくれ・・」
と、目をチロル三尉の方に流す・・
マスミンはその目の動きを捉えていた・・
「そうか・・ では、後でボインのお姉ちゃんの話を聞かせてくれ・・
ああ・・ そこの丘を越えたら、南にルートを変えてくれ・・」
「ああ・・ 南だな・・
で・・ 何処に連れて行く気だ? そろそろ教えてくれても良いと思うんだが・・」
「早漏は嫌われるぞ・・ 」
「私は違う・・」
「嘘つき・・」
「ん? 知らんくせに、よく言う・・」
「まぁ、知りたくもないがな!
そろそろだなチャネル6でビーコンをオンにしてくれ、誘導波をキャッチできるはずだ・・」
「おう・・ チャネル6だな・・ おっ・・ 来てるぞ、11時方向3000だ・・ 」
「じゃ、そのビーコンに進路を合わせてくれ・・
良かった♪・・ キャッチできなかったら迷子だ・・」
「って、 おい! そんなので大丈夫なのか?」
「大丈夫だろ? そのためにチロル三尉が居る・・」
「ん? ということは、目的地はアロー市軍の施設なんだな?
つうか・・ 何も無いじゃないか・・ 合ってるのか?」
「まぁ・・ 間違いないだろ・・ チャネルが合っていればな・・」
と、話の最中にビーコンゲージの色が変わり、ランプが点滅する・・
すると、500メートル先の月面が急に盛り上がり、基地の地下に入る出入り口が開口した・・
「おお! すげぇ! 地下基地だな?」
「ああ・・ アロー市軍宙空防衛隊教育中隊の訓練宇宙港だ・・ 」
「ここに、私が使う武器があるんだな? ひょっとしたら、YUKIKAZEだろ♪?」
「貴様に情報がどこまで入っているか?は知らんが、私とYUKIKAZEはずっと一緒だった・・
情報を隠蔽していたのだが、どこまで知っている?」
「ああ・・ アロー市軍に問い合わせると、機体が消えた・・ と・・ そして・・」
と、チロル三尉を見る・・
「かまわん、言ってみろ!」
「いいのか? チーフの情報網からだが、ジャンク商会に回収されたのに、
何故か売りには出ず、どこかに搬送されたらしい・・ までだ・・ 」
「あとは?」
「その筋の情報で、純度の高い推進剤と60mmバルカンをアロー市軍に納品した・・
らしい・・
ひょっとしたら、ジムがあるんだろ? 今回の特務用か?」
「やはり危険な奴だな・・ 貴様は・・
まぁ、その答は基地の中にある・・ というか、特務の内容も把握できているのか?」
「ああ・・ 条約違反の核弾頭だろ?
その使用を阻止する! 私はそのように理解している!」
「・・・」
返事が無いのでマスミンを見る・・
いつもの険しい顔ではなく、なにか嬉しそうな表情で、笑いを堪えながらうつむいていた
その表情を見ただけで、私の考えが全て当たっている事を瞬時に理解することが出来た・・
月面バギーは、基地の地下に入る出入り口に入り、更に2層ほど地下に降りた階の駐車場に
停止させる。と、照明が赤色(オレンジ)に切り替わり、パトランプ点滅しだした・・
「あっ・・ ヘルメット着用ですね・・」
と、チロル三尉が言う・・
「発着があるんだな? 滑走路を開港するため、気密対策か?」
「そうです、この信号は着陸です・・ 多分、突撃艇や輸送機とか連絡機かと・・」
「見れるのか?」
「ハイ、ここは保管庫ですので、着陸後に誘導路からこちらに入ってきます・・」
3人はバイザーは開けたままだが、ヘルメットは着用し、バギーを降りた。
そして誘導路のが見える位置に移動する・・
暫くすると、誘導員の団扇指示に従うように、誘導路から機体が姿を現した・・
ガボット型の突撃艇が1機・・ 2機・・
「ほう! 突撃艇の訓練か?」
「です、ここは教育中隊の基地ですので、ひな鳥たちの訓練です♪」
「おう!言うじゃないか・・ チィロちゃんもつい最近までここに居たんじゃないのか?」
「まぁ・・ それに近いですが・・ 彼らは曹候補生です。私は士官学校だったので・・」
とチロル三尉が返答したとき、見慣れた感じの機首が誘導路の先に見えた・・
「おおっ! ガボット級だけではないんだな! セイバーフィッシュとは・・
しかし、アロー市軍も大胆な事をするんだな・・
ジオンに狙われたりはしないのか? 連邦軍の現役戦闘機だぞ・・ ん?」
(あれは・・ セイバーフィッシュじゃない? あ・・ あれは!! YUKIKAZEっ!!!)
「おい! マスミン!! あれは・・ ま、まさか・・」
「うっるさいなぁ・・ 見ての通りだ、そのまさかだ・・」
「だ・・ 誰が乗っているんだ!!」
「もう・・ 耳元で怒鳴るな! つうかバイザーを閉めろ! 唾が飛ぶ!!」
「だからぁ・・ 誰が乗ってるんだ?って聞いている!!
というか、YUKIKAZEは軍機ではないのか?」
「連邦軍のエースパイロットだ! 文句あるのか? つまり貴様は用無しってことだ♪」
「ちょっと待て・・ あの機体はそう簡単に扱えるものではない!」
「そうか? そうとは見えんかったぞ、すごく簡単に、楽しげに操縦してた・・」
「くっそう! 一体、どんな奴だ?」
(あの、有名なスレッガー中尉か? いや奴は13独立部隊だ! こんな所には居ない・・)
基地内では機体が完全停止するまで、立ち入り禁止区内には、誘導員など以外立ち入ることが
出来ない・・ すぐさま駆け寄りたい衝動を堪え、パイロット席を凝視する・・
機体が停止位置に止まり、整備兵などがエンジンオフなどの作業に取り掛かる
キャノピーが開き、パイロットが見えた・・ しかし、ヘルメットのため誰かは識別不可能・・
だ・・ だが・・
(ん? あの腰周り・・ 女? 肩の線、そして癖のある動作・・)
「お・・ おい!! ま・・マスミン・・ あれは・・ おっ・・オーリンじゃないのか?」
「ほう♪ 解るのか?
さすが種馬だなぁ・・、女なら一度見ただけで影でも誰かが判別できるという噂は
本当なんだ・・ びっくりしたぞ♪」
「いや、びっくりするのはこっちの方だ! どうしてオーリンがここに居る?
というか、そんな噂は聞いたことがないぞ?」
「噂は私が今作った・・ というか、その特殊能力だと後部座席は解るか?」
「ん? 後部座席か? あっ!! あの体格・・ ち、チコちゃんじゃないのか!!
ああ・・ 2人は生きていたんだな! ああ・・ よかったぁ・・」
「やっぱり解るんだな・・ (このスケベ・・)
全く連邦軍には貢献できない情けない能力だが、
技能章でもあれば特級クラスだな・・ 非常に残念だ・・」
「おい、バカを言うな、何が技能章だ・・ というか女性だから解る・・って事ではない!
彼女達は私の部下達だ! どんな状況でも識別出来んと中隊長などはやっていくことは出来ない!
しかし、MIAになってたんだぞ? どうやってここに来た・・」
「まぁ、オーリン准尉も苦労したようだぞ・・ ただ、仕方なく月に着陸した際に
あの通信の事や私との会話を思い出し、アロー市軍にコンタクトを取ったようだ・・
まぁ、貴様がグリフィンを発進したあとに、グリフィンとは連絡を取れて、
その時、マメハ戦隊長から特務につくよう命令が出たらしく、私とのコンタクトを待っていた・・
それがここに来た理由だ・・」
「では・・ リンは? リン少尉はどうした? どうなったか聞いているだろ!?」
と、マスミンに詰め寄ると同時に、フロアにグリーンランプが点滅し、
立ち入り禁止が解除になる・・
私は、急ぎ足で2人の所・・ YUKIKAZEの所に駆け寄った・・
(リンは? リン少尉は? どうなった?!)
「<第58話>違和感・・」に続く・・・
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